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2022.11.08

「50代で役員になったときは、見える景色が変わったことを覚えています」コンサートホール総支配人・会社役員 折井雅子さんインタビュー

選択の多い30歳からの人生に、決断は欠かせないもの。各界の第一線で活躍する先人たちは、どんなターニングポイントを迎えてきたのか。今回は、サントリーホールディングスの生え抜き社員として初の女性役員に就任し、現在は『サントリーホール』の総支配人を務めながら複数社の社外取締役も兼務する折井雅子さんにお話をうかがいました。〈第一線の先人たちもアラサーで「選んで」きた The Turning Point~私が「決断」したとき~〉

コンサートホール総支配人・会社役員 折井雅子さん インタビュー

責任を持つほど、ためらうもの。“なるべく”逃げずに、新しもの好きでいる

コンサートホール総支配人・会社役員 折井雅子さん

サントリーに新卒で入社し、マーケティング室でお茶くみやコピー取りという庶務の仕事をしていた20代。新製品の開発にも取り組めるようになり、だんだんとヒット商品を生むことができるようになってきたのが30歳前後です。

ただ、仕事の成果は評価されても昇進昇格となると別で、「男性が全員上がるまで、女性は上がれないんだよ」ということをはっきり言われた時代。「ガラスの天井」ならぬ、「鉄格子の天井」がはっきり見える感じでしたね。

叩いてもビクともしないので、それなら会社に評価されるためではなく、自分が納得いく仕事をしよう、と気持ちを切り替えることにしました。

失敗作も内包して生まれるのが成功作。中途半端ではいけないと感じた30代

マーケティングという仕事の醍醐味は、チームでコンセプトを具現化するプロセス。

メディアで知ったトレンドでも友達の話でも、あらゆる情報を頭の中に入れ、もうぐちゃぐちゃで脳みそが溶けてしまいそうだなというくらい考えていると、その混沌の中から何かひと筋、スルスル~と出てくる瞬間があるんですね。

30代半ばで手がけた『とっておき果実のお酒』という商品もそのひとつ。女性にも支持されるフルーティな缶入りのお酒をつくろうと企画しました。

商品開発チームのメンバーは、疑問があれば忖度なしに「甘いんじゃない?」と返ってくる関係性。中途半端な自分ではいけないと思わされましたね。

お互いに意見を戦わせ、本気で話し合う中でイメージが共有できて、頭の中で描いていたものが形あるものになっていく。

よく「製品見本が間に合わない!」などと夢でうなされては明け方に飛び起きていたのですが(笑)、やがて商品が店頭に並んで、お客様にお買い上げいただく様子を見ることができると、それまでの大変さも吹き飛びました。

後発でありながら、市場のトップシェアを占める商品に成長したことも励みに。変化の激しい世界でたくさん失敗もしましたが、失敗作も内包して生まれるのが成功作だと思っています。

初めての管理職で心がけた、リーダーシップ4つの基本

コンサートホール総支配人・会社役員 折井雅子さん

初めて管理職になったのは39歳、清涼飲料部門のマネージャーでした。

リーダー層が集まる会議に出ると、まだひとりだけポツンと女性がいるという状況で。たとえるなら、隣の平屋から見上げていたピラミッドに、中の階層も知らずに横入りしたような感覚。

とにかく、私が女性であることによって部下が不利になることがあってはいけない。気負って特別なことをするより、リーダーシップの基本として「決断する」「全体を俯瞰する」「“なるべく”逃げない」「新しもの好きでいる」の4つを心がけていました。

3つ目は、すべて完璧を目指すと折れてしまうので、自分にプチ挫折を許してあげるんです。その代わりここぞというときは、粘ろうと。4つ目は、責任を持つほど前例がないときにためらうようになりがちなので、あえて意識しようという思いでしたね。

業務が変わり、視点の置き方が180度変わった40代

20年近く携わったマーケティングを離れ、お客様コミュニケーション部の新設組織の責任者になったのが41歳のとき。それまで、消費者調査やインタビューからお客様のことを理解しているつもりでしたが、それはあくまで企業目線のシステムの一環。

実際にお客様からのお問い合わせやご指摘にも接すると、「社内の常識は非常識」なんだと目覚めさせられ、自分の視点の置き方が180度変わりましたね。これを機にお客様の声を広く社員に共有し、経営に活かす「VOC(ボイス・オブ・カスタマー)」活動に情熱を注ぐようになりました。

その後、人事部門キャリア開発、CSR担当の執行役員などを経て、現在は東京・赤坂にある『サントリーホール』の総支配人として仕事をしています。

悲しみも幸せも、心を思いっきりストレッチできる場所を守りたい

サントリーホールの内部

もともと演劇が好きで、観客としては何度も訪れていたものの、クラシック音楽にすごく詳しいというわけでもなく。未知との遭遇だと思っていたけれど、いざ中に入ってみると、スタッフが皆、ホールに対して誇りと愛情を持って働いている。

「心が潤ったり、幸せを感じたり、そういう体験をお客様にお届けしたい」という根幹は変わらないんですよね。このときめく場所が職場になるとは、すごくハッピーなことだなと。

コロナ禍での「奇跡の11日間」。大切な場所を守るという決意

コロナ禍では休館を余儀なくされ、ホールから音も人も消えてしまう不条理も味わいました。

世界中で音楽公演が中止になる中、2020年秋にはウィーン・フィルを招聘し、4都市8公演、11日間にわたるツアーを敢行。のべ15,000人のお客様を動員し、ひとりの感染者も出さずに「奇跡の11日間」を終えることができました。

舞台裏では、ギリギリまでビザが下りるか不透明でしたし、出発直前にはウィーンでテロが発生。なんとか無事に来日してからも万一感染が広がるようなことがあってはいけないので、厳重な行動制限があり、ホール中が張り詰めるような緊張感でした。

これだけ困難な状況でもすばらしい演奏をやり遂げてくださったウィーン・フィルの方々のプロフェッショナルな姿は、大きな刺激に。

ホールでは悲しくなってもいいし、幸せになってもいい。緊張や不安があるときこそ、人々が心を思いっきりストレッチできる場所を守りたいと、強く決意するきっかけとなりました。

見える景色が変わった50代。スケールをもっと広げたい

ひとつの会社に長く勤めていると、思いもよらない異動を経験することもあると思います。私自身、ずっとお客様と社会とのつながりを考え続けてきたのに、「なんで急に人事部?」と思った瞬間はあります。

でも、以前の仕事を続けたいと引きずるより、新しいフィールドはどんな世界なんだろうという興味が勝って、実際に飛び込んでみると思い悩んでいるゆとりがなくなったという感覚でしょうか。

サントリーには「あらゆる変化が自己成長のチャンスになる」というキャリア自律の指針があり、それを支えにしてきた約40年でした。

50代で役員になったときは、見える景色が変わったことを覚えています。社外で意見を聞かれる際はグループ全体を主語にした答えを求められますし、それに対応できるように自分自身のスケールを少しでも広げたいと思うように。

ポジションの変化は、自己成長の大きな機会

経営に関わって感じるのは、「女性活躍」は女性のためだけでは全然なく、むしろその組織が健全に成長していくためには絶対必要だということ。

もちろん、全員が出世を目指さなくてもいいと思うのですが、ポジションの変化は、自己成長の大きな機会でもあります。チャンスがあるなら前向きに臨んでほしいですね。

キャリアデベロップメントというと、今ないものを努力して取り入れるイメージがあるかもしれませんが、“develop”の語源は「包みを開く」だそうです。

覆われている様々な可能性を開くこと。みなさんの中にもともとある優れた才能を、ぜひ見つけてください。

年末年始に楽しもう! サントリーホールに響くオーケストラの生演奏

昨年のクリスマス公演より ©サントリーホール

12/25「サントリーホールのクリスマス」
トム・クルーズの吹替などで活躍する声優・森川智之さんのナビゲートで、クリスマスの定番『くるみ割り人形』ほか、親しみのある名曲をたっぷりとお届け。12/31~1/3は、ウィーンからオーケストラが来日し、歌やバレエ付きの華やかな公演を開催。詳細は公式HPから!

2022年Oggi12月号「The Turning Point〜私が『決断』したとき」より
撮影/石田祥平 構成/佐藤久美子
再構成/Oggi.jp編集部

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コンサートホール総支配人・会社役員 折井雅子さん

折井雅子(おりい・まさこ)

1960年生まれ。サントリー芸術財団 サントリーホール総支配人。東京大学文学部卒業後、1983年にサントリー入社。酒類製品の開発を多数手がけ、2000年にはマーケターとして初めての女性課長に。’02年お客様コミュニケーション部長などを経て、’12年サントリーホールディングス(HD)執行役員。’16年サントリーウエルネス専務取締役に就任。’19年より現職。’20年より大林組の、’21年より東宝の社外取締役に就任。


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