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熟年離婚とは?
「熟年離婚」という言葉が随分知られるようになりました。熟年離婚には明確な定義があるわけではなく、一般的には20年以上の結婚生活ののちに離婚する夫婦を指し、決して熟年者やシニア層の離婚に限ったわけではありません。
長年連れ添った夫婦の「熟年離婚」の原因は?
まずは「熟年離婚」の原因から見ていきましょう。
◆会話・スキンシップがない
長年一緒に居て、空気のように当たり前の存在にはなったものの、スキンシップはおろか2人での会話もなくなる夫婦もいます。子どもがいるうちは何かと夫婦で話す機会もありますが、子どもに手がかからなくなると次第に会話が減って、気がつけば2人向き合って会話することがなくなっていく…。そうしたことで離婚を考える方もいる模様。
◆家にいることがストレス
これまで夫は仕事で家にいないことが多かったのに、仕事がリモートワーク中心になったり、定年退職すると、毎日家にいることになります。今まで週末くらいしか一日中家にいることがなかった夫と毎日顔を合わせることに妻が慣れておらず、次第にストレスとなる人も多いようです。
◆性格の不一致
結婚当初から性格が合わないと感じながら長く我慢してきた夫婦もいれば、年齢を重ね性格が頑固になったり、神経質さが目立ってきたりすることで合わなくなってきたと感じることも。
◆子育てが終わった
子どもがいるうちは、お互いに不満があってもなんとか飲み込みながら“子どものため”に夫婦生活を続けることができましたが、子育てが終われば離婚を思いとどまる理由がなくなり、離婚を決意することも多いようです。
◆年金があるので離婚しても暮らしていける
シニア層においては、年金分割の制度により、離婚した場合も夫婦それぞれが年金を受け取ることができるようになりました。これにより離婚後も一定の収入が見込めるため、主に妻の側が離婚を決意することもあるようです。
熟年離婚される夫・妻、それぞれの特徴
次に、熟年離婚される夫・妻、それぞれの特徴を見ていきます。
◆熟年離婚される夫の特徴
先述のように、夫婦の会話がないことは熟年離婚の原因のひとつになります。リモートワークや定年により、以前より長くずっと家にいるのに会話もなく、一緒に居て楽しいと思えないのは離婚する理由としては十分。また、趣味もなく、持て余した時間はただ毎日テレビを見ているだけの夫を見ているのが嫌になったり、逆に趣味に没頭しすぎて夫婦関係を蔑ろにしていることに妻側が不満を溜め込むことも。
◆熟年離婚される妻の特徴
熟年離婚といえば、定年を機に妻が夫に離婚を切り出すケースが安易に想像できますが、実はその逆のパターンも。
長年のセックスレス、小言の域を超えたモラハラに近い言動、小遣いの制限など、積もり積もった不満が一気に噴き出して離婚を決意したり、人生を見つめ直し離婚をして新たな人生を歩みたいと思う夫もいます。
熟年離婚の財産分与は?
熟年離婚で気になることのひとつ、財産分与。持ち家や専業主婦の場合など細かく見ていきます。
◆持ち家の場合
資産のなかでも割合が大きい住宅。持ち家の場合、売却してその費用を折半する方法が最も明確です。また、住宅をどちらかに譲渡し、もう一方が相当の金額を受け取ることで財産を分割するという方法もあります。
◆専業主婦の場合
専業主婦であっても夫婦の財産は夫婦2人のもの。当然妻は財産の2分の1を受け取ることができます。結婚後全く収入を得てこなかった専業主婦であっても、家事や育児によって生活を支えてきたとみなされるので、財産を受け取る権利は十分にあります。
◆退職金は対象となる?
退職金は「給与の後払い」という扱いになるので、退職金も夫婦の共有財産となり財産分与の対象となります。ただし、婚姻期間に当たる部分だけが財産分与の対象となり、まだ支給されていない場合には財産分与の対象とならないケースもあります。
熟年離婚で準備しておくこと
長年付き添ったこともあり、すぐに離婚はできないもの。準備しておくとよいものはどんなものでしょうか。
◆女性の場合
専業主婦であったり、現在仕事についていないなど収入がない場合には、離婚後の経済的な面を考えておく必要があります。年金が入る世代であっても、それだけで十分暮らしていけるかはわかりません。いざというときのためにも、少しでもいいので収入の目処は立てておいた方がいいといえます。
また、離婚によってどのくらいお金が手元に入るのかも確認しておきたいもの。財産はあっても、ローンなど負債がある場合は財産分与が減ってしまう可能性があるので、事前に細かく確認しておくと安心です。
◆男性の場合
男性の場合も同じく、離婚後の経済面を確認しておきましょう。財産分与だけでなく、年金の分割、子どもが成人していなければ養育費、離婚理由によっては慰謝料も発生します。これまで通りの生活を送ることができない可能性もあるので、離婚によって妻に渡す財産がいくらくらいになるのかを把握しておきましょう。
熟年離婚のデメリット
熟年離婚をしたいと思ったら、デメリットも踏まえて考えておきたいところ。どんなことが考えられるでしょう。
◆女性の場合
女性の場合、熟年離婚のデメリットとして経済的な理由が挙げられます。これまで専業主婦だった場合は離婚後に仕事に就こうとしてもなかなか条件の良い仕事が見つからないこともありますし、パートなど限られた収入の枠でしか働いていなかった場合は十分に暮らしていけるだけのフルタイムの仕事に着くことが難しい場合もあります。
子どもがまだ独立していない場合、子どもの年齢にもよりますが、自分の親の助けなどを借りなければ、フルタイムでがっつり働くことも、勤務地の遠い会社で働くことも難しくなるでしょう。
◆男性の場合
これまで我慢してきた妻との生活を解消して自由が手に入るのが熟年離婚のメリットですが、それ以外に男性が熟年離婚するメリットは正直あまりありません。これまで一生懸命働いて築いてきた財産や年金も妻と分割しなければいけません。
子どもがまだ成人していなければ養育費も支払っていかなければいけませんし、長年家族と暮らしてきたのに突然一人暮らしになり、一切の家事を自分でしなければならなくなります。また、離婚の理由によっては慰謝料なども発生しますので、リスクは高いといえます。
熟年離婚を経験した夫婦の末路〜筆者の両親の場合〜
筆者の両親は、結婚後ちょうど20年目で離婚した熟年離婚カップルでした。結婚当時、私の父と母は、父方の実家で祖父と叔母と同居し、やがて2人の子どもが生まれました。離婚時、子どもは共に小学生。住み慣れた家から離れたくない、友達もいて習い事なども続けたいという子どもの意思を尊重し、母が実家に戻る形で離婚が成立。
母は高校を卒業後、アルバイトをして生活していたため今でいうフリ-ターのようなもの。まともな職歴がなく結婚後は専業主婦だったこと、地方の田舎町だったために離婚後の仕事探しは困難を極めました。母の実家が持ち家だったために住むとことには困りませんでしたが、とにかく暮らしていくために、スーパーのレジ、保険レディ、化粧品の訪問販売、郵便局の短期バイト、親戚の商売の手伝いなどたくさんの仕事に就きました。数年後レストランのホール係として働き、やがて正社員雇用の声がかかるまでにさらに数年かかりましたが、正社員雇用後は生活が安定し、定年まで勤め上げ、嘱託として再雇用され定年後も安定した収入を得ています。
一方父の方は、家業が安定していたため大きく困ることはありませんでしたが、早いうちに祖父の介護問題などが生じて再婚のタイミングも失い、離婚以降、独り身で暮らしています。
父母ともに生活に困るほどのことはなく、子どもを引き取らなかた側の母も定期的に私たち子どもにも会えていたのでラッキーな方なのかもしれません。しかし母曰く、仕事が定まらなかった数年間は将来のことが不安で仕方なかったそうです。
熟年離婚の相談窓口は弁護士?
財産分与など複雑な熟年離婚こそ弁護士に相談する方が良いでしょう。そもそも離婚できるかどうかという問題もありますし、離婚の条件によってその後の生活が難しくなる場合もあるので、自己判断で離婚を進めず専門家に任せるのが一番安心です。
離婚は精神的に非常にハードです。若い頃ならまだしも、年齢を重ねて離婚問題を乗り越えるのは難しいものですし、相手が離婚を受け入れてくれるかどうかもわかりません。1人ではなかなか進められないことも多いので、そういった意味でも離婚問題に長けた弁護士に相談すれば、スムーズに進めることができます。
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ライター/コラムニスト コマツマヨ
WEBサイトライティングをメインに、インタビュー、コラムニスト、WEBディレクション、都内広報誌編集、文章セミナー講師など幅広く活動。