穴があったら入りたいとは?意味を解説
「穴があったら入りたい」とは、恥ずかしいことを意味する表現です。普通程度に恥ずかしいのではなく、体を隠して消えてしまいたいほどに恥ずかしいときに使います。
本人が大失敗をしたり、失言をしたりしたことで、自分を恥じているときに使います。そのため、相手から褒められて謙遜して「褒められるなんて、恥ずかしいです……」と返すときには、「穴があったら入りたい」という表現は使わないことが一般的です。
穴があったら入りたいの由来
「穴があったら入りたい」という言葉は、中国の故事にあります。魯の地方領主の季孫(きそん)は、斉が攻撃してくるというニュースを聞き、町長に「敵に食料を与えないためにも、町中の麦を刈り取ってしまうように」と命令しました。
しかし、町長は季孫の言葉に従わず、斉の兵士たちに麦は奪われてしまいます。季孫は町長が命令に従わなかったことを知り、なぜそのようなことをしたのか問いただしました。町長は「麦を刈り取るのをさぼっていた人にまで麦を刈り取らせれば、また敵が攻めてきて麦を自分の代わりに刈り取ってくれればよいなと思うようになってしまう。麦はまた育つが、曲がった人の心は直らない」と淡々と答えました。
この返答を聞き、季孫は「穴があったら入りたい。町長の立派な考えに比べ、自分の考えはなんと浅はかだったのだろう」と嘆きます。この故事から、自分を恥ずかしく思ったときに「穴があったら入りたい」という表現を使うようになりました。
穴があったら入りたいを使う状況
「穴があったら入りたい」の表現は、謙遜などでは使わないことが一般的です。自分に非があるときや、明らかに自分の考えが足りないときに使うことが多いようです。
季孫も町長に命令を出したときは、「自分は先のことまで考える賢い人間だ」と思っていたのかもしれません。しかし、町長のほうが考えが深いことを知り、自分の浅はかさを身を隠したいほどに恥じたのです。
穴があったら入りたいの例文をご紹介
「穴があったら入りたい」は、自分の失敗や失言などを極めて恥ずかしく思うときに使う表現です。いくつか例文をご紹介します。
・調子に乗って得意先としゃべっていたら、社外秘の情報まで話してしまった。穴があったら入りたいよ……。
・昨日の親睦会で、隣の部署の先輩社員の名前を間違えたまましゃべっていた。今日も会う予定だけど、恥ずかしくて申し訳なくて、穴があったら入りたい。
穴があったら入りたいと類似する表現
「穴があったら入りたい」と同じく、恥ずかしいときや申し訳なく感じるときに使う表現としては、次のものが挙げられます。
・慙愧に堪えない(ざんきにたえない)
・身の置き所がない
・忸怩たる思い(じくじたるおもい)
・合わせる顔がない
それぞれの使い方やニュアンスを、例文をとおして説明します。
慙愧に堪えない(ざんきにたえない)
「慙愧に堪えない(ざんきにたえない)」とは、自分の行動を後悔し、深く恥ずかしく感じるという意味の言葉です。なお、慙愧とは恥ずかしく思うことを意味します。
「穴があったら入りたい」と意味はほぼ同じですが、日常会話でも使うことの多い「穴があったら入りたい」とは異なり、「慙愧に堪えない」は固い表現です。話し言葉で使われることは少ないでしょう。
・本当に申し訳ございません。ご迷惑をおかけしたこと、慙愧に堪えません。
・慙愧に堪えない気持ちのまま、帰途についた。
身の置き所がない
「身の置き所がない」とは、その場に居づらく感じることを表現する言葉です。恥ずかしさにより、その場に居づらく感じるときにも使いますが、恥ずかしさ以外によって居づらいときにも使います。
「穴があったら入りたい」は恥ずかしさに限定される表現のため、身の置き所がないほうがより広い意味で使える言葉といえるでしょう。たとえば次のように使います。
・同窓会に行ったけれど、友だちが一人も来ていなかったため、身の置き所がなかった。
・シャツにトマトソースがかかってしまい、身の置き所がないほど恥ずかしかった。
忸怩たる思い
「忸怩たる思い(じくじたるおもい)」とは、深く恥じ入って反省している様子を指す言葉です。恥ずかしく思っている点では「穴があったら入りたい」と同じですが、「穴があったら入りたい」には反省しているニュアンスはありません。
また、「穴があったら入りたい」は会話で使うことも多いですが、「忸怩たる思い」は日常の会話で使うことは少ないと考えられます。どちらかといえば、小説などの書き言葉として使うことが多いでしょう。
・先輩の顔に泥を塗ったことに対し、忸怩たる思いを抱えている。
・忸怩たる思いは隣にいる彼女にも伝わったようで、「大丈夫?」と慰めてくれた。
合わせる顔がない
「合わせる顔がない」とは、恥ずかしくて相手と対面できない様子を指す言葉です。なお、この場合の「顔」とは、人の顔ではなく社会における対面のことを指します。恥ずかしいことをしたために、社会的な面子がつぶれたと感じるときなどにも使います。
・彼にひどいことを言ってしまったため、合わせる顔がありません。
・あんなによくしてもらったのに、結局は裏切ることになってしまい、合わせる顔がない。
意味を理解して適切な状況で使おう
「穴があったら入りたい」とは、中国の故事を由来とする言葉で、身を隠したくなるほどの恥ずかしい気持ちを表現します。そのため、相手に褒められたときや、笑って済ませるほどの恥ずかしさのときには、適切な表現ではありません。
非常な程度に恥ずかしいときのみ、「穴があったら入りたい」の表現を使うようにしましょう。また、状況によっては、「合わせる顔がない」や「身の置き所がない」などの表現で置き換えることもできます。適切な言葉を選び、気持ちを表現してください。
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