ダイナースクラブ会員限定の京都イベントへ
失った日々、時間は多いー。その日々と時間を取り戻すかのように、全国の街や観光地には、ふたたび賑わいが戻ってきています。そうした賑やかさが風景の一部でもあり、賑わうことこそが、その場所や地域の魅力となっているケースも多くみられます。
一方で、賑わいよりも“静かな佇まい”こそが、魅力である場所も多いのは事実。そのような場所では、蘇ったオーバツーリズムを残念に思う人たちも少なくないでしょう。京都もそんな観光地の一つ。
「京都へ行きたいけれど、何処も人で溢れているし…」とか「日本じゃないみたい…」といったつぶやきが聞こえ始めています。
しかし、そんな「オーバツーリズム」の京都にあって、“静かな佇まい”を堪能できるならば、また違った“至福の時間”と“体験”が得られるのではないでしょうか? そんな、一夜の体験をレポートします。
静寂の京都を楽しむ方法とは?
では、どうしたらオーバーツーリズムの中で、静かな京都を楽しめるのでしょう? 筆者自身、京都に約10年住んで分かったことは、「人の紹介を受けて、他の人には入れない場所に行くこと」が一つの方法だということ。と言っても「あなたが10年住んでいるからできるんでしょ?」と思われますよね。確かに、それはごもっともなこと…。しかしながら誰でも、特別な料金を出したり、その施設のクラブ会員になったり、京都のホテル独自の観光プログラムに参加することで、”特別な京都”を堪能できるサービスは増えているんです!
そこで今回は、そんなサービス利用のひとつ、クレジットカードのダイナースクラブ会員限定の「京都イベント」をご紹介します。京都の奥深い歴史を感じながら、魂が磨かれるような時間を過ごすことができました。
三十三間堂と妙法院の貸切特別拝観へ
2023年、ダイナースクラブ会員限定の京都イベントが行なわれたのは、三十三間堂(さんじゅうさんげんどう)。正式には、「蓮華王院(れんげおういん)」と言います。「1001体の千手観音立像が並ぶお寺」と言えば、「あ、あそこね!」とピンとくる方も多いのではないでしょうか? 中には、通し矢を経験された方もいらっしゃるかもしれませんね。
通常、夜間拝観は行なわれていません。しかし、そこはダイナースクラブ。特別にライトアップされた三十三間堂を貸し切っての特別拝観を、実施することになりました。私自身、これまで混雑した中でしか拝観したことがなかったので、非常に期待が高まります。
◆まずは妙法院門跡から
最初に訪れたのは、妙法院門跡。庫裏は豊臣秀吉の造営だと伝わります。三十三間堂の本坊でもあり、通常非公開のお寺ですが、こちらも特別に見せてもらうことができました。
▲妙法院門跡 庫裏は令和9年まで改修工事中。
まず、本堂で見せていただいたのは、幻の絵師と呼ばれる「調子武音(ちょうしぶおん)」作の龍図。なぜ幻の絵師なのでしょうか? 妙法院門跡執事の大道観健さんにワケを聞いてみたところ、「調子武音は、伊藤若冲、円山応挙、池大雅と並び、京都で活躍した画家だと言われています。しかし、彼らと違うのは、作品が残されていないこと。唯一の作品が本堂にある、龍の天井画なのです」とご説明をいただきました。
▲調子武音の龍図
▲妙法院門跡を案内してくださった、執事の大道観健さん。
◆狩野派の描いた襖絵と秀吉の庭
続いて大書院(おおしょいん)も見せていただきました。狩野派が描いた見事な襖絵の南側には庭が設えられています。
▲襖絵「四季花鳥図」
庭は、伏見城の内庭を縮写したものだと伝えられています。秀吉を象徴するひょうたん型の池には石橋が架かっていましたが、こちらはなんと「楠の化石」! 「時を超えても、『美しい』と感じる気持ちは同じなのだろうか?」としばし、思いを馳せながら、庭を眺めました。
▲南庭 池に架かっているのが、楠の化石。
特別に貸し切られた三十三間堂の夜間拝観へ
妙法院門跡を出ると、日が落ちてきました。いよいよ三十三間堂のライトアップへと向かいます。三十三間堂は、もともと平清盛が後白河上皇の幸いのみを願って建てたお堂だったそうです。一人だけのために建てられたと聞くと、驚いてしまいますね。
「夜のお寺」と言うとなんだか怖いイメージを持たれる方も多いかもしれませんが、ライトアップされた三十三間堂は想像以上に幻想的でロマンティックでした!
▲ライトアップされた、三十三間堂。光の中に見える観音立像が神々しい。
1001体並ぶ観音立像も、列に急かされることもなく、自分のペースでゆっくりと見ることができました。「気になる観音さまと対話をするようにご覧ください」との案内通り、心静かに対話をしました。
▲御本尊である十一面千手千眼観世音(じゅういちめんせんじゅせんげんかんぜおん)。
最後に庭園から、僧侶の方たちによる「声明(しょうみょう)」を見せていただきました。仏教音楽がふんだんに盛り込まれた、美しい声明が三十三間堂に響きます。おごそかな雰囲気に魂が洗われるような気持ちになりました。
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賑わう京都の中に特別に設けられた、“静かな佇まい”を堪能することができました。平清盛や後白河上皇がもし、ライトアップされた現代の三十三間堂を見たら、なんと言うでしょう?
今回取材したダイナースクラブのツアーのように、アプローチを変えてみたり、事前の準備をしてみると、あなたが求めている静かな京都に近づけるのではないでしょうか?
【クレジットカードのダイナースクラブ】
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取材・文・写真/京都メディアライン
末原美裕
小学館で11年間雑誌の編集部門において実務経験を経たのちに独立。2014年、文化と自然豊かな京都に移住。フリーの編集者・ライター・Webディレクター。京都メディアライン代表。Facebook:@kyotomedialine