「鰊」の読み方・漢字
「鰊」この漢字、読めますか?
ヒントは… 別名「春告魚(はるつげうお)」と呼ばれる魚! さっそく「鰊」の読み方や漢字の成り立ち、生体、料理など詳しく解説していきます。
鰊の読み方
「鰊」は「にしん」と読みます。あまり親しみのない魚だと感じる方も多いでしょうか? または名前は知っているけども、いまいちどんな魚か分からない… なんて方もいらっしゃるかもしれません。
鰊の漢字
漢字の「鰊」のつくり「柬」は「若い」という意味があります。ニシンが小柄な魚であることからこの字が当てられたという説があります。間違いやすいですが、つくりは「東(ひがし)」ではなく「柬」と書きますよ!
また、ニシンは漢字で「鯡」と書かれることもあります。「鯡」のつくり「非」は否定を表し、「まだ成魚になりきっていない」という意味でこの漢字が当てられたという説があるようです。
「鰊」はどんな魚?
どこに分布しているのか、日本ではどのようにして広まったのか、あまり知られていないニシンの生態に迫っていきます。
鰊の生態情報
小学館デジタル大辞泉には、「ニシン目ニシン科の海水魚。全長約30センチ。体は長く、マイワシに似るが体側に黒点がない。北太平洋に広く分布し、沖合を回避。春季、産卵のために群れをなして沿岸する。食用。卵は数の子とよばれる。かど。かどいわし。はるつげうお」と書かれています。
そう、にしんの卵はかの有名な“数の子”なのです! 数の子と聞くと一気に親近感が湧きますよね。「ニシンの子」がなぜ「カズの子」と呼ばれるのでしょうか? それはニシンがアイヌの名称で「カド」と呼ばれ、「カドの子」が訛ってカズノコになったと言われているようです。
数の子も有名ですが、ニシンの白子も美味しく食べられるそうですよ!
鰊の分布
ニシンは冷水域を好む回遊魚のため、北太平洋、日本海、黄海北部の渤海湾に、北アメリカ大陸側ではカリフォルニア州サンディエゴ付近を南限として分布しています。
鰊の産地
日本ではほとんどが北海道で収穫されています。春になると、スーパーの鮮魚コーナーや魚屋さんではもちろん、お寿司屋さんでも旬のメニューとして提供されるようになります。
最盛期には年間100万トン近くの水揚げを誇り、北海道を代表する産業となったニシン。しかしある時からほとんど姿を消し、「幻の魚」と呼ばれていた時期もあるようですが、最近また少しずつ水揚げ量が増え始めています。
「鰊」の旬や栄養・味わいも紹介
ニシンの旬の時期はいつか、含まれる栄養素にはどんな効果があるのか、気になる味わいについても見ていきましょう。
鰊の旬
ニシンは脂肪の多い魚ですが、とくに春の産卵期のものは脂がのっていて絶品。春に産卵のために沿岸に来るニシンは北国に春の訪れを感じさせるため別名「春告げ魚(はるつげうお)」と呼ばれ、俳句では春の季語としても使われます。
ニシン自体は北海道の浅瀬に1月中旬からやってきてはいるのですが、北海道は流氷で1月中旬は漁に出ることが困難なため、結果的に春の漁業が盛んになり、ニシンといえば“春”のイメージが強くなっています。春にとれる「春ニシン」は産卵時期のニシンで、数の子を取るために漁獲されています。
「春ニシン」は数の子や白子を抱えているため特別感がありますが、実は産卵に向けて身体にたっぷりと栄養を蓄えた「秋ニシン」も脂乗りが良くて美味しいと言われています。
鰊の栄養
ニシンは、不飽和脂肪酸のDHAやEPAを多く含み、その他ビタミンA・ビタミンB2・B6・ビタミンD・ビタミンEなどかなり栄養価値の高い魚です。悪玉コレステロールを減らす効果がある成分や生活習慣病予防に効果がある成分など、健康な体づくりのために摂取したい栄養素が豊富に含まれています。
鰊の味わい
世界一臭いと言われている食べ物「シュールストレミング」がニシンを使った缶詰であることから、ニシンは臭くてあまり美味しくないというイメージを持っている方も多いようですが、ニシンは甘さをほんのりと感じられる香りの良い魚です。水分を多く含んだ柔らかい食感も特徴。
「鰊」を英語でいうと?
ニシンは英語で「herring」と言います。
ただ、ニシンにも種類がありさらに細かく分けて英語表記されることもあるそう。
その場合はニシンを「Pacific herring」、タイセイヨウニシンを「Atlantic herring」と表記されます。
「鰊」が使われた料理は? 食べ方・レシピ
産卵期の春から初夏にかけて脂が多く乗るにしんは、ほとんどが鮮魚として消費され、塩焼き、煮つけ、昆布巻など様々な調理が可能で使い勝手の良い魚として重宝されています。また加工品には、身欠きにしん、にしん漬けや卵を塩蔵した数の子などがあります。
鰊の塩焼き
生のニシンが手に入るなら、塩焼きでシンプルにニシン本来の美味しさを味わうのがおすすめ。頭も内臓も取り除かず、塩で〆ることで生臭さを和らげます。ふんわり柔らかい身からはほんのり優しい甘さを感じられます。
鰊のお寿司
ニシンは骨が多い魚として有名で仕込みに手間がかかるため、取り扱いのない寿司屋も多いようですが、北海道の寿司屋では旬の時期を迎えると「トロニシン握り」などニシンを使ったお寿司が回転寿司でもみられるようになります。
鰊の卵料理
ニシンの卵を塩蔵した「数の子」は有名ですよね。また昆布にニシンが卵(数の子)を産み付けてできた子持ち昆布も有名。どちらも「子孫繁栄」の意味をもち、縁起の良い食べものとしておせち料理などに使われています。
関西のにしんそば
江戸時代の頃は、北海道で水揚げされたニシンは、乾燥させて「身欠きにしん」へと加工され、海路で本州に送られていました。
当時は、冷凍・冷蔵技術や輸送技術が未発達だったことで、長期保存が可能な海産物として重宝され、日本各地で身欠きにしんを使ったニシン料理が拡大。その中でも、かけそばの上に身欠きニシンの甘露煮をのせた「にしんそば」は京都名物として長い間親しまれています。
「鰊」の選び方
ニシンは鮮度の落ちが早く、傷みやすい魚です。なので新鮮さの見極めがとても重要。新鮮なものは、目が澄んでいて濁っていないという特徴があります(充血は特に問題ありません)。
また、魚体表面にびっしりとウロコがついていると、身と腹が硬く締まっている証なので参考にしてみてくださいね!
言葉の意味/デジタル大辞泉