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この記事のサマリー
・「いただけますでしょうか」は文法的に正しい敬語表現で、丁寧な依頼に適しています。
・一見、二重敬語のように思われがちですが、誤用ではありません。
・多用すると、くどく感じられるため、語尾や言い回しにバリエーションを持たせるのがコツです。
「いただけますでしょうか」という表現、あなたもビジネスメールで一度は使ったことがあるのではないでしょうか? 丁寧にお願いするつもりで書いたものの、「くどくないかな?」「二重敬語って言われないかな?」と、送信前に迷った経験がある人も多いはず。
この記事では、敬語の構造や意味を正しく理解し、場面に応じて使い分けることができるよう、避けるべき誤用の例や、言い換え表現、さらには英語での表現方法までを解説します。職場のメールや日常のやりとりで、自信を持って使えるようにしましょう。
「いただけますでしょうか」の意味と敬語としての正しさ
ここでは、「いただけますでしょうか」の意味と敬語構造について、整理していきましょう。
「いただけますでしょうか」の意味と文法構造
「いただけますでしょうか」は、「いただくことができるでしょうか?」という意味の丁寧な表現です。
まず、「いただく」について、辞書の記載を確かめましょう。
いただ・く【頂く/▽戴く】
引用(抜粋):『デジタル大辞泉』(小学館)
[動カ五(四)]
1 頭にのせる。かぶる。また、頭上にあるようにする。「王冠を―・く」「雪を―・いた山々」「星を―・いて夜道を行く」
2 敬意を表して高くささげる。頭上におしいただく。「宸翰(しんかん)を―・く」
3 敬って自分の上の者として迎える。あがめ仕える。「有識者を会長に―・く」
4 「もらう」の謙譲語。「激励の言葉を―・く」
5 「食う」「飲む」の謙譲語。
6 苦労もなく、手に入れる。「今度の試合は―・いたも同然だ」
7 《「小言をいただく」の意から》しかられる。小言をくう。また、しそこなう。
8 (補助動詞)
動詞「いただく」は「もらう」「食べる」「飲む」の謙譲語であり、相手への敬意を含みつつ、自分をへりくだる語です。
そこに可能表現の「〜る(できる)」を加えて、「いただける」=「もらうことができる」となります。さらに「でしょうか?」をつけることで、疑問形かつ敬意表現に仕上がっています。
つまり、この表現は「謙譲語+可能形+丁寧な語+疑問」で構成されており、日本語として自然な文法に基づいた依頼表現といえます。

「いただけますでしょうか」は二重敬語では? という疑問
「いただけますでしょうか」が「二重敬語なのでは?」という指摘を受けることがありますが、文法的には誤りではありません。
たしかに、「いただく」自体がすでに謙譲語であり、さらに「〜でしょうか」という丁寧な表現を重ねることで、敬意が過剰に感じられることもあるでしょう。
しかしながら、「いただけますでしょうか」は、現代のビジネス会話において広く定着した表現として受け入れられています。
注意すべきなのは、「相手との関係性」や「堅すぎる印象」です。場によってはくどく感じたり、かえって気取りすぎた印象になることもあるため、文章全体のバランスを見て使い分けることが重要です。
どんな場面で使える? ビジネスにおける実例
「いただけますでしょうか」は、社外・社内を問わず、丁寧に依頼したいときに便利な表現です。ここでは、よくある使用例を確認しておきましょう。
「資料をご確認いただけますでしょうか」
上司や目上の人に確認をお願いする場面では「いただけますでしょうか」が使えます。
他にも、都合を尋ねるとき、回答を求めるときには、次のように使います。
「〇日の午後にお時間をいただけますでしょうか?」
「ご回答を明日までにいただけますでしょうか?」
これらの表現は、相手への敬意を込めながら、自分の依頼を丁寧に伝えたいときに適していますよ。特に、初対面の人や目上の人に対して、礼儀正しい印象を与えたい場面で効果的です。

「いただけますでしょうか」 のNGな使い方に注意!
「いただけますでしょうか」は丁寧な表現として使いますが、場面や相手によっては、かえって不自然に聞こえてしまうことも…。ここでは、ついやってしまいがちなNG例と、その改善方法を具体例とともに見ていきましょう。
「この件については、ご理解いただけると思いますが…」
この表現は、「当然理解してもらえるはず」といった一方的な意図を含んでおり、上から目線に取られることがあります。特に、相手が納得していない状況や、配慮が求められるデリケートな話題では注意が必要です。
押しつけがましさを避けたい場合は、相手に判断の余地を残す、やわらかな表現に言い換えるのがおすすめです。
改善例:「この件についてもご理解いただけますと幸いです」
「いただけますでしょうか」は使いすぎると逆効果?
「いただけますでしょうか」は便利な分、多用すると、くどく感じることがあります。特に、1通のメールや会話の中で何度も繰り返すと、かえって不自然な印象を与えることも。
具体的な例を見ながら、確認しましょう。
NG例:「〇〇をご確認いただけますでしょうか。また、△△もご提出いただけますでしょうか?」
一文の中に同じ表現が続くため、回りくどく感じられますね。
改善例:「また、△△もご提出いただけますと幸いです」
このように、 語尾にバリエーションをつけることで、自然で読みやすい印象になります。
また、社内やカジュアルなやりとりでは、「ご確認をお願いいたします」「ご対応いただけると助かります」など、簡素な言い回しに切り替えると、相手にとっても心地いい文章になります。

「いただけますでしょうか」の言い換え表現|やわらかく依頼したいとき
「いただけますでしょうか」は丁寧な依頼表現ですが、状況によっては少し堅すぎることもあります。もう少しやわらかく伝えたい場面もありますよね。ここでは、そうしたときに使える代表的な言い換え表現を紹介します。
「いただけますと幸いです」
依頼を伝えつつ、控えめな印象にしたいときに使える表現です。「幸いです」という言い回しが、丁寧でありながら、押しつけがましさを感じさせません。感謝の気持ちも込めたい場面で特に有効です。
「ご確認お願いいたします」
こちらは、比較的フラットで実務的な言い方です。「いただけますか」といった依頼表現を使わず、ストレートに行動をお願いする形になります。社内メールや、何度もやり取りしている相手に対しては、過度な敬語を避け、テンポよく伝えるために適していますよ。
ただし、相手との関係性によっては「やや素っ気ない」と受け取られることもあるため、「お手数ですが」「恐れ入りますが」などのクッション言葉を加えると、丁寧さが保たれます。
英語でどう表現する?
海外のビジネスパーソンとのやり取りでも、何かを依頼する機会は多いですよね。英語で相手に何かをお願いする場合、“Could you〜?”と、“Would you〜?”が定番の表現ですが、いまいち違いがわからないという方も多いのはないでしょうか? ここでは、例文と使い分けのポイントを紹介します。
“Could you〜?”
“Could you〜?” は、“Can you〜?”より改まった表現です。“Can”には、「〜できる」という可能の意味があるため、「〜できますか」「〜することは可能ですか」というニュアンスがあります。相手に対応が可能かどうか、尋ねる時に用いることが多い表現です。
例文:“Could you come to my office tomorrow morning?”
(明日の朝、私のオフィスまで来ていただけますか?)
“Would you〜?”
“Would you〜?” は“Will you〜?”をより丁寧にした表現です。“Will”には、「目的のための強い意志や、願望」を指します。そのため、ビジネスシーンでは相手の意志を確認する時に使うことが多いでしょう。
例文:“Would you please tell us some of your strengths?”
(あなたの強みを教えていただけますか?)

「いただけますでしょうか」に関するFAQ
ここでは、「いただけますでしょうか」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「いただけますでしょうか」は上司に使っても失礼ではない?
A. 問題ありません。
ただし、連続して使うとくどく感じられる場合もあるため、文脈に応じて「ご確認をお願いいたします」などの表現と使い分けるとスマートです。
Q2. 毎回使うと不自然になりますか?
A. はい。
文中で何度も同じ表現が続くと、くどく感じられることがあります。語尾にバリエーションをつけたり、他の言い換え表現を取り入れることで、読みやすく自然な印象になります。
Q3. 二重敬語として指摘されたことがあります…。
A. 「いただけますでしょうか」は、文法的に二重敬語にはあたりません。
ただし、敬語表現が複数あるため、過剰に丁寧すぎると受け取られる場合があります。相手との関係性に応じて調整しましょう。
最後に
「いただけますでしょうか」は、丁寧さと控えめな姿勢をあわせ持つ依頼表現です。文法的にも問題はなく、ビジネスシーンやフォーマルなやり取りで安心して使える一方で、使いすぎると冗長に感じたり、場面によっては距離を感じさせてしまうこともあります。
場にふさわしい言葉を選ぶ力は、社会人としての大きな武器になります。迷ったときには、この記事を見返して、あなたらしい丁寧な言葉づかいを整えてみてください。
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