忙しい日々の中で、自分の成長を確かめる時間を持てているでしょうか? 振り返りが、次のステップにとって大切なことは分かっていても、なかなか難しいですよね。振り返るにしても、上手に行わなければ単なる作業に終わってしまいます。
そんなときに便利なのが「KPT法」です。とはいえ、完璧な手法ではありません。あなたが本当に成果を上げたいのなら、その欠点を知ることが重要です。今回は、見落としがちなKPT法の落とし穴について深く掘り下げ、有効な活用方法をお伝えします。
KPT法とは?
KPT法(Keep, Problem, Try)は、プロジェクトや業務の振り返りに用いられるフレームワークの一つです。これにより、何がうまくいっているか(Keep)、何が問題か(Problem)、そして次に何を試すべきか(Try)を整理し、効率的な改善策を見つけることができます。
KPT法の基本要素
KPT法は、振り返りを効果的に行うための手法で、3つの要素に分けて考えることが特徴です。これを活用することで、業務やプロジェクトを改善し、次に進むための道筋を明確にします。以下に、それぞれの要素について説明します。
・Keep(継続すべき点)
最初に、成功した点や上手くいった部分を振り返ります。Keepはポジティブな成果や行動に焦点を当て、これを今後も継続すべき重要なポイントとして捉えます。例えば、顧客対応が好評だった場合、その対応方法を維持することが挙げられます。
・Problem(解決すべき問題)
次に、改善が必要な課題やうまくいかなかった部分を明確にします。Problemでは、失敗や不足している点を具体的に洗い出し、なぜうまくいかなかったのかを分析します。これにより、同じ問題を繰り返さないための改善点が浮き彫りになります。
・Try(実行すべきこと)
最後に、次回取り組むべき改善策や新しいアクションを考えます。Tryは、Problemで発見した課題に対してどう対処するかを決める段階です。具体的な行動計画を立て、次に試すべき新しいアイデアや解決策を実行に移します。
この3つの要素を活用することで、振り返りを効果的に行い、次のステップへと進むことができます。では、次のチャプターでは具体的なメリットを見ていきましょう。
KPT法のメリット
KPT法のメリットは、プロジェクトの進捗を可視化し、課題を早期に発見し解決するために役立つ点です。効果的に実施することで、以下のような利点が得られます。
課題の早期発見
KPT法を活用することで、プロジェクトや業務の進行中に潜在的な課題を早期に発見することが可能になります。Keepで成功した点を確認しつつ、Problemでは現時点での課題を明確にします。このプロセスを定期的に繰り返すことで、通常の業務では見落としがちな問題点にも気づきやすくなります。
例えば、売上が順調でも、顧客からの問い合わせが増えているなどの兆候があれば、それを問題として早期に解決できます。課題を早めに発見することで、大きなトラブルに発展する前に対策を講じることができますね。
効果的な意見交換
KPT法を使うことで、チーム内での意見交換がより活発になり、効果的なコミュニケーションが生まれやすくなります。この手法では、各メンバーが「Keep(継続すべき点)」「Problem(解決すべき問題)」「Try(実行すべき事)」を共有できるようになるため、各自が独自の視点を持ち寄ることができます。
これにより、普段見逃してしまいがちな問題や、別の視点からのアイデアを交換することも可能になります。より多角的な議論の展開も期待できるわけです。
例えば、あるメンバーが見逃していた課題に別のメンバーが気づくことで、全体のパフォーマンス向上につながる重要な改善策が浮かび上がることもあります。KPT法は、チーム全体が協力して業務を改善するための土台を提供し、意見交換の質を高めてくれます。
やることの明確化
KPT法の「Try(実行すべきこと)」を活用することで、次に何をすべきかが具体的で明確になります。振り返りを通じて課題や成功点を洗い出した後、Tryのステップでは、それらに基づいた具体的な改善策や新しい行動計画を立てます。
これにより、チーム全体が共通の目標に向かって動きやすくなり、業務改善やプロジェクトの進捗がスムーズに進むようになるでしょう。次に行うべき具体的なタスクがはっきりしていれば、曖昧な指示で時間を浪費することもなく、効果的な改善が実現します。
これらのメリットにより、KPT法は多くの企業やチームで導入されています。しかし、欠点も無視できません。次に、その欠点を見ていきます。
KPT法の欠点
どんな手法にも長所と短所があるように、KPT法にも欠点があります。これらを理解することで、KPT法を効果的に活用するためのヒントを得ることができるでしょう。
Keepの軽視
KPT法における「Keep(継続すべき点)」は、成功した要素や効果的だった取り組みを振り返り、それを継続するための重要なポイントです。しかし、振り返りの際に、課題解決に焦点が当たりすぎると、Keepが軽視されることが起こってしまいます。
この軽視の原因は、「良い点は当然」という意識が強いためです。結果として、成功事例を再現したり、それをさらに発展させる機会を逃してしまう可能性があります。
また、いい点を正当に評価しないと、チーム全体のモチベーションを下げたり、成功体験が共有されないことになるかもしれません。
振り返りと問題解決の混同
KPT法では、振り返りと問題解決が一緒に行われるため、Tryに進む前に明確な解決策が見つからないまま議論が進むことがあります。結果として、次に何をすべきかが曖昧になり、改善策が具体的でない状態で進められてしまうことに…。
振り返りと解決策は分けて考え、解決に向けて具体的な行動計画を立てることが重要です。
継続的な実施が難しい
KPT法を効果的に活用するためには、継続的な実施が求められます。しかし、チーム全員のモチベーションを維持しながら続けるのは容易ではありません。
初めは熱心に取り組んでいても、時間が経つにつれて形式的な作業になり、実際の改善につながらないケースもあります。継続して実施するための仕組みやモチベーション維持の工夫が必要です。
KPT法の改善策
KPT法を効果的に活用するためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。これらの改善策を取り入れることで、欠点を克服し、より効果的な振り返りを実現することができるでしょう。
意見しやすい環境作り
まず、チームメンバー全員が意見を出しやすい環境を整えることが重要です。ファシリテーターの役割が特に重要で、議論を円滑に進め、全員が積極的に参加できるようにする必要があります。 「話しづらい雰囲気」は、チームの成長を妨げるため、メンバー間の信頼を築くことも重要です。
適切なファシリテーターの設置
次に、ファシリテーターを設置し、議論が偏らないように調整する役割を持たせることが大切です。チームメンバーがリラックスして意見を出せるように、ファシリテーターがバランスを取ることで、より効果的な意見交換が可能になります。
ファシリテーターを設置することで、議論がスムーズに進み、全員の意見が反映されやすくなります。
定期的な振り返りの実施
定期的にKPT法を実施することで、継続的な改善が可能になります。継続的な実施により、チーム全体が常に改善を意識し、次に進むための具体的なアクションプランを持つことができます。モチベーションを維持するために、結果を可視化し、メンバー全員が成果を感じられるようにすることも重要です。
最後に
KPT法は振り返りや改善策の整理のために非常に有効な手法ですが、欠点を理解して効果的に活用することが求められます。そのためには、適切な環境作りや定期的な実施を行い、チーム全員が参加しやすい雰囲気を作ることが大切です。KPT法を活用して、チームのパフォーマンスを向上に役立ててみてはいかがでしょう。
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