【働く私にMusik】水曜日のカンパネラ・詩羽さんインタビュー
Guest Musician:水曜日のカンパネラ・詩羽
2001年、東京都生まれ。学生時代からモデルとして活躍。2021年、水曜日のカンパネラの2代目主演・歌唱担当として加入。今年7月からソロ活動もスタート。アーティスト・俳優・モデルなどマルチな自己表現を行っている。
──水曜日のカンパネラの軌跡──
2013年|コムアイを主演・歌唱として、ケンモチヒデフミ、Dir.Fの3人でユニットを始動
2016年|EP『UMA』でメジャーデビュー
2021年|コムアイが脱退。詩羽が2代目の主演・歌唱担当として加入
2022年|『エジソン』を配信リリース。翌年にはストリーミング累積再生1億回を突破
2024年|詩羽体制になってから初となる単独日本武道館公演を開催
2代目として、詩羽として
時代が変化していくように求められるものも変わっていく
サッシャさん(以下、S):Oggiは、「働く30歳から」をターゲットにしている媒体。〝2代目〟としてユニットに加入するって、どうでした? 進行中のプロジェクトに途中から参加するって、働く人はだれしも直面するシーンだなと思うんです。
詩羽さん(以下、U):コムアイさんと同じことをしようという意識はなかったですね。時代も令和に変わりましたし、求められるものもそのときによって変わっていくんだろうなと。
私が考えるのは、どうすれば水曜日のカンパネラがよりよくなるか、面白いパフォーマンスができるか。だから、受け継いだこともいろいろあります。
S:受け継いだ部分とは?
U:たとえばライブでのコール&レスポンスは、そのままやったほうがいいなって。ウォーターボールを使うパフォーマンスとか、ファンの人たちがすごい楽しみにしてくれていますから。
S:一方で、詩羽さんらしさはどうやって入れていこうと思ったんですか?
U:自分らしさはビジュアルでだいぶ出せているとは思いつつ、音楽面でいえばストリートなポップさは私のほうが出しやすいものなのかなと。それは強みだなと感じています。
S:すごく客観的な分析! 今の詩羽さんは、自分で見てどうですか?
U:水曜日のカンパネラとして求められる詩羽は作品やライブの中でまっとうしながら、それ以外のときはもっと素を出せるようになったというか… 自由度が増してきたと思います。
自分らしさを貫くこと
嘘がつけない性格だけどより嘘がつけなくなってきた
U:水曜日のカンパネラとして活動して半年くらい…とても早いタイミングで『エジソン』がヒットしたんです。ドタバタと忙しい時期を経験して、その波が落ち着いた今年の春、単独で武道館ライブができたんですけど…。
S:加入してから初の武道館ですね。
U:今の私たちを応援してくれる人がこんなにいるんだという実感が、改めて得られたんです。ファンの人たち、そして支えてくれるチームの人がいる。
そんなにがんばりすぎなくてもいいのかも、素の私も楽しんでくれるかも…そう感じてから、より素をさらけ出せるようになったかなと。
S:自分の言いたいことが言えるようになってきた?
U:この仕事って演じなければいけない部分もあって、もちろんそれはちゃんとやるんですけど、自分の世界観や好きなもの… 守りたいものはちゃんと守る。もともと噓がつけない性格ですけど、より噓がつけなくなりました。
S:素の詩羽さんはどんな人?
U:引っ込み思案で、人見知りで、めんどくさがり。家が好きすぎて、なるべく家にいたいタイプなんですが、5月に猫を飼い始めて、さらにインドアになりました(笑)。
S:家ではどんなことを?
U:すごく怠惰ですよ?(笑) 猫のいびきを聞きながら漫画しか読まない…みたいな日もあります。
S:漫画好きなんだ!
U:最近は転生漫画ばかり読んでます。勇者になったり、令嬢になったり…転生しかしてない(笑)。もともとファンタジーがすごく好きで、漫画だけじゃなくて映画もめちゃくちゃ観ます。
S:映画といえば…詩羽さんが加入してから、初の映画主題歌も決まりましたね。『願いはぎょうさん』、とても楽しい曲でした! ケンモチさん、すごく〝祭り〟な曲をつくられたなと(笑)。
U:がんばってました(笑)。映画『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』は、シリアスな面もあれば、希望が込められたポップな面もある作品。
それが曲にも表れていて、元気が出る音楽になっているんじゃないかなと思います。映画を観て、曲を聴いて、少しでも前向きな気持ちになってもらえたらうれしい…そんな気持ちで歌いました。
S:素の自分は引っ込み思案で人見知りだとおっしゃっていましたが、今はこうして自分の思いを発信する立場にいる。こういった仕事をしていてよかったと思うことはありますか?
U:ファンの人たちと対話ができることですね。悩んでいる子が、私をきっかけに前向きになってくれたりして。人を助けるってなかなかできないことだから、純粋にすごいなって。
S:詩羽さんにインスピレーションを受けたファッションを楽しんでいる方もたくさんいらっしゃいますよね。
U:ライブでは、それこそ小学生や幼稚園児のような小さな子も私のビジュアルを真似してくれたりしていて。そのまま大人になってくれ! と思います。
自分の好きを貫くって、大人になるほど難しくなる。世間的には王道ではないこのビジュアルを「かわいい」「好き」と思える感性を持っていることで、自分の幅が広がるはずだから。
そのまま多くのものを好きでいてほしいし、好きを広くもってほしい。私が前に出て社会的な〝普通〟を叩いていくことで、人それぞれの〝好き〟を貫ける社会になったらと思います。
後悔しない仕事の流儀
間違えてしまっても、次は間違えなければいい
S:そうやって仕事をする上で大切にしていること、ありますか?
U:やると決めたことは絶対に最後までやる、求められている点数以上で返す…ということは心がけていますね。
S:120点の仕事をする。そのためにしている行動って?
U:後悔のない選択をしていくことですかね。シンプルに言えば、手を抜かない。だから、ライブでもレコーディングでも「こうしたらよかった」って思うことは基本的にないんです。
S:準備に時間をかけるんですか?
U:準備よりも、水曜日のカンパネラのライブであれば、本番を全力で楽しむことですね。それが水カンのライブの魅力につながると考えているので。全力で楽しんで「あぁ、楽しかった!」って終われるのが私の中の100点。それでお客さんが楽しかったと思ってくれたら、それが総合的に120点になるのかなって。
S:ライブの映像は見返したりする?
U:まったく見返さないです(笑)。
S:そんなにも後悔がないってすごすぎる(笑)。そうやってライブを楽しむためには、不安を潰しておく必要もあると思うのですが。
U:もちろん、ちゃんと練習をして不安はできる限り潰していきます。でも、不安なときって何をやっても不安だから、もう切り替えるしかないですよね。私、切り替えが早いんですよ。それに、後悔はしても意味がないと思っているんです。
S:変えられない過去よりも、次にどうしたらいいか考える、と。
U:間違えてしまっても、次は間違えないようにすればいい。そういう考え方なんです。ライブも、その場で感じながら「次はこうしよう」と考えていく。一番を歌いながら「何か違うな」って思ったら、その後すぐ二番から変えていったり。
S:へぇ〜、すごく冷静!
U:ステージに立って全力でライブを楽しんでいる詩羽がいながら、もうひとりの詩羽が「ここ、こうしたほうがいいんじゃない?」って耳元で教えてくれる感じです。
S:全力で頑張っているときも、いつもどおり冷静な自分がいるんですね。
U:気負わないですね。それが成功につながると思っているので。
S:肝がすわってる!
U:そうなんです、私、肝がすわってるんですよ(笑)。
S:その平常心の保ち方…学ばせていただきます!
新曲『願いはぎょうさん』詩羽体制初の映画主題歌に!
全世界累計発行部数1100万部を突破する児童小説シリーズを原作とする映画『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』(12月13日全国東宝系にて公開)の主題歌。ケンモチヒデフミ書き下ろしの一曲は一度聴いたら忘れられないメロディーに。
◆サッシャさんが語る! 「インタビュー後」談話もチェック!
サッシャさんがお届けする“あとがき”ならぬ“あと語り”コーナー。サッシャさんの肉声によるインタビュー後コメントはこちら!
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[詩羽さん分]ジャケット¥49,500・スカート¥44,000(おじょうさまごっこ) ブラウス[共布ネクタイ付き]¥13,200(neith./ネイス) その他/スタイリスト私物
[サッシャさん分]ジャケット¥693,000(イザイア ナポリ 東京ミッドタウン〈イザイア〉) その他/スタイリスト私物
2024年Oggi12月号「働く私にMusik」より
撮影/山根悠太郎(TRON) スタイリスト/石橋渼沙(詩羽さん分)、久保コウヘイ(サッシャさん分) ヘア&メイク/utaha(詩羽さん分)、Moe Morioka(Sui/サッシャさん分) 構成/旧井菜月
再構成/Oggi.jp編集部