日本橋の名店で展開される静岡の食材を使った限定メニュー
静岡県が観光プロモーション事業として毎年実施している「日本橋しずおか食堂」。
5市2町から、その地で生産された食材の中から、日本橋の各参加店舗が使用する食材を選び、期間限定のオリジナルメニューを展開するという企画です。
なぜ日本橋? と思ったのですが、それは東海道の江戸の起点だから。古くから江戸と家康公が晩年を過ごしていた静岡を結び、多くの人やものが行き来した東海道。その名残でと日本橋で、日本橋の名店と静岡の食材のコラボメニューを展開するという発想だそう。
普段は静岡の食材といったらあまりにもお茶の印象が強すぎて他にどんな食材が有名なのかピンと来ていなかったのですが、地産の美味しいお野菜がたくさん。今回も静岡わさび、折戸なす、トマト、自然薯などたくさんの静岡の食材が使われていました。
老舗の名店「利久庵」で頂く丁寧に作られた和食
日本橋しずおか食堂には日本橋の15の名店が参加していますが、その中でも私は「利久庵」さんにお伺いしました。
創業71年…! 老舗の名店です。4つの風呂があり、地下1階と1階がお蕎麦屋さん。日本橋界隈で働く会社員の方々が、帰りにサクッとお蕎麦を食べていくカジュアルな雰囲気でした。
そして2階、3階が和食。こちらはお蕎麦よりはもう少しかしこまった雰囲気で、昔ながらの和室の個室もありとっても居心地の良い雰囲気です。
今回はこちらのお店で日本橋しずおか食堂の限定メニューとして提供されている3つのお料理を頂きました。
トマト擂り流し白味噌仕立
白味噌、和辛子という和食ではよく使う組み合わせ。トマトとハナビラタケが島田市からの今回の静岡食材です。桜えびが寄せ卵の中に入っています。お吸い物兼煮物としての1品。白味噌のとっても優しい味にトマトがじゅわっと染みていて美味でした。
折戸茄子田楽
帆立と海老、マッシュルーム、しめじ、銀杏が入っています。「たまごのもと=味のしないマヨネーズ」と料理人さんに教えて頂いた「たまみそ」というこれも和食ならではの卵液に絡めて、全ての具材が茄子に詰まってオーブンで焼き上げられています。
なんと、茄子は塩で一時間色出しをして、油でさっと揚げるという処理がされているとのこと。美しい見た目のためにも、上品で奥深い味わいのためにも、ものすごく手間がかけられているんだなと思いました。
自然薯のチヂミ
和食屋さんなのにチヂミ! というのが面白いなと思いました。お芋とわさびのスライスを、ニラと一緒に香ばしく焼いたお料理です。鮮やかなオレンジ色のものは、天盛りによく使う「糸うに」。チヂミですがタレは和食らしく、わさびと刺身醤油で頂きます。
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それぞれのお料理、どのように調理されているか今回のメニューを考案した料理人さんに直接お伺いすることができたのがとても貴重な経験でした。
聞けば聞くほど、和食って下処理も仕込みも準備もとっても手が込んでいて大変…! 食材が綺麗に映えるように、そして美味しさを最大限引き出せるように。繊細に作られたお料理を味わって頂くって本当に贅沢だなと思いました。
今回みたいに食材が先に指定されている場合、どうやってこんなメニューを思いつくのですか? と質問してみたのですが「食材を見ると3つ、4つ、すぐ浮かぶ。パッと見て、これにしよう! って思う」と教えてくださりました。
今回お話をお伺いしたのは、18歳の頃からこの道54年の料理人さん。美味しい食材も、それをもっと美味しく味わってもらうためにと丁寧に作られた食事も、ゆっくり味わう贅沢な時間を、忙しい毎日の中でもっと作っていきたいなと思いました。
オッジェンヌ 大枝千鶴
2015年からOggi読者モデル「オッジェンヌ」として活動。営業職という仕事柄、通勤服は好感度が最重要事項。最先端のIT企業で働きながらも歌舞伎と着物が大好きという古風な趣味をもつ。一級きもの講師。Instagramアカウントはこちら:@chizuru_oeda