受胎告知の意味
「受胎告知」は、キリスト教の聖典『新約聖書』に登場するエピソードの1つで、「受胎告知」の他に「聖告(せいこく)」や「お告げ」と呼ばれることもあります。
神の使いである大天使ガブリエルが、マリアにキリストの懐妊を告げる出来事のことを指し、キリスト教文化圏の芸術作品において非常に多く用いられるモチーフでもあります。
受胎告知の由来
前述の通り、受胎告知は『新約聖書』が由来となっています。
受胎告知は、救い主イエス・キリストがこの世に現れることを予告するという、宗教的にとても大事なできごと。そのため、カトリックではイエス・キリストの誕生日である12月25日から9ヶ月遡った3月25日を「受胎告知の日」と定め、祝日としています。
受胎告知の英語表現
受胎告知は、英語で「the Annunciation」といいます。
「the Annunciation to the Blessed Virgin Mary」で、「聖母マリアへの受胎告知」となります。
絵画における受胎告知、ガブリエルとは
受胎告知は、絵画のモチーフとしてよく使われるテーマの一つです。『新約聖書』で書かれている「神の使者である大天使ガブリエルが、マリアにキリストの懐妊を告げる場面」が描かれます。
作者によって作品の切り取り方は様々ですが、基本的には聖母マリア、聖母マリアにキリスト懐妊を告げる大天使ガブリエルが描かれ、その他純潔を表す白い百合や精霊を表す鳩などが描かれるものもあります。
ここでは、特に有名な作品について紹介していきます。
レオナルド・ダ・ヴィンチ『受胎告知』
レオナルド・ダ・ヴィンチは、1452年にイタリアで生まれた、ルネサンス期を代表する芸術家です。
レオナルド・ダ・ヴィンチの『受胎告知』は彼の初期の代表作といわれ、1472〜1475年頃に制作された油彩作品です。フィレンツェにあるウフィツィ美術館が所蔵しています。
遠近法を用いて写実的に描かれており、大天使ガブリエルは、聖母マリアの純潔の象徴である百合の花を手にしています。
エル・グレコ『受胎告知』
エル・グレコ(1541年~1614年)はギリシャ出身の画家です。
エル・グレコは多くの宗教画を描き、受胎告知のテーマでも複数の作品を残しています。そのうちの一点を岡山県倉敷市の大原美術館が所蔵しており、1590〜1603年頃に制作されたとされています。
伝統的な宗教画からは一線を画した構図や色使いが特徴的で、大原美術館に所蔵されている『受胎告知』も、珍しい構図で描かれています。
大天使ガブリエルがマリアにひざまずく構図で優しい色使いで描かれる作品がほとんどであるのに対し、エル・グレコはガブリエルを雲の上に乗って出現させ、不穏な色使いで描いています。調和の取れたルネサンスの古典主義とは対照的な、動きのある作品となっています。
フラ・アンジェリコ『受胎告知』
フラ・アンジェリコは、初期ルネサンス期を代表するイタリア人画家で、修道士画家です。
本名はグイード・ディ・ピエトロ。フラ・アンジェリコは「修道士アンジェリコ」という意味の通称で、受胎告知がテーマの作品を10点近く制作しています。
その中でも最も親しまれている『受胎告知』は、1440年頃に制作された、サン・マルコ美術館内にある壁画作品。サン・マルコ美術館は前身が修道院であり、フラ・アンジェリコも居住していとされる場所です。
柔らかい色使いと、大天使ガブリエルの翼を多色使いで描いていることが特徴的です。
最後に
大天使ガブリエルが神の使いとしてマリアにキリスト懐妊を告げる出来事「受胎告知」。言葉は知っていても、カトリックでは祝日になっていることや、絵画で描かれる『受胎告知』は、どのような意味のある場面なのかを知らない人も多かったのではないでしょうか。
芸術鑑賞の際には、ぜひ聖書の内容や描かれているモチーフを意識してみてくださいね。
TOP画像/(c)Shutterstock.com