【働く私にMusik】メジャー3rdフルアルバム『12 hugs(like butterflies)』に込められた“今ならではの新しさ”とは
Guest Musician:羊文学
塩塚モエカ(Vo.・Gt./左)、河西ゆりか(Ba./中央)、フクダヒロア(Dr./右)からなる、繊細で重厚感のあるサウンドが特徴的なオルタナティブロックバンド。音楽はもとより、西武渋谷「COMPOLUX」のモデルに起用されるなど、個性豊かな魅力を発揮している。
羊文学の軌跡
2011年塩塚モエカ、羊文学としての活動をスタート。2015年フクダヒロアが加入。2016年FUJI ROCK FESTIVAL「ROOKIE A GO-GO」出演で注目を集める。2017年河西ゆりかが加入し、現在の編成に。2018年限定生産シングル『1999/人間だった』が全国的ヒットを記録。2020年配信シングル『砂漠のきみへ/Girls』でメジャーデビュー。2023年、2022年4月にリリースされたアルバム『our hope』が第15回CDショップ大賞2023 大賞〈青〉を受賞。『more than words』がTVアニメ『呪術廻戦』「渋谷事変」のED曲に。
◆一筋縄では行かなそう…特徴的なバンド名にひかれた
サッシャさん(以下、サ):塩塚さんは結成時からのメンバー。入れ替わりがありつつ、フクダさんと河西さんが加わり、この編成になったんですよね。河西さんの加入は、ツイッター(現・X)での募集がきっかけとか。
塩塚さん(以下、塩):あちこち聞いて回ってもいい人が見つからなくて、もう無理だ…と思ってツイッターで募集をかけたんです。
河西さん(以下、河):一度だけ羊文学の演奏を見たことがあったんですけど、すごく印象に残っていたんです。バンド名も特徴的で。バンドがやりたかったので、すぐメールを送りました。はじめて合わせたときは、楽しかったな。楽しかったし、うれしかった。
塩:ベースラインのメロディセンスがいい人を探していたんですけど、それがすごくよくて。ゆりかちゃん、元々はギターだからかな。
サ:フクダさんを選んだのも明確な理由が?
塩:シンバルを綺麗に使える人を探していたら動画を見つけて。メッセージを送りました。
サ:連絡が来たとき、いかがでした?
フクダさん(以下、フ):そのころは複数のバンドでサポートをしていたんですが、僕も自分のバンドがやりたいと思っていて。オルタナティブロックの要素がある陰鬱な音楽性、それからバンド名にも初期衝動を感じました。一筋縄ではいかなそうな名前だな…と。
サ:バンド名は結成時から「羊文学」?
塩:はい。かっこつけた名前をつけちゃったな、いつ変えようかな…と思いながら、気づけばここまで来ちゃいました(笑)。
サ:ふたりはバンド名にもひかれてたのに(笑)。改名すると言われたらどうします?
フ:えっ、それは…検討して…会議です。
◆3枚目のアルバムで見せる羊文学の“今ならではの新しさ”
サ:そんな3人で奏でるのは、繊細だけど力強いサウンド。まもなく発売されるメジャー3rdフルアルバムを聴かせていただいたんですが、さらなる重厚感と同時に新しさも感じました。
フ:1枚目のアルバムは荒削りで少し尖ったサウンド、2枚目はJポップとオルタナティブロックの両立をテーマにしていました。それを経て原点に戻ってきたらどうなるか…いろいろな経験をした今ならではの新しさが出せるのでは、と。裏の裏の裏…といいますか。
河:前回のアルバムは細部を突き詰めて完璧なものを目指していた感じがあったけれど、今回はまた違っていて。歌も含めて、抜きどころのよさが出せているような気がします。
サ:塩塚さんの歌も変わってきましたよね。
塩:全然イメージどおりに歌えていなかったところから、だんだん理想に近づいているような感覚はありますね。
フ:クオリティが年々上がってます。ストイックなので、練習を欠かさないですし。
塩:え〜、そんなことないよ(笑)。
フ:いやいや、僕よりストイックだから。
◆やめたいと思いながらも、これまでバンドを続けてきた理由
サ:進学を機に脱退するメンバーがいたりしても、塩塚さんは高校、大学、そして今…と、こうしてバンドを続けてきたわけですよね。
塩:高校生のときから、「これでお金を稼いでいく」って決めてたんです。大学でも「バンド活動は、私にとってのインターンみたいなものなので」って、1年休学したくらい。
サ:へぇ〜!バンドをやめようと思ったことはないんですか?
塩:それは毎日のように…メンタルが弱いので(笑)。でも整体に行ってスッキリしたら、明日も頑張ろう〜って思えたり。
河:すぐに元気になってる(笑)。なんだかお天気みたいな性格だよね。
塩:そう、変わりやすいから(笑)。
サ:まさに女心と秋の空…ということですね(笑)。ちなみに今日はどんな天気ですか?
河:ほのぼの、ぽかぽかしてます(笑)。
塩:ゆりかちゃんは川みたいだよ。なんでも受け止めてくれる…縁の下の力持ち的な?だけど、みんなで意見がくいちがっちゃったときは、フクダがまとめてくれるかな。
河:最後に、「絶対大丈夫だよ」って言ってくれるんだよね。
塩:実はフクダがいちばんアツいものを心に秘めてるよね。表には出さないけど。
サ:素敵な絆ですね。やめたいと思いながらも、こうして続けてくることができた理由って?
塩:すごくありがたいことに、見える景色が毎年違うんです。
サ:続けることで、見えてくるものがあるんですね。
塩:やり続けてみると、まだまだ自分が知らないことがいっぱいあることに気づきますよね。ときには疲れちゃうこともあるけど、この先もいろんなことが待ってるんだろうなって思えるようになりました。新しいアルバムの制作でも、「次は何ができるんだろう」って新しい自分たちを探していた気がします。
◆羽化する前の“さなぎ”のように形を変えていくバンド
サ:今、羊文学はどんなバンドですか?
塩:う〜ん…〝さなぎ〟ですね。さなぎの中でどんどん形が変わっていっている感じ。
河:確かに。ちょっとずつ、くっついていっている感じがするね。
サ:もうすぐ羽化しそう?
塩:アルバムをあと2枚くらい出したら…。
サ:理想とする蝶の姿はあるんですか?
塩:昔はあったんですけど、それに縛られすぎてもいけないというか。人が変わっていっているから、曲もバンドも変わっていくものなんだろうなという気がしています。
サ:自分自身にも変化を感じています?
塩:最近、無理して笑わないようにしているんです。落ち着いて、あくまでも自分のペースで相手のことを考えるようにする。そうしたら、それがすごく心地よくて。
サ:フクダさんはその逆で、以前よりすごく社交的になりましたよね?
フ:そうなれるように、と最近意識しています。こういった場所でも、もうちょっとしゃべれるようになっていきたいなと。
河:私も語彙力を上げたくて。そういう意識からか、最近は松任谷由実さんの曲をよく聴いています。
◆今まで以上に多くの人に“羊文学の音楽”を聴いてもらいたい
サ:さて、そんな羊文学の今後の目標は?
塩:いつかアリーナツアーをしてみたいです。アリーナツアーは、自分たちにあと何かひとつ加わらないとできないことだと思うから。曲げたくない自分たちの信念みたいなものを考えると、挑戦にはなると思うのですが、両立できる道があるかやってみたいですね。
河:来年4月には、初の横浜アリーナでのワンマンライブが決定しています。まだ単独でアリーナに立ったことがないので、なんとも言えないですけど…もっと大きなステージで演奏してみたい。今まで以上に多くの人に羊文学の音楽を聴いてもらいたいです。
フ:メインストリームとアンダーグラウンドの両立は、やっぱり目標です。いつもはJポップを聴いている人たちがオルタナティブロックを聴いて衝撃を受けたり、さらにはそういった音楽が当たり前にある世の中になっていったらという思いもあります。あとは…ポケモンの主題歌とか紅白とか…。
サ:ポケモン! 意外な答え!
フ:世代を問わず人気ですし、どこにいても目に入りますし。
河:世界中で愛されているしね。
フ:そういったメインストリームでの活動をしていきたい気持ちがあります。ライブも、東京ドームとか…!
サ:やっぱり、フクダさんはだれよりもアツい気持ちをもっていますね。
塩:そうなんです、こう見えて熱いんですよ。
【Information】メジャー3rdフルアルバム『12 hugs(like butterflies)』が発売中!
メジャー3枚目のフルアルバムは、TVアニメ『呪術廻戦』「渋谷事変」のエンディングテーマ『more than words』やMBS/TBSドラマイズム『往生際の意味を知れ!』のエンディング主題歌『FOOL』を含む、全12曲を収録。カバーアートワークはフォトグラファーのニコ・ペレズが担当している。[通常盤]¥3,850(ソニー・ミュージックレーベルズ)
また現在、西武渋谷店とのコラボキャンペーンが開催中!西武渋谷店では、渋谷を訪れる人々の心に寄り添い、羊文学のサウンドとビジュアルでクリスマスを体感できるキャンペーン『by your side』を12月25日(月)まで開催中。ぜひ足を運んでみて!
◆サッシャさんが語る! 「インタビュー後」談話もチェック!
サッシャさんがお届けする“あとがき”ならぬ“あと語り”コーナー。サッシャさんの肉声によるインタビュー後コメントはこちら!
***
[衣装・塩塚さん分]ドレス¥418,000(西武渋谷店 コンポラックス〈リチャードクイン〉)[河西さん分]ブラウス¥105,600・スカート¥169,400・ネックレス¥254,100(西武渋谷店 コンポラックス〈シモーンロシャ〉)[フクダさん分]ジャケット¥187,000・パンツ¥108,900(西武渋谷店 コンポラックス〈ヴィクトリアベッカム〉)
[衣装・サッシャさん分]ジャケット¥462,000(イザイア ナポリ 東京ミッドタウン〈イザイア〉)その他/スタイリスト私物
●この特集で使用した商品の価格はすべて、税込価格です。
2023年Oggi1月号「働く私にMusik」より
撮影/東 京祐 スタイリスト/中野梨香(羊文学分)、久保コウヘイ(サッシャさん分) ヘア&メイク/Asami Horie(羊文学分)、坂口勝俊(Sui/サッシャさん分) 構成/旧井菜月