職場環境の壁「一生懸命やっているのに評価されない。なぜあの人だけ?」
「評価」とは、誰からの評価?→普段誰を見て仕事しているか?
ここでみなさんに2つお聞きしたいことがあります。あなたの仕事の評価者は誰でしょうか? そして、あなたの仕事上のライバルは誰でしょうか?
おそらく、多くのみなさんが、評価者は「上司」という回答をイメージされたのではないでしょうか。「人事」や「会社」と答えた人もいるかもしれません。
そして、ライバルとして思い浮かべたのは「同期」でしょうか。同じ部署でひとつのポストを争う「同僚」という答えもあるでしょう。
これらの回答は、ある意味正しいと言えます。見える範囲では事実ですから。
しかし、このように考える人の割合が多いと、派閥争いのような社内政治が横行したり、足の引っ張り合いや罵り合いなどチームワークとは対極の組織文化の温床になるものです。
私も一時、足を引っ張り合うような組織に身を置いたことがありますが、同じ業態でも、まったく違う組織文化を作り出している組織もありました。その組織のリーダーたちは「評価者」と「ライバル」をまったく別の捉え方をしていたのです。
「評価者」はあくまでもお客様であり、組織内には存在しない。短期的には会社の評価制度にもとづく「評価者」が人事評価をするものの、中長期的にはお客様からの評価がその人のプロフェッショナルとしての評価を決めるのだ、という考え方です。
プロとしてはお客様のために仕事をしているのであり、上司のために仕事をしているわけではないですからね。
そして、同じようにライバルも社内にはいません。ライバルはあくまでも同業他社です。評価者であるお客様へのサービス提供の機会を奪うのは同業他社の人たちであり、社内の同期や同僚ではないのです。
プロスポーツの世界のように、レギュラー人数がルールで固定されていて、そのポジションを競い合うというケースであれば、まだわかります。しかし、企業規模にはルールも上限もなく、仕事で成果を上げてお客様に評価されれば、ポジションを作り出すことだって可能なわけですからね。
私はこのように考えられるようになって、自分の仕事の質や、仕事に対する向き合い方がより高いレベルになっていったのを鮮明に記憶しています。ただ、こう考えられるようになるまでには、私も長い時間がかかりました。
事実として等級や報酬、賞与を決めるのは直近の上司の評価ですし、同期や同僚の間で比較されて昇進が決まるケースがほとんどです。
「なぜこんなに頑張っているのに、あの人だけ優遇されるのか?」そんな気持ちになったことは1度や2度ではありません。
そんなときに、上司に媚びへつらうとか、同期の足をすくうために攻撃する、という行動に出ると組織は健全になるでしょうか。そもそも、それ、やりたいですか?
このような機会にこそ、視点を移して「評価者はお客様」「ライバルは競合他社」と考え得ると、次に取るべき行動がまず変わります。そして、それは組織を健全にする行動です。多くの人が前向きに取り組めるため、気持ちがとても楽になります。
見るべき相手を間違えてはいけません。
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著者 河野英太郎
1973年岐阜県生まれ。株式会社アイデミー取締役執行役員COO
株式会社Eight Arrows代表取締役。グロービス経営大学院客員准教授。
東京大学文学部卒業。同大学水泳部主将。グロービス経営大学院修了(MBA)。
電通、アクセンチュアを経て、2002年から2019年までの間、日本アイ・ビー・エムにてコンサルティングサービス、人事部門、専務補佐、若手育成部門長、AIソフトウェア営業部長などを歴任。2017年には複業として株式会社Eight Arrowsを創業し、代表取締役に。2019年、AI/DX/GX人材育成最大手の株式会社アイデミーに参画。現在、取締役執行役員COOを務める。
著書に『99%の人がしていないたった1%の仕事のコツ』『99%の人がしていないたった1%のリーダーのコツ』『99%の人がしていないたった1%のメンタルのコツ』(以上、ディスカヴァー)、『どうして僕たちは、あんな働き方をしていたんだろう?』(ダイヤモンド社)、『VUCA時代の仕事のキホン』(PHP研究所)、『現代語訳 学問のすすめ』(SBクリエイティブ)などがある。