目次Contents
この記事のサマリー
・「デマンド」は英語のdemandに由来し、「需要」や「要求」を意味する言葉です。
・マーケティングでは、購買力に裏づけられた具体的な欲求をデマンドと呼びます。
・「オンデマンド」は、利用者の需要や要求に応じてサービスを提供する仕組みのことです。
「デマンド」という言葉は、マーケティングや医療、電力、ITなど、さまざまな分野で使われています。ただし、どの業界でも同じ意味というわけではなく、「ニーズ」との違いや「オンデマンド」との関係も少し複雑です。この記事では基本となる意味を確認し、分野ごとの使われ方、混同しやすい言葉との違いまで整理していきましょう。
「デマンド」とは?
まずは意味から確認します。
意味
「デマンド」は、「要求」「需要」などを意味する英語の demand に由来する言葉です。現在、「デマンド」は文脈に応じて、商品やサービスに対する「需要」や、相手に何かを求める「要求」を指します。
辞書では次のように説明されていますよ。
デマンド【demand】
需要。要求。請求。
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
「デマンド」を利用したサービスとは?

「デマンド」という言葉は、身近な生活の中でも使われています。例えば、「オンデマンドバス」というサービスがあります。利用者の予約に応じて運行するバスで、アプリケーションや電話などを使って、乗車時間、乗車場所、目的地などを指定します。
予約状況などに応じて運行ルートや配車を決め、複数の利用者が乗り合う形で運行するサービスです。運行方法はサービスによって異なり、AIや専用システムが活用される場合もあります。
従来の路線バスでは、運行時刻や路線が決まっているため、利用者の予定に合わないことがあります。また、目的地まで直接向かう路線がなく、乗り換えが必要になる場合もあるでしょう。
そんな時「自分の都合に合わせてバスが走ってくれたらいいのに…」「乗客にあわせて運行ルートが変更できれば便利だ!」と思ったことはありませんか? 利用者の需要に応じた運行を実現する仕組みの一つが「オンデマンドバス」です。福祉分野や、公共交通の確保が課題となっている地域などで導入されています。
「デマンド」と「ニーズ」の違い
マーケティングの分野では、フィリップ・コトラーによる「ニーズ(needs)・ウォンツ(wants)・デマンド(demands)」の整理が広く知られています。ここでの「デマンド」とは、購買力(支払う能力)に裏づけられた具体的な欲求のことです。
一方、医療・介護・リハビリテーションの分野では、専門職が判断する「必要性」を「ニーズ」、患者・利用者本人が口にする「要望」を「デマンド」と呼び分けます。分野によって使い分けが異なる点に注意が必要です。
「ニーズ」と「デマンド」は両方あるものです。顧客サービスの満足度を考える場合、サービスの提供にあたっては、顧客が必要としていることと、顧客が具体的に求めていることを整理し、安全性や緊急性、実現可能性などを踏まえて優先順位を判断します。
「オンデマンド」とは?

「デマンド」と似た言葉で、「オンデマンド」というものもあります。先ほど例に挙げたバスも「オンデマンドバス」でした。
「オンデマンド」とは、「需要に応じて」「要求があったときに」という意味です。利用者の注文や要求に応じて、商品やサービスを提供する仕組みを指します。ただし、提供時期、提供量、利用条件はサービスによって異なります。主に印刷やオンラインの動画配信、eラーニングサービスなどで採用されています。
例えば、見たかったドラマを見逃してしまった場合、昔なら諦めるしかありませんでしたが、近年では動画配信サービスを使って、好きな時間に見ることができます。これが「オンデマンド」です。
なお、オンデマンド配信には、通信しながら再生する「ストリーミング型」と、あらかじめ端末に保存して再生する「ダウンロード型」があります。どちらも「利用者が求めたときに提供される」という点は同じで、いずれも「オンデマンド」に含まれます。
各業界で使用される「デマンド」とは?
「デマンド」という視点は今、さまざまな業界で採用されています。医療の現場、電力業界、そしてIT業界での「デマンド」を見てみましょう。

医療業界
医療における「デマンド」は、文脈に応じて、患者が医療機関や医療サービスに対して示す要求や需要を指します。患者の症状や生活上の困りごと、受けたい医療などが、具体的な要望として表れる場合があります。
「痛みが和らぐといい」とか、「病院に来るのがたいへんだから、家で診てもらえると助かる」といったものが「デマンド」だといえるでしょう。
医療の目的には、症状の改善だけでなく、疾病の予防、診断、治療、機能の回復・維持、苦痛の緩和、生活の質の向上などが含まれます。その目的をおろそかにして「デマンド」を満たそうとする危険性もありますので、医療現場においては「ニーズ」と「デマンド」の区別、そして優先順位の付け方には、他の業界よりも特に注意を払う必要がありそうです。
例えば、リハビリテーションについて考えてみましょう。リハビリテーションでは、患者が「歩けるようになりたい」と希望することも、生活上の目標として重要なニーズになり得ます。また、「荷物を持って歩きたい」という具体的な希望は、リハビリテーションの目標や要望として整理できます。これらを「ニーズ」と「デマンド」に分ける方法は、使用する理論や現場によって異なります。
患者の希望と医学的・リハビリテーション上の必要性を適切に整理しないまま計画を立てると、専門的な評価や安全性が十分に反映されない可能性があります。患者の希望を尊重しつつ、専門的な判断とすり合わせて目標を設定することが重要です。「ニーズ」と「デマンド」の精査が必要ですね。
電力業界
電力業界では、契約電力を決める時に「デマンド値」という数値を使います。「デマンド値」を初めて聞いた方もいらっしゃるのではないでしょうか? 電力業界でいう「デマンド値」は、一般に、30分間の電力使用量を30分で割って算出した平均電力を指します。単位は通常、キロワットです。
一般的な高圧受電の電力計測では、30分ごとの使用電力量を基にデマンド値が算出されます。そのため、1日を30分単位で区切ると、48個の時間帯があります。ただし、計量方法や契約、電力会社によって扱いが異なる場合があります。
高圧・特別高圧の契約などでは、請求書や検針票に「最大需要電力」などが記載されることがあります。これは、対象期間における30分ごとのデマンド値のうち、最も大きい値を指します。ただし、表示項目や料金の算定方法は、契約内容や電力会社によって異なります。
契約電力が500kW未満(高圧小口)の場合は「実量制」が採用されており、当月を含む過去1年間で最も大きかったデマンド値が、その月の契約電力となります。つまり、一度でも高いデマンド値を記録すると、その後1年間は高い基本料金が続くことになります。逆に、その値を更新しないまま1年が過ぎれば契約電力が下がり、基本料金の引き下げにつながります。
一方、契約電力が500kW以上の場合は電力会社との協議によって契約電力が決められ、実際の使用量が契約電力を超えると、割増しの契約超過金(違約金)が請求されます。
こうしたピーク電力の上昇を機器の制御などで抑えるしくみを「デマンドコントロール(デマンド制御)」といい、工場やビルなど高圧で受電している事業者の電気料金削減に有効な手法です。
IT業界
インターネットは「デマンド」に対応しやすいメディアです。ITシステムを構築する場合に、必要な機能を随時利用できる環境が、「オンデマンド・コンピューティング」と呼ばれます。
従来のパッケージ型(買い切り型)のシステムとは異なり、「必要なものを、必要な時に、必要なだけ」利用できるので、即時性や柔軟性は格段にアップしますね。
最後に
顧客の需要や要求を把握することは、新たな市場の発見や、新商品の開発につながる可能性があります。一方で、「ニーズ」との区別は重要。そこを取り違えてしまうと、本来最も優先して取り組むべき事項を放置することになりかねません。注意してくださいね。
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武田さゆり
国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
ライター所属:京都メディアライン



