目標達成に向けた実践的な方法をご紹介
偏差値30台の高校時代から東大に合格し、結婚や出産といったライフスタイルの変化を経て、語学や資格取得などの結果を出した石黒由華さんの『夢を先送りしない勉強法』(技術評論社)より一部抜粋・編集して目標達成に向けた実践的な方法をご紹介します。
確実な“絞りこみ”が目標達成への道
「資格を取得してキャリアアップしたいな」「英語をもう少し頑張りたいな」などの目標や夢を持っている人は多いと思います。でも「こうなりたい」という理想の姿がありながら「忙しくて時間がない」「勉強は苦手」など、ついできない理由を見つけて「先送り」してしまいがちな人も多いのではないでしょうか。
ここでは、目標を達成するための道しるべをご紹介します。
「2種類」の目標を設定する-目標は「2種類」つくるとうまくいく
叶えたいことをリストアップしたら、その中から目標を「2種類」に絞りこみます。なぜ「2種類」なのでしょうか? 3つも4つも目標があると処理しきれないのは明白ですが、なぜ「1つ」よりも「2つ」がいいのでしょうか? それは、目標が2つあったほうが、メリットがあるからです。
モチベーションを維持しやすい
目標が1つしかないと、失敗した場合、自分自身が否定されたような気持ちになります。努力する過程でも「自分にはこれしかない」と思うと、プレッシャーが大きく、苦痛を感じてしまいます。完璧主義に走り、非効率な進め方をしてしまうことにもつながりかねません。
一方、目標が2つあると、「もしダメでももう1つがある」と思えることで、苦痛が軽減され、ラクな気持ちで取り組めます。「逃げ」をつくることで気持ちを軽くでき、結果的に最後まで継続して努力しやすくなるのです。
また、片方の目標達成に向けた勉強をどうしてもやりたくないと感じたり、勉強に飽きてしまったりしたときに、そのやりたくない気持ちの反動で、もう片方の目標に向けた勉強に取りかかりやすいというメリットもあります。
たとえば、私はこれまで「英語」と「会計・簿記」、「英語」と「プログラミング」など、異分野の勉強を同時におこなってきました。そして、英語に疲れたときはプログラミングを勉強し、プログラミングに飽きたときは英語を学ぶというようにしていました。そうすることで、「英語以外のことに取り組める」「やっと数式から解放された」と、嫌なものから逃れられる安堵感から、もう片方の勉強が不思議なほどにサクサク進められるようになりました。
相乗効果で学びがスピーディになる
さらに、片方で学んだことから、もう片方にも役立つ知識・スキル・考え方などが得られ、1つのことしか学んでいない時よりも驚くほどスピーディに学習できることがあります。これは「学習の転移」といって、教育心理学でも言われていることです。
私が英語とプログラミングを同時に学んだときの例で言うと、プログラミング言語で用いられている言語は英語であるため、英語を同時に学ぶことで理解しやすくなり、習得スピードが速まりました。逆に、プログラミング学習で身につく論理的思考力は、英文のライティングやスピーキングの文章作成スキルの向上に役立ちました。
マンガ家の手塚治虫さんも、こんな名言を残しています。
「夢は2つ以上持ってください。僕も漫画家と医者という2つの夢を持っていました。夢が1つしかないと、その夢が破れたとき挫折してしまう。でも2つ以上夢があれば、そうはならないでしょ」
「医師」と「漫画家」という2つの夢を抱いた手塚治虫さんは、漫画家の夢を大成させただけでなく、大阪大学の医学部を卒業し、医師国家試験にも合格。医師としての知識をフル活用し、漫画家としての代表作『ブラック・ジャック』を生み出しています。「2つ」の夢を叶えた経験が、彼自身や彼の作品に大きな影響を与えたのです。
「リストアップした目標が多くて迷ってしまう……」そんな時は、最後にリストに残った目標を「2つの基準」で評価してみましょう。
1:目標に向けた勉強は、自分にとって「手をつけやすい」ものか? それとも、「手をつけづらい」ものか?
2:目標は、どちらかというと「自分の夢」を重視した目標か? それとも、どちらかというと「確実なリターン」を重視した目標か?
「手をつけやすい目標」は必ず入れる
まずは、「手をつけやすい目標」なのかどうかを見極めましょう。「手をつけやすい目標」とは、「やる気が出ないときでも何らかの行動を起こせる目標」のことです。
・得意なこと
・大好きなこと
・これまでに学んだ経験のあること
・楽しく学べること
・夢中になれること
・趣味や遊びの延長でできること
逆に、「手をつけづらい目標」とは、「苦手だ」「初学である」などの理由で、目標に向けた行動を起こしづらい目標のことです。また、たとえ大好きで夢中になれることでも、負担が大きくて着手しづらい目標はこちらに当てはまります。
たとえば、私の場合、大学院での論文執筆は独創性が求められ、負担感が大きいため、「手をつけづらい目標」です。これに対して、ほかの人が書いた学術書や新書、研究論文を読むのは、読むだけなのでそれほど負担がかからず、「手をつけやすい目標」です。
最終的に決定する「2種類の目標」のうち、どちらか片方でも「手をつけやすい目標」であれば、最初のエンジンをかけやすくなります。もう片方は、最初のエンジンがかかり、やる気が出てきたところでうまく切り替えて学び始めればいいのです。2つの学びを上手に行き来することで、効率良く、楽しく勉強しましょう。
「手をつけやすい目標」でピンとくるものがなかったら
「手をつけやすい目標」としてピンとくるものがない場合は、「語学」の勉強を選ぶといいでしょう。特に「英語」は、ほとんどあらゆる職種や場面で必要とされますし、現代人が学んでおくべき必須スキルであり、おすすめです。
私自身、これまで「2つの目標」のうちの1つに、語学を入れることが多かったです。大好きなドラマや、興味のある海外の政治家やセレブリティの記事、英会話スクールなどを活用し、楽しみながら、目標達成をしていました。
「教養」も、「手をつけやすい目標」になりやすいです。歴史や芸術(絵画や音楽)などの「教養」は、面白みがあって、手をつけやすいのではないでしょうか。また、最近では、『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社)などの本が注目されたり、宇宙飛行士候補の米田あゆさんが外科医をしながら芸術系大学院に通っていたことが話題になるなど、教養の価値が見直されています。
また、「読書」も、アウトプットが求められず、疲れているときでもおこないやすいです。ビジネス書を読み、仕事術や時間術を学んだり、自分の職種や業界の知識を学べる本をパラパラとめくったりするだけなら、モチベーションに関わらず比較的手をつけやすいです。
「自分の夢を重視した目標」と「今の現実的報酬を重視した目標」を組み合わせる
リストアップした目標を、次の2つで分ける方法です。
・将来の長期的計画に向けた「自分の夢を重視した目標」
・短期的報酬を優先させた「現実的報酬を重視した目標」
もちろん、「自分の夢を重視した目標」であり、かつ「今の現実的報酬を重視した目標」でもある場合は問題ありません。
しかし、もし2つの目標のうち、片方が「自分の夢を重視した目標」ならば、もう片方は「現実的報酬を重視した目標」にしましょう。逆に、片方が「現実的報酬を重視した目標」ならば、もう片方は「自分の夢を重視した目標」にしてみましょう。
「自分の夢を重視した目標」の例
・「別の業界に転職したい」
・「自分の会社を立ち上げたい」
・「ハーバード大でMBAを取りたい」
たとえば、「今は一般企業に勤務しているが、将来は大学やシンクタンクで社会政策の研究がしたい」という大きな夢や長期的計画に向けて、「東大の公共政策大学院に入学する」という目標を立てるといった形です。
「今の現実的報酬を重視した目標」の例
・「早く会社で評価されたい」
・「〇月までに×kg痩せたい」
直近で結果が出せて、周囲からもすぐに評価してもらえる目標です。たとえば、仕事に役立つ資格を取得したり、ビジネス書を読んで役立つ知識を身につけることが挙げられます。
「自分の夢を重視した目標」ばかりだと不安や焦りに苛まれ、「現実的報酬を重視した目標」ばかりだと退屈や虚しさに襲われてしまいます。両者を組み合わせれば、その心配はありません。
「自分の夢を重視した目標」を持つことで得られる喜びや生きがいは、「現実的報酬を重視した目標」に向けて努力するための元気を与えてくれますし、「現実的報酬を重視した目標」があることで、常に結果を出し続けることができ、周囲からの評価や自己肯定感が高まり、「自分の夢を重視した目標」に安心して取り組めます。
TOP画像/(c)Adobe Stock
夢を先送りしない勉強法
著者:石黒由華
出版社:技術評論社
石黒由華
東京大学卒業。学生時代から20年以上勉強法を研究し、「だれでも、どんなに時間がなくても結果の出る勉強法」を考案。勉強でさまざまな夢を叶える。
高校時代は、学級崩壊しているクラスで「偏差値30台」だったところから、独自の勉強法を確立し、早慶上智、さらに東大に逆転合格。
大学では教育学を学ぶ傍ら、大学受験雑誌のライター、全国模試の採点アルバイトを経験し、「結果の出る勉強法」をさらに深く研究。天才・秀才たちの集まる東大を「トップクラスの成績」で卒業。卒業後は、約500倍の倍率を突破し、マスコミ企業に就職。
その後も、限られた時間の中で仕事と勉強を両立、英語・IT・会計など8つの資格を「独学」で取得し、昇進やキャリアアップを果たす。中でも、英語では「TOEIC950点超」を取得したほか、留学経験ゼロで自己紹介もできなかったところから「Google社員レベル」と評価されるほどペラペラに話せるまでにレベルアップ。
結婚・出産後も、なかなか寝てくれない0歳児の子育てで自分の時間がほとんど作れない中で、「約半年で」東大大学院に合格。
趣味は、旅行、美術鑑賞、美容。世界遺産検定、美術検定、化粧品検定などを取得。大好きな趣味を楽しみ、充実したプライベートを過ごす。