アーティスト・礼 真琴さんインタビュー
重圧の先に拓けた新しい扉

《Profile》れい・まこと/12月2日生まれ、東京都出身。2009年に宝塚歌劇団に95期生として首席で入団し、星組に配属。2019年に星組トップスターに就任。主な出演作は『ロミオとジュリエット』『柳生忍法帖』『モアー・ダンディズム!』『1789-バスティーユの恋人たち-』など。2025年8月『阿修羅城の瞳』『エスペラント!』東京公演千秋楽をもって宝塚歌劇団を退団。12月に退団後初のコンサート『Flare』を開催した。

後輩を育てながら自分を鼓舞してきました
2009年に宝塚に入団し、2019年には異例の早さで星組トップスターに就任。華麗なダンスと表現力、指の先まで洗練された所作で、唯一無二の存在感を確立させた。そんな礼 真琴さんが宝塚を引退したのは、2025年8月。引退公演の挨拶では、「茨の道だった」と自らのキャリアを振り返った。
「トップの重圧は大変なものでしたが、さらにトップお披露目公演の途中でコロナ禍を経験しました。先の見えない暗闇のような不安も味わいました。舞台に立てることが当たり前ではない。そのときに胸に刻まれたこの思いは、今も、そして今後も忘れることはありません。この思いを共有し、星組80人みんなが同じ方向を向いて、作品をつくる。それが、私のやるべきことでした」

不安な時間が、礼さん自身を成長させ、星組の結束を強めていった。
「トップとしての経験を積むうちに、仲間ひとりひとりが思っていることが、わかるようになるものです。相手が口に出さなくても、ちょっとした空気の変化を感じたり、先回りして悩んでいることに対応したり。そんなことを続けて疲れないのかと聞かれることはありますが、まったく! 人の話を聞くのは大好きですし、後輩を育てることが自分への鼓舞にもなっていたような気がします。そうして身についた洞察力と空気づくりは、私の長所であり武器。鈍らせないように、いつでも神経を研ぎ澄ましておきたいと思います」

その武器は、退団後に行われたコンサートでも大いに力を発揮した。2025年12月、初めてのチームとは思えない結束力と完成度で、18曲全6公演を完走。
「ダンサーからバンドメンバーまで、各分野のプロが集まった空間。そこでは、私のやりたいことに合わせてもらうのではなく、仲間が自ら楽しむ方法を選んできました。そして、4か月ぶりにステージに立たせていただいて、お客様とお会いできて、これ以上の幸せはないということも痛感しました。大きな拍手と歓声、『私、ここにいていいんだ』と思える時間。細胞レベルで喜びを感じる瞬間。そうした感情を与えてもらうぶん、ファンのみなさんには、刺激を与え続ける存在でありたいと思います。常にワクワクしてもらえて、ときにはびっくりさせちゃうぐらい、新しいことを続けながら。みなさんを飽きさせないように。そして何より自分が飽きないように」

引退公演で「茨の道ばかりだった」と語ったあと、礼さんが続けた「苦難を乗り越えた先には、必ず光がさす」という言葉。5か月後の今、改めてそれを実感している。

本当は気が弱いし、人見知りです
宝塚退団後、長く住んだ兵庫県宝塚から東京に住まいを移した礼さん。コンサートを終えても休暇を取ることなく、年が明けてからも新しい仕事が続々と控えている。

「本当は気が弱くて、人見知りで、いいかげん慣れていかなきゃ、と思っているところです。ただはっきりしているのは、未知のもの、『まだ始めていないこと』に不安になるのは当然のことで、そこから一歩踏み出してみれば、楽しさに変わるということ。ひとりになると『星組が恋しい』なんて思うときもありましたが、いざ人見知りスイッチを切って新しい人たちと打ち解けてみれば、違う世界が拓けてくるものです。
それでもやっぱり、慣れない東京では、自然が多い宝塚周辺の景色を思い出してしんみりすることもあります。犬の散歩をしながら、一面に広がっていた芝生の風景を恋しく思ったりも。今は犬と一緒に東京の街を歩き、『今日はどこに行こうか』なんて言いながら開拓しているところです(笑)」

東京生活を満喫するのは、今はまだお預けだけれど、新しい挑戦を控えて、うれしくて楽しい忙しさを味わっている。
「置かれた状況、年齢や経験を受け止めて、そのときどきのパフォーマンスができる自分でありたいと思います。年齢に抗いたくなることもあるけれど(笑)、それより『今』の自分を受け入れて、向き合って、生きていけるように。そんな女性を目指したいと思います」

宝塚時代から、さまざまな舞台を経験してきた礼さんだが、なかでもミュージカルは「今」の礼さんを間近で感じられる特別な場所だ。
「どんな物語でも、その場に流れる感情や人とのつながりはとてもリアルなもの。その世界に没頭し、お客様に観ていただく。その空間が大好きです。ミュージカルというと、ハードルが高いと思う方もいるかもしれませんが、息抜きのひとつとして関心を持っていただけたら。私自身は、何かに行き詰まったとき、そこからいったん離れて、まったく違う世界に浸って切り替えます。お仕事に疲れたとき、うまくいかないことがあったときこそ、気軽にミュージカルの扉を叩いてみてください。きっと元気が出るし、新しい世界が拓けるはずですよ」

新しい世界の扉を自ら拓いた礼さんによる、新しいミュージカルの世界。それはそのまま、働く女性たちへのエールになりそうだ。
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2026年Oggi3月号「この人に今、これが聞きたい!」より
撮影/三宮幹史(TRIVAL) スタイリスト/細見佳代 ヘア&メイク/岡田知子(TRON) 構成/南 ゆかり
再構成/Oggi.jp編集部
Oggi編集部
「Oggi」は1992年(平成4年)8月、「グローバルキャリアのライフスタイル・ファッション誌」として小学館より創刊。現在は、ファッション・美容からビジネス&ライフスタイルテーマまで、ワーキングウーマンの役に立つあらゆるトピックを扱う。ファッションのテイストはシンプルなアイテムをベースにした、仕事の場にふさわしい知性と品格のあるスタイルが提案が得意。WEBメディアでも、アラサー世代のキャリアアップや仕事での自己実現、おしゃれ、美容、知識、健康、結婚と幅広いテーマを取材し、「今日(=Oggi)」をよりおしゃれに美しく輝くための、リアルで質の高いコンテンツを発信中。
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