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2024.06.23

「目の前のバトルで自分の踊りを出し切って、アップデートしたい」〈ブレイクダンサー・AYUMIさん〉

選択の多い30歳からの人生に、決断は欠かせないもの。各界の第一線で活躍する先人はどんな転機を迎えてきたのか? 今回は、38歳でブレイキン世界選手権を初制覇し、40歳の今なお進化を続けるブレイクダンサーのAYUMIさんにお話をうかがいました。〈第一線の先人たちもアラサーで「選んで」きた The Turning Point~私が「決断」したとき~〉

ブレイクダンサー・AYUMIさんインタビュー

ワクワクする感覚は、自分が常に新しいチャレンジをしていないと生まれないもの

ブレイキン=ブレイクダンスを本格的に始めたのは21歳のころです。きっかけは、カナダ留学中に食べ物がおいしくてめちゃくちゃ太ってしまったから(笑)。あまり自覚はなかったのですが、1年で10kg近く増えてしまい、一時帰国時には母もびっくり。

ブレイクダンサー・AYUMIさん

これは体を動かさないといけないなと。それと同時に、留学先で言葉の壁にぶつかっていた時期でもありました。たとえば、ガス会社に修理を依頼する、銀行の窓口で相談するといった当たり前のことができない。

生活のひとつひとつに葛藤する毎日で、何か新しいことにチャレンジして前に進みたいなという気持ちもあったんです。そんな私を見て、元々ブレイキンを続けていて海外大会にも参加していた姉が、「やってみたら?」と誘ってくれました。

21歳のとき“ブレイキン”の道へ

私自身は中学、高校と習い事程度にヒップホップダンスには触れていたのですが、ブレイキンは未経験。「バトルが主流だから、早く出たほうが上達するよ」と教えてもらい、練習を始めて3週間で参戦することに。

バトルでは、DJがかける音楽に合わせて、即興で1対1で交互に踊って勝敗を競います。初めての対戦相手は小学生の女の子。先輩たちに教えてもらいながら技も準備していったものの、いざ本番になると緊張して途中で止まってしまったり、締めも決まらなかったりと散々で。

ステージ
(c)AdobeStock

ただ、負けたことはまったく気にならず、楽しい! と思えたんですね。ブレイキンは10代の選手も多く、今なら自分は遅いスタートだったんだなとわかるのですが、バトルに出れば年齢も性別もキャリアも関係なく同じ場に立てる。このカルチャーが魅力のひとつでもあると思っています。

カナダに戻ってからもブレイキンを続けたいなと現地のチームに参加。ワーキングホリデーで来ていたダンサーや現地の大学生など、さまざまなバックグラウンドを持つ人たちが集まっていて、学びの連続でした。

ブレイキンには、〝サイファー〟という大人数で輪になってお互いのダンスを見せ合う交流の文化があり、金曜の夜になるとバーに連れていかれて、初対面の人たちの前で踊らされるという無茶ぶりも(笑)。

でも、おかげで人見知りの自分に度胸がつきましたし、自己表現に対する視野が広がり、今でも刺激し合える仲間ができました。

25歳、現在の「BODY CARNIVAL」というチームに参加

ブレイクダンサー・AYUMIさん

カナダのカレッジを卒業して帰国し、地元・京都を拠点とする「BODY CARNIVAL」という現在のチームに参加したのが25歳のとき。まだまだ下手だった私にもみんなが温かく声をかけてくれて、成長していく楽しみを感じながら、欧州やアジアなど海外のさまざまな大会に出場する機会が増えていきました。

ただ、30歳を過ぎたころ、自分自身を客観的に見られなくなった時期を経験しています。バトルに向けて一生懸命練習しても、なぜか不安だけが残る。自分のダンスにワクワクできなくなっていました。理由がわからず1年ほどもがいていたとき、身近な人に「ただビビってるだけでしょ」と言われて腑に落ちたんです。

当時、大きな世界大会やイベントに呼んでいただくようになった私は、「ちゃんとしなきゃ」とか「とりあえずきれいに決めよう」と守りに入っていた。ワクワクする感覚は、自分が常に新しいチャレンジをしてないと生まれないものなんだなとわかったんです。

些細なひと言でしたが、負けるのが怖くて「今の自分でいい」と安定を求めていたことに気づいて気持ちがすっきりし、自分のやりたいことや表現に突き進めるようになったことは、大きな変化でした。

年齢に関わりなく同じ場に立てる体を動かす楽しさを届けたい

チームメンバーの引退とコロナ禍

2019年には、10年以上切磋琢磨してきたチームメンバーたちが一線を退くことに。最後の大会に向けて彼らが集中する姿や、敗れて悔し涙を流す姿を見て、自分もチームを引っ張るひとりだと思っていたけれど、どれだけ甘えていたかを痛感しました。もっとチームに貢献したいと決意した矢先、訪れたのがコロナ禍です。

このまま立ち止まるのではなく、ブレイキンを通して世界に元気を届けたいと思い、姉や友人と共にワークショップ「プロジェクト元気便」を始動。各国の行き来が難しい中で、南米11か国、スペイン、日本をつないで無料のオンラインレッスンとディスカッションを提供しました。

ダンサー
(c)AdobeStock

参加条件は、周囲の人や家族にいいことを何かひとつすること。厳しいロックダウンが続く中、優しさの連鎖を通じて元気を与えるつもりが、参加者の皆さんの思いやりやエネルギーに、私たち自身が力をもらって。人と関わることの大切さを改めて感じた活動でもあります。

仕事・メンタル・フィジカルのバランス

20代後半から39歳まで、日中は定時まで働き、夕方から夜はダンスの練習やレッスンに打ち込むという生活を続けてきました。留学で培った英語を活かす仕事がしたいと思い、日本語学校に電話をかけて直談判。

生徒さんの学習サポートや幼稚園での英語講師として携わり、11年間お世話になりました。校長先生をはじめスタッフの方々がいつも応援してくださって、遠征での休みも理解して支えていただき、本当に感謝しかありません。

去年からは、練習時間を確保すべく、仕事はレッスンでの指導に絞っています。教えるからには自分が学び続けていないと納得できない性分なのですが、体のケアを考え、週に2回は練習を休むように調整。

というのも、37歳のときにヘルニアを患い、肩や首、手のしびれと圧迫感の回復に4か月ほどかかりました。自分の体とじっくり向き合うことは、心を整えることにもつながる。

ブレイクダンサー・AYUMIさん

ブレイキンは練習で百回できても、メンタルが影響して本番ではできないことがあって、私自身20代のころは揺らぎがちでしたが、自分の機嫌は自分でとるしかないなと。

「今日もいい日になりました」という言葉を座右の銘に、毎朝起きると唱えています。過去形で口にすることで、すでに実現したかのように感じられ、より前向きになれる気がしています。

“ブレイキン”の強化選手として

パリ五輪でブレイキンが正式種目となり、現在は強化選手の練習にも取り組む日々。スポーツとしての認知が広がる中、同世代の女性たちから「元気をもらっています」と声をかけていただく機会が増え、ありがたいことですね。若い人たちは身体能力が高くてすごく上手なので、大会のたびにキツいな~とは思っています(笑)。

でも、若い人たちから教えてもらうことは多々あって、チームでは10代のメンバーにも意見を言ってもらいやすい環境づくりを意識し、私もわからないことはどんどん聞くようにしています。いずれ現役でいられる時間には限りがくるかもしれませんが、目の前のひとつひとつのバトルで自分の踊りを出し切って、アップデートしていきたいです。

ブレイキンバトルの魅力を体感!『BATTLE MIXTURE WORLDFINAL 2024』が9/21~22に開催

BATTLE MIXTURE WORLDFINAL 2024

AYUMIさん所属BODY CARNIVAL主催のブレイキンバトルイベントが京都で開催。心躍るダンスカルチャーの世界を生で体感するチャンス!

日程:9月21日(土)、22日(日・祝)
場所:21日はイベントスペースBIRD(河原町二条)、 22日は京都府民総合交流プラザ 京都テルサホール。

詳細は、公式インスタグラムでチェックして。@battlemixture @bodycarnival_kyoto

2024年Oggi7月号「The Turning Point〜私が『決断』したとき~」より
撮影/香西ジュン 構成/佐藤久美子
再構成/Oggi.jp編集部

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AYUMI(あゆみ)

1983年、京都府生まれ。高校卒業後、カナダのバンクーバーへ留学、一時帰国の際にブレイキンと出合う。21歳で本格的に競技をスタート。2008年より、京都を拠点に活動する『BODY CARNIVAL』に所属。2017年、世界最高峰の大会『Red Bull BC One World Final』に、女性として初出場。独創性あふれるムーブを強みに、2021年には38歳で世界選手権優勝。2022年から2024年まで全日本選手権3連覇を達成。ブレイキンが正式種目となるパリ五輪強化選手としても注目されるほか、さまざまな国から審査員やワークショップ講師、ゲストバトラーの依頼が絶えない。自社ファッションブランドの企画も担う。

 

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