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2022.07.19

「役職定年」とは? 制度の内容やメリット・デメリットについて解説

「役職定年」とは、一定年齢を達した管理職が、そのポストから外れる制度のこと。この人事制度には、企業側にとって組織の活性化や人件費削減効果がありますが、一方でいくつか懸念される課題もあります。本記事では「役職定年」について深掘りします。

「役職定年」って聞いたことある?

「役職定年」という制度をご存じですか? 「役職定年」とは、人事制度の一つで、管理職についている従業員が、一定の年齢に達するとその役職を離れる制度です。「役職定年」を迎えた従業員の業務は、事務やバックオフィスの業務に携わるなど様々あります。

「役職定年」は、長寿化や定年年齢引き上げを背景に、企業にとっていくつかのメリットがある一方、社員のモチベーションを下げてしまうなどの課題も。本記事では、「役職定年」の制度内容やメリット・デメリット、その対策について解説します。

「役職定年制」が注目される背景は?

「役職定年」が注目されるようになった理由は、次のような背景が考えられます。

年功序列の風習や終身雇用制度の終焉

昨今、働き方改革に伴い転職や副業・兼業が当たり前の時代となり、個人のキャリア構築の多様化や能力を重視した実力主義の色が濃くなり、これまでの年功序列の風習や制度が終焉を迎えつつあります。こうしたことを背景に、勤続年数が長い管理職の社員多く抱えることに、疑問が持たれるようになり「役職定年」という考えが浸透してきました。

定年年齢の引き上げに伴う人件費

現在の日本において、60歳が定年年齢となっていますが、2025年4月から65歳への引き上げが義務化されます。長寿化の影響でゆくゆくは70歳、75歳と引き上げられる可能性も考えられるでしょう。雇用期間が長くなれば、その分人件費もかかるのが現状。シニア世代に多い役職者の人件費は高いため、コスト削減を目的とした「役職定年」を導入している企業も多くあります。

(c)Shutterstock.com

「役職定年」を導入するメリット

「役職定年」を導入すると、企業側はどのようなメリットがあるのでしょうか。

組織の活性化

修士雇用制度の下では、勤務年数があがるにつれ給与や役職があがる年功序列の構造になっています。しかし日本においては、欧米と違いなかなか降格人事を行う風習がないため、一度役職につくと同じ社員が長い期間そのポストに居座ることも。

役職者の席には限りがあるのでなかなか社内の新陳代謝が図れず、優秀な若手社員が上に上がりたくても上がれないという構造ができ、離職率の増加につながってしまう恐れが。「役職定年」を導入することによって、組織の活性化を図り、若い社員も活躍できる環境が作れます。

シニア世代のキャリアシフトの機会を作れる

人生100年時代、定年年齢の引き上げと、人が働く年数はどんどん伸びていく傾向にあります。一人一人が自身のキャリア人生を考える必要あるでしょう。ですが、業務・予算の進捗や部下の管理といった重責のある管理職が、定年後の人生設計に目を向けるには時間的にも精神的にも難しいのが現状です。

「役職定年」は、管理職がそのポストを離れることで、時間や気持ちの余裕が生まれます。その準備期間を設けることで、第二の人生をどう歩むかを考えられることがメリットの一つです。

「役職定年」のデメリット

「役職定年」を導入する上でのデメリットも、きちんと押さえておきましょう。

管理職のモチベーションが低下する

「役職定年」を導入することで考えられるデメリットの一つが、管理職のモチベーション低下です。長年会社のために貢献しキャリアを積み上げてきたにも関わらず、一定年齢で役職から外されてしまうと、意欲やモチベーションが下がる可能性があります。

若手社員のモチベーションも失われる可能性が…

「役職定年」は、シニア世代だけでなはなく、若手社員や管理職を控えている中堅社員にも影響が出てしまうことも。「役職定年」を迎えた社員のモチベーションが低下すると、一緒に働く若手社員はもちろん、中堅社員も将来自分が同じようなキャリアを進むと思うと、目標を見失ってしまうかもしれません。「役職定年」を迎えた後でも、十分にこれまでの経験やスキルを発揮してもらう場を作ることがとても重要になります。

(c)Shutterstock.com

「役職定年」を迎えた従業員のキャリア支援

「役職定年」後、業務意欲が低下してしまった社員に、再度活躍してもらうためには、企業として次のようなサポートが必要になります。

「役職定年」に向けての事前準備を促す

これまで前線で働いてきた役職者の中には、「役職定年」を迎えるにあたり心構えができずに不安を感じてしまう人もいるでしょう。ですので、企業はミドル世代の社員に向け、早い段階から役職から離れることに向けた事前準備を促すことが大切になります。

役職者を対象にした、定年後の仕事や給与の変化、年金受給額の説明会を開くなどし、社員が将来のキャリアプラン、ライフプランを早期に描けるようなサポートをすることが重要です。

キャリアデザインをサポートする

長く役職者として企業へ勤めてきた人の中には、「役職定年」によって今後の人生の目標を見失ってしまう人も、多くいるかもしれません。そのためキャリアデザインができるようなサポートを整えてあげることが大切です。

例えば「役職定年」者を対象に、今後どうキャリアを再設計していくか、役割や業務を再確認する研修を開くことで、自分が再び活躍できる場を社員自身が考える機会ができます。またそうしたことで、喪失感を防ぎ、意欲的に働き続けることができるでしょう。

若手上司のマネジメント力を高める

「役職定年」を導入すると、管理職の交代に伴い、若手社員が上司となる場合が多くあります。これまで部下であった人が、自分の上司になるという逆転現象はよくある話で、お互いが過度に気を遣ってしまったり、職場の雰囲気に影響が出てしまったりすることも。お互いの意欲を欠かない為にも、企業側は、若手上司のマネジメント力を高めるための研修を開催して、コミュニケーションの違和感を解消するサポートを行うことが重要です。

(c)Shutterstock.com

最後に

「役職定年」は、現代の働き方に合った制度と言えると思いますが、終身雇用、年功序列が当たり前の時代にあった現シニア世代にとっては、将来のキャリアデザインや人間関係の不安など課題があるのも事実です。

そのためには、企業側が「役職定年」を迎える人たちのケアや、若手社員のマネジメント力を育成していくことが不可欠になります。従業員がより幸せに職業人生を送れるように、企業側の努力を続けていく必要があるのです。

TOP画像/(c)Shutterstock.com

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