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LIFESTYLE

2024.09.29

将来、本当に年金はもらえる…? 池上彰氏が解説します!

今回ピックアップするのは、年金破綻が起きないかについて。 『池上彰の未来予測 After 2040』より解説!

社会を取り巻く環境は目まぐるしく変化していて、これから先、私たちの暮らしはどうなってしまうんだろう…… と、不安を感じている人も多いはず。

そこで、ジャーナリスト・池上彰氏の新著『池上彰の未来予測 After 2040』から、今からどのように行動していけばいいのかについてのヒントを探ります。

書籍より一部引用・再編集し、生成AI、仕事、物価、退職金、年金…… など、気になるトピックスについて、全7回の連載形式で解説。

(c)Adobe Stock

前回の記事>>【池上彰氏が解説】IoT時代、あえて「ていねいな暮らし」にこだわる人が多い理由

国が存続する以上、年金破綻は起きない

 「年金破綻論」が定期的に取り沙汰されます。若い世代では、「年金はもらえなくなるんじゃないか」という不安を抱いている人たちが多くいます。

しかし、「年金はもらえます」と断言します。「年金がもらえないんじゃないか」ということは、すなわち「日本という国がなくなるんじゃないか」というのと同じ意味だということをぜひ知っておいてください。

年金は国として日本国民に約束をしたことですから、国が存続する以上、年金は絶対払わざるを得ないのです。

ただし今の若者たちの世代も、これまでに年金を受け取った世代のようにたっぷりと年金をもらえるかというと、そうはならない可能性は高いでしょう。

私(1950年生まれ)よりも少し年上の世代である「団塊の世代(主に47~49年生まれ)」は、自分がこれまでに納めてきた年金保険料以上の年金を受け取っています。

ただ今後は年齢が下がるにつれ、受け取れる年金額も少しずつ下がっていく予定になっています

今の40歳くらいの人たちは平均寿命の年齢まで生きたとして、納めた額の分と同額か、それよりも少ない額を受け取ることになる見込みだと試算されています。

「損をするのか」と怒りたくなる気持ちもわかりますが、ここで念頭に置いてほしいことは、年金は年金「保険料」という名のとおり、「保険」なのだということです。

保険とは、いざというときのリスクに備えるものです。

(c)Adobe Stock

たとえば健康保険は、病気やケガになったときに3割負担で治療が受けられるもので、だからこそ私たちは毎月保険料を納めています。

しかし「保険料を納めていて元を取らなきゃいけないから、病気やケガになりたい」と思う人はいませんよね。

介護保険も、将来介護が必要になったときのリスクに備えて納めているものです。とはいえ「40歳から介護保険料を納めているわけだから、将来寝たきりになって介護保険を受けなきゃ損だよね」とは、誰も思わないはずです。

つまり年金も、本来はリスクに備えるためのものなのです。

このリスクとは何かというと、ずばり「長生きのリスク」です。長寿というめでたいことをリスクと言うのは嫌ですが、そういう制度設計だというわけです。

長生きしたけれど、高齢になって仕事もなく、十分な資産がない。そういうリスクに備えて、年金が出るのだということです。

そのため本来、所得の高い人、資産をたくさん持っている人など、年金をもらえなくても生活できる人は年金を受け取らなくていいはずなのです。

将来的には年金本来の意味に立ち返って、日本の年金は所得の高い人や資産の多い人には支給しなくなる可能性はあります。

現在も、年金受給資格を得ていても給与所得が多い人は、月6万円の老齢基礎年金のみを受け取り、それ以外の老齢厚生年金は一部のみの支給、または支給停止となっています。

老齢基礎年金も、収入のある人には支給を停止すればいいじゃないかという議論が出ています。資産を持っている人への年金の支給停止という案は、今までは資産を把握する方法がなかったために現実的ではありませんでした。

けれどもマイナンバーへの銀行口座の紐づけが進みつつあるため、今後は可能になっていく見込みがあります。

現時点では政府は国民の所得しか掌握できていませんが、これから銀行預金などの資産も政府が追跡できるようになります。すると「一定の資産がある人に関しては年金を支給しません」ということが、将来的に検討されるようになると思います。

年金はあくまで保険なのだから、「年金が受け取れなくて損だ」ではなく、「年金に頼らなくても生活ができるというのは幸せなことなんだから、もらわなくてもいい」と発想を転換すべきだという議論がこれから活発になっていくはずです。

年金受給開始年齢が年々後ろ倒しされていることも、多くの人の不満を買っています。

年金定額部分は男性が2001年から、女性は06年から、3年に1歳ずつ12年かけて、受給開始年齢が60歳から65歳へと引き上げられました。

年金の報酬比例部分も同様に、男性は13年から、女性は18年から、12年かけて引き上げられている最中です。

しかし昔は、平均寿命が短かったわけです。たとえば01年の日本人の平均寿命は、男性78.07歳、女性84.93歳でした。22年では、男性が81.05 歳、女性が87.09歳です。

21世紀になってからも、平均寿命は2~3年ほど延びているのです。

つまり受給開始年齢が60歳から65歳へと引き上げられてはいますが、平均寿命も延びていることで、実質的に年金をもらえる年数はそれほど変化しないといえます。

また、医療は日進月歩で進化しています。最近ではアルツハイマー病型認知症の進行を抑える薬が開発され、おおいに話題となりました。人生100年時代、高齢になっても寝たきりになったり認知症になったりせず、元気で過ごす人が増えてくるはずです。

その人たちに70歳くらいまで元気に働いてもらい、年金を受け取るのではなくむしろ年金保険料を納めてもらえば、今後日本の高齢者が増えていっても社会がなんとか成り立っていく、そういう明るい未来があり得るはずです。

***

TOP画像/(c)Adobe Stock

『池上彰の未来予測 After 2040』(池上彰 著/主婦の友社)

あなたは16年後の自分を想像できますか? あなたが今40歳なら、56歳。定年退職が見えてくる時期です。定年後、人生の節目を迎えてなお社会や家族から見放されないためには、過去の出来事から未来を予測し今から準備をする必要があります。とはいえ未来を考えると、暗い将来ばかりを思い描いてしまいがちです。たとえば円安がさらに進み、自分の収入だけでは生活できない経済状況になってしまわないか?大地震や富士山の噴火など未曾有の災害に襲われないか……などなど。不安というものは、いったん考え始めると次から次へと出てきて、思考が不安に支配されてしまいます。私はそうならないために、未来をなるべく楽観的に考えることを心掛けています。ですので、本書では明るい未来と暗い未来の両方を想像しています。あなたの未来が暗くならないために、今からどう行動していけばいいのか? 本書をそのきっかけにしてもらいたいと思います。

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