【働く私にMusik】先日リリースされたばかりの2ndアルバム『R&ME』に込められた思い
Guest Musician:松下洸平
1987年、東京都生まれ。2008年にペインティングシンガーソングライターとしてCDデビュー。翌年から俳優活動をスタートし、音楽活動を一旦休止。NHK連続テレビ小説『スカーレット』で人気を博し、2021年にアーティストとして再デビュー。
松下洸平の軌跡
2008年洸平名義でシンガーソングライターとしてメジャーデビュー。2009年ミュージカル『GLORY DAYS』で初舞台を踏む。2010年音楽活動を一時休止し、松下洸平として俳優活動を本格的に開始。2019年NHK連続テレビ小説『スカーレット』への出演で注目を集める。2021年俳優活動の傍ら、シングル『つよがり』で再メジャーデビュー。2022年初のフルアルバム『POINT TO POINT』をリリース。2023年セカンドアルバム『R&ME』をリリース。
NEWアルバム『R&ME』をひもとくKEYWORDS!
Keywords 1:Rhythm&Me
サッシャさん(以下、サ):2ndアルバムは、どんな思いでつくられたんでしょう?
松下さん(以下、松):自分の好きな音楽、今後やっていきたい音楽を示すアルバムにしたかったんです。僕にとっての音楽のルーツであるR&Bやソウルといったジャンルへのリスペクトを強調したアルバムになりました。
サ:だから〝リズムと自分〟——『R&ME』というタイトルになっているんですね!
松:そうなんです。アルバム制作中に、自分と音楽は切っても切り離せないものだと改めて実感して。そのつながりを示す一枚でもあるかなと思います。
Keywords 2:Respect
サ:アルバム全体にリズムとビートが詰まっているなと。アメリカで生まれた音楽であるR&Bを日本語で表現する…結構難しいですよね。
松:『All Day Long』という曲は、メロディもビートもトラックもすべてお任せでつくったんですが…デモ音源に入っていた英語の歌詞の譜割りを変えないように日本語をはめ込んだんです。まさに〝結構難しい〟ことをしました(笑)。
サ:結構というか…めちゃくちゃ難しいですよね!? 日本語とは母音と子音の感覚が違うから。
松:でも、英語の譜割りはやっぱり耳心地がいいので、できるだけ崩したくなくて…頑張りました!
Keywords 3:Be Direct
サ:R&Bのどんなところが好きですか?
松:気持ちをストレートに言えるところですね。日本の文化だとちょっと恥ずかしくて言えないような愛のメッセージも、まっすぐに伝えられる。だからあまり遠回しな表現はせず、ストレートな言葉で歌詞を書きました。
サ:それもまた〝松下さんらしさ〟かも?こうしてお話ししていると、すごく純粋な人だなって感じます。
松:物事をあまり難しく考えられないタイプなんですよ(笑)。書いていてもすごく楽しかったですし、きっと歌詞の世界観にもそれがにじみ出ているんじゃないかなって思います。
松下洸平さんの“これまでとこれから”をインタビュー
◆歌手になるつもりも、俳優になるつもりもなかった
松:絵を描くことが好きで、子供のころから美術の仕事を志していました。実は歌手になるつもりも、俳優になるつもりもなかったんです。
サ:松下さんにいったい何が!?
松:高3のとき、映画『天使にラブ・ソングを2』に感動して。歌うって楽しそう!と。
サ:すごい方向転換ですね!
松:最初のデビューのときは、ライブペイントと音楽を融合させたパフォーマンスをしていました。21歳でデビューしたんですが、CDが売れにくくなり始めていた時期で。歌だけではインパクトが足りず、〝絵を描くこと〟を組み合わせようとなったんです。
サ:音楽と絵、好きなことが同時にできる活動は楽しかったでしょうね。
松:実は葛藤があったんですよ。「歌を歌いたい」という純粋な気持ちで音楽の仕事を目指したのに、注目されるのはパフォーマンス。歌が届かないことにモヤモヤして…。
◆音楽活動を一時休止。俳優業の道へ
サ:そんなとき、ミュージカルデビュー。歌にスポットライトが当たる、願ったり叶ったりな場所ですね。
松:お客さんが歌を聴いてくれるし、芝居も楽しい!と、のめり込んでいきました。そして芝居を本格的にやりたくなって、音楽活動を一時休止。俳優業に力を入れ始めました。
サ:その結果、俳優として注目を集めることになるわけですが…なぜ俳優業がうまくいったと思います?
松:いやいや…芝居は下手だし、現場ではいつも怒られてばかりでしたよ(苦笑)。だけど、やめずに続けてきた。ときどきチャンスをいただきながら、なんとか今までやってくることができました。楽しいだけでは生きていけないですし、…精神面でも鍛えられました。
サ:落ち込んで「やっぱり音楽に戻ろう」とは考えなかったですか?
松:考えなかったです。21歳でデビューして、鳴かず飛ばずで終わった音楽は、〝逃げ道〟にならないから。俳優がダメだったら、まったく違う仕事に就こうと思っていました。
◆ずっと続けていた曲作りと“2度目のデビュー”
サ:そこから〝2度目のデビュー〟が訪れる…人生は不思議ですね。
松:朝ドラをきっかけに名前と顔を少しずつ覚えていただけて。ここでもう一度、歌手デビューしようとなりました。活動休止中も実はずっと曲はつくっていて。歌を捨てきれずにいたんですよね。やっと自分の音楽が形になる、多くの人に届けられる。
そのうれしさと同時に、冷静でもありました。再デビューといっているけれど、歌だけで勝負するのは初めてだし、何より「デビューはゴールじゃない」と過去に学んだので。
サ:俳優と歌手の両立は、いかがですか?
松:難しい台本に気分が引っ張られているときは歌で発散できたり、曲づくりに悩んだときは芝居現場のなにげない会話がヒントになったり…それぞれがいい刺激になっています。人との出会いも2倍になりますし。
サ:すごく遠回りもしたけど、結果オーライですか?
松:まさに!苦しい思いもしたからこそ、強い芯ができたと思います。
◆自分の人生に対しては、〝自分勝手〟でいい
サ:Oggi読者は20代後半からの働く女性。仕事もプライベートも、いろいろな選択に悩む時期なのですが、松下さんはどうでした?
松:20代後半は、僕もすごく悩んでいました。俳優としてのアップダウンが激しくて、一方で音楽は宙ぶらりんな状態…「自分の人生は、本当にこれで合っているのか?」って。
でも、最終的に優先したのは、「これがやりたい」という自分の意志でした。周りから「向いていない」と言われたこともありましたけど、「やりたい」を貫いたんです。
仕事であれ、プライベートであれ、自分以外のさまざまな人が関わることに対しては、自分の気持ちばかりを優先していてはダメですけど、こと自分の人生に対しては、〝自分勝手〟でいいような気がするんです。
サ:結局、後悔するのは自分。だったら、自分で決めたいですよね。
松:そうですね。夢を見ることは自分の自由だし、誰の目を気にすることなく、自分勝手に進んでもいいんじゃないかな。逆に、誰かと一緒に仕事をする、ものづくりをするときは、チームで動いていることを強く意識しています。
率先して周りの意見を聞いて「みんなでつくっている」という感覚を忘れずにいることが大切だと思うから。自分ですべてを決めてしまうと、本当の良し悪しが見えなくなってしまいますよね。
サ:そうやって人の意見が聞けることも、大きな強みですよね。自分の気持ちにも周りにも〝素直な人〟が、やっぱり伸びていくんだなぁ。
◆今、靴紐を結び直して歩き出した
サ:〝松下洸平〟として、夢への到達点を富士山でたとえるとしたら、今は何合目あたりにいるんですか?
松:全然登れてないです。どれくらいだろう…靴紐を結んで歩きだしたくらいじゃないですか?(笑)
サ:えぇ!? そもそも登り始めてもいないじゃないですか!(笑)
松:少しずつは登っているんだと思うんですけど、上を見たらキリがないから。山を登れば登るほど自分の目線も高くなって、今まで見えなかった遠くの街まで見渡せるようになる。
新しい景色が見えるようになって、世界の広さを改めて知ると「次はあっちにも行ってみたい」と考え始めるから、終わりがないんですよ。と同時に、山の上のほうを見上げると、到底手が届かないかっこいい先輩たちがたくさんいらっしゃいますし…。
だから、新しい年を迎えるたびに、靴紐を結び直して「よっしゃ、行くか!」と気合を入れているような感覚があるんです。
◆現時点でのアーティストとしての目標
サ:目指す場所はそうやって日々変わっていくと思いますが、現時点でのアーティストとしての目標は?
松:ひとりでも多くの人に松下洸平はシンガーソングライターでもあると知ってもらうことですね。今はそれが大事な目標。ライブ会場を大きくしていくことも、そのひとつです。
会場が大きくなることがいいかどうかはさておき、大きなステージで歌っている自分の姿も見てみたいんです。そこで見える景色も、すごくキレイなんだろうなって思いますし。行けるところまで行きたいですね!
<Vol.2へ続きます>
【Information】2ndアルバム『R&ME』が好評発売中!
自らの音楽のルーツであるR&Bへのリスペクトを込めた一枚は、最新シングル『ノンフィクション』を含む全10曲を収録。2024年1月より、同アルバムを携えた全国ライブツアーもスタート![通常盤]¥3,400(ビクターエンタテインメント)
◆サッシャさんが語る! 「インタビュー後」談話もチェック!
サッシャさんがお届けする“あとがき”ならぬ“あと語り”コーナー。サッシャさんの肉声によるインタビュー後コメントはこちら!
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[衣装・サッシャさん分]ジャケット¥462,000(イザイア ナポリ 東京ミッドタウン〈イザイア〉)その他/スタイリスト私物
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2024年Oggi2月号「働く私にMusik」より
撮影/中村和孝 スタイリスト/後藤泰治(松下さん分) 久保コウヘイ(サッシャさん分) ヘア&メイク/赤木悠記(松下さん分) 坂口勝俊(Sui/サッシャさん分) 構成/旧井菜月
再構成/Oggi.jp編集部