体外受精の移植周期。移植する受精卵の選び方【30代からの不妊治療】
妊活を始めて3年。現在34歳の私の体験から、妊娠を考えているカップルにとって少しでも役に立つような情報をレポート形式でお届けします。
前回は、体外受精の移植周期D11の診察の話をお届けしました。今回は、体外受精の移植周期D11の診察で、移植する胚盤胞を選んだときの話。
卵巣で排卵が起きると、卵巣内に残った卵胞が黄体となり、黄体から黄体ホルモン(プロゲステロン)と卵胞ホルモン(エストロゲン)が分泌されます。これらのホルモンが胚の着床と妊娠維持に重要なカギとなるそうで、排卵直前と思われるD11に診察を受けに行った私は、自然周期の移植ではあるけれど、D12から黄体ホルモンを補充するためにウトロゲスタンという膣剤を使うことに。
体外受精は、卵巣刺激も採卵も凍結相談も移植も… やってみないとわからないことの連続。今回も思いがけないタイミングで登場したホルモン剤。人工授精までは薬に対して強い抵抗を持っていたけれど、事前に受けた不妊カウンセリング以降、私も夫も、治療方針はこの病院のリプロの先生を信じてお任せしようという気持ち。
なので自然周期なのにホルモン剤を普通より早いタイミングで使うことについては、すんなりと受け入れることができたんですよね。むしろ、移植日がハッキリ決まって、ホッとした気持ちのほうが大きかったです。それに初めてこの病院へ診察に来たときから3年、私の体質を考慮してくれていたT先生が勧める方法なら! と、期待も高まりました。後悔なく治療を進めるためには、信頼できる病院・医師との出会いが本当に大事だなと思います。
移植する胚盤胞はどれにする? 決めることが次々と…
診察室では、T先生から最初に移植する受精卵をどれにするかという相談がありました。
医師「クロサワさんは胚盤胞を7個凍結中ですね。来週の移植はどの胚を使いましょうか?」
私「あ、卵をどれにするかも自由に選べるんですか?」
医師「はい、そうです」
私たちの凍結胚記録の紙を見ながら説明を受けました。胚盤胞のグレードは、4BB、4AC、4BC、3AC、4BC、4AC、4BC。一番グレードがいい胚盤胞はBB。このグレードはひとつしかありません。
私「う~ん。選べないな。どうしよう。T先生だったらどれを使いますか?」
医師「私たち医師が決めるとしたら、一番いいグレードから移植します」
私「へぇ、それはみんなそういうものなんですか?」
医師「そうですね。胚移植では、あくまでも我々が選ぶとしたらという話ですが、着床率を高めるために、培養した胚の中から最もいいグレードの卵を選ぶことが多いです。でも患者さんのなかには最初は二番手から使って、一番いいのは温存して2回目に使いたいという人もいますよ」
その気持ちすごくわかる。ひとつひとつのステップがわからないことだらけなので、いきなり虎の子のBBを使って失敗したらどうしようという不安が大きかったです。でもACなら3つある。ならば… と迷っている私の横で、夫はあっさり腹が決まったようです。
夫「先生が一番いいグレードからとおっしゃるなら、BBを使おうよ」
私「え!? マジ? ACからいくほうがいいかなとか思っちゃってたんだけど…」
ACやBCのグレードがダメというわけではないそう。AAやABがないので不安にも思いましたが、夫は早く授かりたいという気持ちが膨らんでいたし、移植に専念するといっても一度で成功するならそれに越したことはないと考えていたようです。
夫「念のためもう一度確認なんですけれど、BBが一番質がいいんですよね」
医師「はい。この中からお任せと言われたら、私はBBを使いますね」
夫「BBにしよう」
成功率が少しでも高い胚を移植しようと、私も決心ができました。すんなり結論を出せたのは、やはりT先生への信頼度が高かったことがとても大きいです。
医師「いいですよ、じゃあBBを移植しましょう」
このとき、凍結相談のときに一人で診察に来てしまって、夫に電話をしながらバタバタ決めた日のことを思い出していました。あの時は大失敗しちゃったけれど、こうして一緒に説明を聞いて、悩んだり話し合ったりするって、やっぱりとても大切ですよね。
しかしコロナ禍では、妻しか診察室に入ることができないというケースもあります。仕方ないこととはいえ、二人の大事な受精卵なのに、こんな重要なことをひとりで決めるのは荷が重すぎる。女性側に負担が偏りがちな不妊治療。こういった重要な説明を聞いたり判断が必要な場面は、必ず夫婦でということがもっと当たり前になるといいなと思いました。
移植当日まであと6日。万全の体調で卵を迎えるためにできること
黄体ホルモンを補充することが決まって、自動的に排卵日と移植日が決まって、移植する胚盤胞も決まって…。この日の診察はどんどんいろんなことが決定していきました。あぁ、いよいよだなぁという期待とともに、できる限り万全の体で卵ちゃんを迎えたいという気持ちが強まります。
家に帰ったらどうせアレコレ気になって検索魔になってしまいそう。わからないことは、今全部聞いておこう。そう思ってT先生に細かく質問してみました。
◆移植周期に注意すべき食べ物は…
私「来週の移植に向けて、今から食べたほうがいいものとか、逆に食べちゃいけないものとかってありますか?」
医師「そうねぇ、これを食べるといいっていうエビデンスがしっかりしている情報というのはあまりないんだけれど、しいて言うなら、コーヒーなどのカフェインはとりすぎないようにしたほうがいいかな」
私「え!? つい、さっきランチの食後にカフェラテを飲んでしまいました…」
医師「一杯飲んだからって、すぐにどうかなるものじゃないから大丈夫なんだけど、もう今移植周期に入っていますから、コーヒーや紅茶はカフェインレスのものに切り替えましょう」
私「はい、わかりました」
夫「帰りにスーパーで買って帰ろう」
私「そうだね、デカフェのコーヒー買う!」
医師「うん、それがいいですね。今、カフェインレスの飲み物もたくさん種類が出ていますから」
お酒や薬はかなり気を付けていたけれど、私はコーヒーが大好きだったこともあって、食後やおやつの時間には欠かさず飲んでいました。妊活をしてからここは全然気にしていなかったけれど、もう少し早くからカフェインレスにしておくべきだった。反省ポイントでもあります。
◆移植の前後の生活は? 仕事は普通にしてて大丈夫?
採卵のときに使ったホルモン剤の副作用がかなりしんどかったこともあり、私の場合は前後で一週間以上仕事を休むハメになりました。移植周期はどうなるんだろうという不安がよぎります。そんな気持ちもT先生に聞いてみました。
私「明日から使うウトロゲスタンって副作用はありますか? 私、ゴナールが結構つらかったので心配になっちゃったのですが、移植周期に仕事を休んでおく必要はありますか?」
医師「薬なので副作用がないとは言えないけれど、ゴナールほど強烈な症状は出ないと思いますよ。移植前後も、多くの人が普通にお仕事をされています。ただ、そうですねぇ、自転車は乗らないほうがいいかな。振動があまりよくないので、移植後はなるべく控えてもらいたいです」
私「あ、わかりました。自転車は乗らないので大丈夫だと思うのですが、自動車や電車、バスは大丈夫なんでしょうか?」
医師「うん、基本的にはいつも通りに生活をしていただいて平気ですよ。極端に激しい運動などもしないですよね?」
私「はい、仕事はデスクワークなので」
医師「じゃあぜんぜん問題ありません」
というわけで、移植周期は生理が始まった日こそ、すぐにD3の通院に向けてスケジュールをあけなきゃ! とややバタバタしましたが、それ以降はいつも通りの生活をし、排卵間近のD11に通院(今回の診察)、D12から黄体ホルモンの膣剤を1日2回し続け、D17に移植というスケジュールになりました。
通院頻度が比較的増えるといわれていた自然周期での移植でしたが、もともと私の生理周期が安定していたことや排卵日をホルモン剤でコントロールすることになったこともあり、思っていたよりもだいぶスムーズな通院になりました。
◆移植までにもしも体調を崩してしまったら…
最後にT先生から、移植までにもしものことがあった場合の話もされました。
医師「万が一なのですが、移植日までに風邪をひいたりなど、何か体調に問題が起きた時にはすぐに電話をください。融解するのですが、間に合えば止めることもできるので。卵がダメになってしまったらもったいないですから」
私「わかりました。風邪をひかないようにしないと」
医師「今の時期は、皆さんそんなに人ごみに出かけないでしょうし、ずっとマスクもしていますからね。大丈夫だとは思いますけれど、来週の移植は万全の体調でのぞめるようにしておいてください」
私「はい!」
拙宅にも「アベノマスク」が届き、世間のマスク不足が解消の流れへ。東京オリンピックは延期になったけれど、コロナの特性も徐々にわかってきて、世の中が冷静さを取り戻しつつあった時期でした。夫も私も幸いなことに完全リモート勤務。会食もなければ出かける予定もないので、しっかり寝てしっかり食べて、穏やかな気持ちで移植日を迎えよう! と強く思いました。
にもかかわらず、翌日、移植周期の最大ミッションともいえる黄体ホルモンの膣剤がうまく入らないというトラブルが発生。いきなり失敗をしてしまったお話はまた次回…。
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TOP画像/(c)Shutterstock.com
※この記事は2020年の内容です。最新情報は厚生労働省HPをご確認ください。
クロサワキコ
34歳・主婦ライター。妊活歴3年目。男性不妊の治療や人工授精に体外受精、ステップアップを重ねていくなかで感じた不妊治療のリアルな本音を発信しています。