職場環境の壁「会社の雰囲気が悪く優秀なマネジャーからどんどん辞めていく」
→チャンスは活かす! でも無駄な努力は回避する
職場は、一定レベルの離職率は維持していかないと組織の新陳代謝が進みませんが、離職率が極端に高い会社は、何か問題が起きている可能性があります。
「優秀なマネジャー」などキーポジションを担う人材が相次いで辞めていく、というのは会社に大きな方針転換があったり、経営者との意見相違があったりと、何かきっかけがあったのでしょう。
いずれにしても社員に大きな影響があり、動揺も広がるわけで、おそらく現場リーダーの役割を担う社会人10目前後のみなさんは、事態の収拾などの対応を迫られることでしょう。
対処方法としては、積極的にこの機会を利用する方法と、消極的な方法の大きく2つの対応が考えられます。
まず、1つ目の「流れに対して積極的に動く」方法とは、優秀なマネジャーが抜けた穴を自分で埋めに行くという行動です。上司がいなくなったときは部下メンバーが伸びる大きなチャンスです。
これまでは誰かが前に立って対応してくれていた状況から、矢面に立つのです。緊張感や責任感も一気に変わります。同時に自律性が格段に上がり、自分が動かしているという肌感覚をもつことができます。
戦後の復興期の日本をテーマにしたドキュメンタリーを見たり、小説仕立ての伝記を読んだりすると、公職追放令で上層部がごっそりいなくなった産官の様々な組織は、ミドルや若手の活躍の場となり、それをきっかけに次々と人材が成長していった歴史上の事実があるようです。
ある意味有事なので、多少の波風が立つのは前提です。むしろ失敗して当然です。チャレンジするチャンスと捉えましょう。
ただし、もし優秀なマネジャーが辞めていく理由がその上の上位職や経営者の問題であったならば、話は少し変わります。言うべきことを伝えても、受け入れられないことも考えられます。
そうなったときは、もう一つの方法である消極的な方法を選択することも考えましょう。その消極的な方法とは、その場から身を引くことです。
残念ながら世の中には、やって意味のある苦労と意味のない苦労があります。あまり優秀でない上層部や経営者の考え方や行動を変える努力というのは、得てして意味のない努力であることが多いものです。
私自身も、社内で異動先をみつけて異動したこともありますし、物理的に遠く離れた場所のプロジェクトを探して問題のある特定個人と接点を持たないように工夫したこともあります。
また、最後の意思表示の手段として退職したこともあります。特に終身雇用前提の組織では辞めないことを前提にしたマネジメネトですから、無理難題や暴言、横暴がはびこりがちです。
「あなたの組織はそれほど魅力がないのですよ」という意思表示を多くの人がしていくようになれば、上層部や経営者も気がつくことでしょう。意味のない努力や我慢を美徳と考えるのは、そろそろ終わりにしましょう。
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著者 河野英太郎
1973年岐阜県生まれ。株式会社アイデミー取締役執行役員COO
株式会社Eight Arrows代表取締役。グロービス経営大学院客員准教授。
東京大学文学部卒業。同大学水泳部主将。グロービス経営大学院修了(MBA)。
電通、アクセンチュアを経て、2002年から2019年までの間、日本アイ・ビー・エムにてコンサルティングサービス、人事部門、専務補佐、若手育成部門長、AIソフトウェア営業部長などを歴任。2017年には複業として株式会社Eight Arrowsを創業し、代表取締役に。2019年、AI/DX/GX人材育成最大手の株式会社アイデミーに参画。現在、取締役執行役員COOを務める。
著書に『99%の人がしていないたった1%の仕事のコツ』『99%の人がしていないたった1%のリーダーのコツ』『99%の人がしていないたった1%のメンタルのコツ』(以上、ディスカヴァー)、『どうして僕たちは、あんな働き方をしていたんだろう?』(ダイヤモンド社)、『VUCA時代の仕事のキホン』(PHP研究所)、『現代語訳 学問のすすめ』(SBクリエイティブ)などがある。