社会を取り巻く環境は目まぐるしく変化していて、これから先、私たちの暮らしはどうなってしまうんだろう…… と、不安を感じている人も多いはず。
そこで、ジャーナリスト・池上彰氏の新著『池上彰の未来予測 After 2040』から、今からどのように行動していけばいいのかについてのヒントを探ります。
書籍より一部引用・再編集し、生成AI、仕事、物価、退職金、年金…… など、気になるトピックスについて、全7回の連載形式で解説。
前回の記事>>【池上彰氏が回答】そもそも、どうしてこんなに物価が上がったの?
IoT住宅が普及する一方、「ていねいな暮らし」にこだわる人も
共働き家庭で時間や労力を捻出するために必須なのが、家事の時短を進めること。
10年ほど前から、「ロボット掃除機」「食器洗い乾燥機(食洗機)」「ドラム式洗濯乾燥機」が共働き家庭の「新・三種の神器」といわれてきました。
2023年時点での所有率は2~3割程度にとどまっているそうですが、重宝しているという共働き家庭は多いことでしょう。
さらに今後は、IoT住宅も普及していくと思います。
IoTは「Internet of Things」の略で、IoT住宅とは、家電や設備などの「モノ」がインターネットにつながった住宅のことです。
家電や設備を一つひとつ手で操作することなく、スマホやスマートスピーカーなどを通して一斉に操作したり、自動設定にしたりすることができるのです。
たとえば外出するとき「いってきます」の一言で、家じゅうの電気を消し、エアコンを消し、シャッターを閉め、戸締まりもしてくれるというわけです。
帰宅をするときも、真夏の暑い時期に最寄り駅に着いたくらいでスマホから指示を出せば、家に着いた頃には冷房が効いて涼しい部屋に帰れます。
自動洗浄機能がついた浴槽なら、浴槽の清掃・お湯張りも可能で、帰宅したらすぐにきれいなお湯に浸かることもできるのです。
IoT住宅以上の性能をもつ「インテリジェントハウス」も登場しています。
住んでいる人の行動を予測する学習機能が備えられている住宅のことで、たとえば「朝起きて洗面所に行き歯磨きをする」習慣の人がいれば、インテリジェントハウスが数回学習した後に、その人が起きて洗面所へ行こうとすると廊下の電気がつき、歯ブラシが自動的に目の前に差し出される…… といった具合に、その人の行動に合わせた環境が自動で整えられるのだそうです。
ただこれは、介護が必要な人などにはいいのかもしれませんが、元気な人たちにとっては「生きる力を失わせるのでは?」と心配にもなってきます。
自立して生きていく力がどんどん失われて自分では何もできなくなったり、認知症が進んでしまったりしそうです。
便利になりすぎることが、2040年の大きな課題となる予感がします。
その反動で、不便さもある昔ながらの住宅で「ていねいな暮らし」をして人間性を取り戻す暮らしにこだわるというライフスタイルも、根強い人気が続きそうです。
仕事はどんどんオートメーション化しつつ、暮らしは自然へと回帰し、自分の頭と体を極力使い「生きる力」を身につけるほうがよさそうです。
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『池上彰の未来予測 After 2040』(池上彰 著/主婦の友社)
あなたは16年後の自分を想像できますか? あなたが今40歳なら、56歳。定年退職が見えてくる時期です。定年後、人生の節目を迎えてなお社会や家族から見放されないためには、過去の出来事から未来を予測し今から準備をする必要があります。とはいえ未来を考えると、暗い将来ばかりを思い描いてしまいがちです。たとえば円安がさらに進み、自分の収入だけでは生活できない経済状況になってしまわないか?大地震や富士山の噴火など未曾有の災害に襲われないか……などなど。不安というものは、いったん考え始めると次から次へと出てきて、思考が不安に支配されてしまいます。私はそうならないために、未来をなるべく楽観的に考えることを心掛けています。ですので、本書では明るい未来と暗い未来の両方を想像しています。あなたの未来が暗くならないために、今からどう行動していけばいいのか? 本書をそのきっかけにしてもらいたいと思います。