「オンボーディング」という言葉を聞いたことがありますか? 「転職先でオンボーディングがあった」という方もいらっしゃることでしょう。ですが、まだまだ業界によってはなじみのない言葉かもしれませんね。
この記事では、オンボーディングの概要や、オンボーディングの進め方の例、成功事例などを解説します。キャリアアップにも役立つ内容ですので、ぜひチェックしてみてくださいね。
オンボーディングとは?
オンボーディングとは、どのようなものなのでしょうか? オンボーディングは、新しい職場に入社した時などに聞くことがあるかもしれません。まずは、オンボーディングの意味や概要からみていきましょう。
オンボーディングって何?
オンボーディングとは、会社などで新しく入社する人に対して、職場で活躍しやすいように支援を行うことです。オンボーディングを、「入社時説明会」などと呼んでいる会社もありますよ。
ただ、本来オンボーディングは、単なる会社説明ではありません。どちらかと言えば、入社した人が職場に定着して活躍しやすいように、定期的な面談や講習など、さまざまな支援をするというイメージが近いでしょう。
せっかく入社した人が、職場になじめずに、すぐに退職してしまうという話を聞くこともありますよね。実際にこのような経験をしたことがある方も、いらっしゃることでしょう。
実は、このように早期の退職者が出てしまうのは、企業にとっても、かなりの痛手。というのも、人手が足りない職場の場合、せっかく採用できた人がすぐに辞めてしまうと、もともとその職場で働いていた人にも負担がかかってしまうからです。また、採用コストなどの経済的な損失も見過ごせないポイント。
こういったさまざまな問題がおこることを防止するというねらいも、オンボーディングにはありますよ。
オンボーディングの必要性
ある会社では、新卒社員や中途採用者がすぐに退職してしまうという事態が続いていました。「福利厚生や給与面は他社に劣らないのになぜ?」と社長は頭を抱えていたといいます。
その後、中途採用で入社した人から、「この会社って、オンボーディングがないのですね」と驚かれたという話がありました。
そこで、社内アンケートを実施し、「入社時にしてほしかったこと」という意見を集めることに。そして、それをもとにオンボーディングを行うようにしたところ、徐々に定着率が上がっていきました。また、コミュニケーションもスムーズになり、仕事の生産性にも良い影響が。
このように、オンボーディングは、定着率や生産性向上、ミスマッチの防止など、いろいろなメリットがあるというのもポイントですよ。
オンボーディングの効果的な方法
オンボーディングをやってみようと思った時に、気になるのが「どうすれば効果的になるのか」ということではないでしょうか? ここからは、オンボーディングの効果的な方法を解説します。
オンボーディングプログラムの構築
まず、オンボーディングプログラムを構築することが最初のステップです。つまり、オンボーディングでどのようなことを具体的に行うのか、構成を考えるということですね。実は、これを行わずに、人事担当者がざっくりオフィスを案内して終わってしまうオンボーディングもあるようです。これでは、単なる見学のような形になってしまい、社員の定着率や活躍を促すのは難しいでしょう。
オンボーディングプログラムは、会社によってさまざまですが、基本的な構成は次のようなものがありますよ。
・就業規則や会社内のルールの説明
・配属部署での役割や仕事内容の説明
・会社施設内の案内
・入社後のキャリアイメージ
・社内での自己紹介や社員の紹介
さらに、これらに加えて、入社後に定期的な上司との面談をしている会社も。今後求める役割や仕事像とミスマッチがないように、時間をかけて対話を行うというケースもあるようです。
また、長い目で見てキャリアアップをできるように、ヒアリングや勉強支援など、さまざまな形で支援を行っている会社もありますよ。
参考:厚生労働省「実践事例 変化する時代のキャリア開発の取組み」資料
オンボーディング施策の具体例
ここからは、オンボーディング施策の実例をみていきましょう。
ある会社では、入社日に、まず人事担当者から会社説明などを受け、そのあとに、直属の上司や指導担当の職員と面談を行うようにしています。ここでお互いにコミュニケーションを十分にとったところで、配属部署へ紹介。入社した人からは、この流れに対して、「緊張や不安が減って、安心感があった」という声が多数ありました。
また、入社月は週に1回、次の月からは月1ペースで、上司と面談をして、お互いの意見や状況の確認なども行っているといいますよ。
ちなみに、オンボーディングは、SaaS企業のサービスなどでも使われていることをご存知でしょうか? 例えば、SaaSサービスを購入してくれた会社へオンボーディング担当者が訪問し、操作方法やセットアップなどをフォローしてくれることもありますよ。
たしかに、このようにオンボーディングを行うことで、「使い方が分からず、すぐに解約」という事態は防ぎやすくなりますよね。
オンボーディングの成功ポイント
オンボーディングを成功させるポイントには、どんなものがあるのでしょうか? 成功事例をもとにみていきましょう。
オンボーディングの成功事例
あるスタートアップのIT系企業では、入社してきた人に対して、出勤日初日に必ずオンボーディングを行っています。そして、その後は定期的な人事面談を実施。ここでは入社後の不安や悩みなどもヒアリングし、解消できるようにフォローを行っています。さらに、社内勉強会や交流会なども開催しているといいますよ。
「もちろん、かなり時間やエネルギーは使いますが、入社後のトラブルや急な離職はかなり減らすことができました。また、入社したあとに自発的にキャリアアップを目指して、活躍してくれる人材も多いです」と人事担当者は語ります。まさに、オンボーディングの成功事例といえるでしょう。
この事例から分かる通り、まずおさえておきたいオンボーディング成功のポイントは、このような「双方向のコミュニケーション」です。
会社から一方的に説明を聞かされるだけでは、効果的なオンボーディングとはいいにくいでしょう。実際に、転職経験のある筆者の知人は、「入社日初日に、会社の説明や求める仕事像などを長時間話されて、頭がパンクしそうになったんだよね」と語ってくれました。
オンボーディングを行うときは、きちんと双方向の対話が成り立っているかを意識するようにしたいですね。
最後に
この記事では、オンボーディングの概要や、オンボーディングの進め方や注意点、成功させるためのポイントや実例などを解説しました。業界によっては、初めて聞く方もいらっしゃるかもしれませんが、近年耳にする機会が増えてきたキーワードですので、ぜひチェックしてみてくださいね。
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塚原美彩(つかはらみさ) 塚原社会保険労務士事務所代表
行政機関にて健康保険や厚生年金、労働基準法に関する業務を経験。2016年社会保険労務士資格を取得後、企業の人事労務コンサルの傍ら、ポジティブ心理学をベースとした研修講師としても活動中。HP:塚原社会保険労務士事務所 ライター所属:京都メディアライン