老化だけではなくどんどん減る卵子
卵子は古くなるだけではなく、毎日減っています。卵子の数は、お母さんのお腹にいる妊娠5~6ヶ月のときに500~700万個とピークを迎えて、そこからは減る一方です。
出産時には200万個、初潮のころには30万個ほどになり、一般に妊娠率が落ちるといわれている35歳のころには、生まれたころにあった200万個のうちの1~2%ほどしか残っていません。
卵子は卵巣に保存されています。女性は思春期を迎えると、生殖のためのプログラムが起動され、性刺激ホルモンが分泌されて、その刺激を受けて卵胞は成長、成熟していきます。
この期間は約6ヶ月。なかでも一番成熟した大きな卵胞「成熟卵胞」の中の卵子が1個だけ、卵胞を突き破って卵巣の外に飛び出します。これが排卵です。このようなサイクルで、月に1個、卵子を排卵していくのです。排卵する成熟卵子の数は、女性の生涯で400~500個といわれています。
成熟卵胞にならなかった卵胞はしぼんでいきます。それが減ってしまう卵子の正体で、1日に換算すると30~40個です。もしかすると、卵巣にたまっている卵子が毎月1個ずつ排卵されていくイメージがあったかもしれません。
ヒト以外の哺乳類は何匹も子どもを産むこともありますが、ヒトの場合、ひとりの赤ちゃんにするために、排卵のタイミングで一番成熟した大きな卵胞以外は、使える卵子もしぼませて1個排卵(単一卵胞)にしています。
卵子の減少は、砂時計のようなものです。どんなことがあっても、時間とともにサラサラと落ちていく砂のように、卵子も卵巣から減っていきます。
残っている砂が、残りの卵子のイメージです。残っている卵子も大半のものは消えてしまい、血管の近くで酸素や栄養環境の良い場所にあるなど、条件に恵まれた卵子だけが生き残ると推測されます。
自分の残りの卵子がどれくらいあるのか知るには?
自分の残りの卵子がどれくらいあるのか知る手がかりとなるのが、AMH(アンチ・ミューラリアン・ホルモン)検査です。
血液検査で、卵巣の中にどれくらい卵子が残っているかを反映するAMH値がわかります。卵子の残り数は個人差があるので、少なくとも30歳になったら一度受けてみることをおすすめしています。
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浅田レディースクリニック 理事長 浅田義正(あさだ・よしまさ)
日本でも有数の体外受精成功率を誇り、愛知・東京でクリニック展開する「医療法人浅田レディースクリニック」の理事長を務める。海外での体外受精研究実績を持ち、顕微授精の第一人者。妊娠という“結果”を重視した「浅田式」不妊治療を行っている。