社会を取り巻く環境は目まぐるしく変化していて、これから先、私たちの暮らしはどうなってしまうんだろう…… と、不安を感じている人も多いはず。
そこで、ジャーナリスト・池上彰氏の新著『池上彰の未来予測 After 2040』から、今からどのように行動していけばいいのかについてのヒントを探ります。
書籍より一部引用・再編集し、生成AI、仕事、物価、退職金、年金…… など、気になるトピックスについて、全7回の連載形式で解説。
前回の記事>>【池上彰氏がアドバイス】リスキリングって聞くけれど… 何をすれば良いの?
どうしてこんなに物価が上昇したのか?
2021年から22年にかけて、世界的な物価上昇が起きました。
その理由は主に3つあります。
1つ目は、新型コロナウイルスへの感染をみんなが恐れなくなり「コロナ禍が明けた」という明るい雰囲気の中で、さまざまな経済活動が、世界中でコロナ禍前のように復活をしたからです。
コロナ禍での外出制限やロックダウンなどが何年も続き、「巣ごもり消費」をしていた頃から一転、自由に買い物や旅行ができるようになったことで人々の「リベンジ消費」が始まりました。
コロナ禍で落ち込んでいた消費意欲が復活し、モノやサービスが飛ぶように売れるようになったわけですね。
2つ目の理由は、そうして需要が急激に生まれたことによって供給のほうが追い付かなくなったからです。
世界的にさまざまなモノの価格が上がり始め、急な増産に対し人手不足が起きて賃金が上昇した分野に関しては、賃金上昇分が価格に転嫁されてまた値上がりする、という循環も起きました。
3つ目は、2022年2月に起きたロシアによるウクライナへの軍事侵攻で、石油が値上がりしたからです。
石油1日あたりの生産量は、ロシアが世界3位です。このロシアに多くの先進国が経済制裁をした結果、石油の供給がひっ迫し価格が高騰しました。
石油が高値だと、モノを運ぶための流通経費は上がるし、電気代も上がります。それに伴って、物価が上昇しているのです。
ここまでの3つの要因が、世界的な物価高騰、インフレーションが起きた理由です。
そして日本の場合は、独自の4つ目の理由があります。「円安によって、輸入品の値段が上がっている」というものです。
2022年3月上旬まで1ドル=115円程度だった対ドル相場は、3月中旬頃から円安に向かっていき、24年春にはおおむね1ドル150円台半ばで推移しています。
一時は160円台まで下落し、約34年ぶりの円安水準になったとして大きなニュースになりました。
単純計算で、輸入品の価格は1.3倍になってしまっているということです。
***
TOP画像/(c)Adobe Stock
『池上彰の未来予測 After 2040』(池上彰 著/主婦の友社)
あなたは16年後の自分を想像できますか? あなたが今40歳なら、56歳。定年退職が見えてくる時期です。定年後、人生の節目を迎えてなお社会や家族から見放されないためには、過去の出来事から未来を予測し今から準備をする必要があります。とはいえ未来を考えると、暗い将来ばかりを思い描いてしまいがちです。たとえば円安がさらに進み、自分の収入だけでは生活できない経済状況になってしまわないか?大地震や富士山の噴火など未曾有の災害に襲われないか……などなど。不安というものは、いったん考え始めると次から次へと出てきて、思考が不安に支配されてしまいます。私はそうならないために、未来をなるべく楽観的に考えることを心掛けています。ですので、本書では明るい未来と暗い未来の両方を想像しています。あなたの未来が暗くならないために、今からどう行動していけばいいのか? 本書をそのきっかけにしてもらいたいと思います。