社会を取り巻く環境は目まぐるしく変化していて、これから先、私たちの暮らしはどうなってしまうんだろう…… と、不安を感じている人も多いはず。
そこで、ジャーナリスト・池上彰氏の新著『池上彰の未来予測 After 2040』から、今からどのように行動していけばいいのかについてのヒントを探ります。
書籍より一部引用・再編集し、生成AI、仕事、物価、退職金、年金…… など、気になるトピックスについて、全7回の連載形式で解説。
前回の記事>>【池上彰氏が解説】近い未来、退職金制度がなくなるって本当!?
過渡期におけるリスキリング
今、国をあげてリスキリングに取り組んでいますが、そもそもなぜリスキリングが大切なのか。
それは、スキルは教養よりも、陳腐化するのが早いからです。
特にITの進化などで時代が大きく変わりつつある今は、スキルの陳腐化のスピードも加速しています。
学生時代に学んだことも、多少は変化していきますが、基本的には大部分が「使える部分」のまま残ります。これが教養(リベラルアーツ)です。
直接には仕事の役に立たないかもしれないけれど、いずれじわりじわりと役に立ち、生涯使えるものなのです。だからこそ、学生時代に教養はしっかりと学んでおいてほしいものです。
一方、就職してからすぐに、あるいは直接役に立つようなことが「スキル」です。こうしたスキルは、いずれ役に立たなくなります。
そうしたスキルをアップデートしていくのが「リスキリング」です。
スキルは、「ちょっと古びてきたな」と思ったら改めて学び直し、それによって常にリニューアルしていく必要があるのです。
リスキリングをしようとするときには、「自分を知ることができる」というメリットもあります。
「将来に向けて、自分はどんなスキルを身につけたいのか」と考えや思いを深掘りしていくことは、自分を発見するきっかけになるからです。
「今の仕事とは直接関係がないけれど、こういうことも学んでみたい」などという考えが浮かんできたら、それが実はあなたがやってみたい仕事なのかもしれません。
「学びたいものを選ぶ」ということは、新しい人生が生まれるきっかけになることだと思うのです。
「スキルが陳腐化してきているのは感じる。だからリスキリングしていかなきゃいけないけれど、やる気が出ない」というときは、逆に、今の仕事が嫌になったり飽きたりしていることへのサインの場合もあります。
リスキリングは面倒くさい、と思う人は、一度「役に立つかどうか」から外れて、教養でも何でもいい、少しでも自分の興味のあることから少しずつ挑戦してみるといいでしょう。
今30代や40代の人は、古い価値観の残る日本社会、たとえば年功序列で体育会系、飲み会や社員旅行をするといった日本企業特有の文化も知っています。
一方で、若い人たちの割り切った考え方、数年であっさりと転職するような価値観も、ある程度理解ができることでしょう。
社会が変化する過渡期の、「狭間の世代」です。そんな30代や40代が、2040年には中高年世代になります。今30歳なら46歳、40歳なら56歳になります。
変化の激しい世の中で、リストラに怯えたり、若い世代についていけないと悩んだりせず、働き続け、稼ぐことのできる人間でいられるかどうか。
その分岐点が、リスキリングにあるといえます。
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『池上彰の未来予測 After 2040』(池上彰 著/主婦の友社)
あなたは16年後の自分を想像できますか? あなたが今40歳なら、56歳。定年退職が見えてくる時期です。定年後、人生の節目を迎えてなお社会や家族から見放されないためには、過去の出来事から未来を予測し今から準備をする必要があります。とはいえ未来を考えると、暗い将来ばかりを思い描いてしまいがちです。たとえば円安がさらに進み、自分の収入だけでは生活できない経済状況になってしまわないか?大地震や富士山の噴火など未曾有の災害に襲われないか……などなど。不安というものは、いったん考え始めると次から次へと出てきて、思考が不安に支配されてしまいます。私はそうならないために、未来をなるべく楽観的に考えることを心掛けています。ですので、本書では明るい未来と暗い未来の両方を想像しています。あなたの未来が暗くならないために、今からどう行動していけばいいのか? 本書をそのきっかけにしてもらいたいと思います。