【目次】
・「控除」とは?
・「扶養控除」とは?
・扶養親族とは?
・扶養親族の区分とは?
・「扶養控除」には税法上の基準と、社会保険上の基準がある
・「扶養控除」を受けるには?
・共働きの場合の「扶養控除」は?
・最後に
「控除」とは?
「扶養控除」について説明する前に「控除」について説明しておきましょう。所得税とは所得に応じた金額を納める税金ですが、この所得税額は前年の合計所得金額をもとに算出されます。
「控除」とは、一定の要件を満たした場合に、所得金額から定められた金額を差し引くことができる仕組みで、「扶養控除」のほかに、「配偶者控除」「生命保険控除」「医療費控除」などさまざまな内容の控除があります。つまり、控除制度を活用することで、所得税の負担を軽くすることができるのです。
「扶養控除」とは?
「扶養控除」とは、子どもや親など、一定の続柄や年齢で定められている扶養親族区分に沿って所得控除を受けられるという制度のこと。気をつけたいのが、扶養者には配偶者は含まれません。「扶養控除」とは別に、「配偶者控除」の制度の対象となります。
扶養親族とは?
「扶養控除」を受けるには、単に子どもがいる、親と同居しているなどの事実だけではいけません。以下の要件を満たしているかどうかを確認します。
1. 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)であること
2. 納税者と生計を一にしていること(同居要件はない)
3. 年間の合計所得金額が48万円以下であること(給与収入のみの場合は103万円以下)
4. 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと
6親等内の血族及び3親等内の姻族とは?
上記、扶養親族の要件の1にある「6親等内の血族及び3親等内の姻族」というのは、具体的にはどの範囲のことでしょうか。まず、血族とは血縁のある親族のこと、姻族とは婚姻によって結ばれた親族のことです。
では、6親等内の血族から。
・1親等が自分の父母、そして子ども
・2親等は祖父母、兄弟姉妹、孫
・3親等は曽祖父母、曽孫、伯叔父母、甥姪
・4親等は高祖父母、玄孫、伯叔祖父母、従兄弟姉妹、姪孫
・5親等は高祖父母の父母、来孫、従甥姪など
・6親等は高祖父母の祖父母、昆孫など
というように広がります。また、3親等内の姻族とは、
・1親等は配偶者の父母、子の配偶者など
・2親等は配偶者の祖父母、孫の配偶者、兄弟姉妹の配偶者など
・3親等は配偶者の曽祖父母、配偶者の伯叔父母、曽孫の配偶者など
となります。扶養親族はかなり広い範囲のことを指すのですね。
扶養親族の区分とは?
扶養親族は3つの区分に分けられており、それによって控除額が定められています。
一般の控除対象扶養親族
扶養親族のうち、その年の12月31日時点で年齢が16歳以上の人のことです。控除額は38万円です。
特定扶養親族
控除対象扶養親族のうち、その年の12月31日時点の年齢が19歳以上23歳未満の人を指します。控除額は63万円です。なお、16歳未満の子どもは扶養控除対象外です。19歳から23歳といえば、一般には学費負担の大きい大学生の時期に当たるので控除額が大きくなっています。ですが、定められているのは年齢のみですから、大学進学が控除の要件ではありません。
逆に23歳を超えれば、特別扶養親族の枠からは外れます。浪人している、大学院に進むなどさらに学費が必要な場合も考えられますが、23歳を超えると一般の控除対象扶養親族となり、控除額は38万円になります。
そして注意したいのが子どものアルバイトです。先ほど、扶養親族の条件を挙げましたがその「3」の項目、収入額については子どもであっても適用されます。子どもがアルバイトをして年収が103万円を超えた場合には、その子どもは扶養家族から外れることとなります。
老人扶養親族
控除対象扶養親族のうち、その年の12月31日時点の年齢が70歳以上の人を指します。同居以外の場合の控除額は48万円、同居の場合の控除額は58万円です。
「扶養控除」には税法上の基準と、社会保険上の基準がある
「扶養控除」には、法律によって異なる基準があります。それぞれについて解説しましょう。
税法上の「扶養控除」の金額は年収103万円以下
税法上の「扶養控除」の基準金額は103万円以下です。つまり、納税者の給与収入に対して、扶養親族の年収が103万円以下であれば所得税が発生しないということです。
社会保険上の「扶養控除」の金額は年収130万円以下
社会保険上の「扶養」というのは、会社員(公務員)である扶養者の社会保険に入れるということ。この場合、扶養親族の年収が130万円以下あれば、納税者の所属先の社会保険に加入でき、それを超えると自身で加入することになります。また社会保険については、法改正に伴って、段階的に社会保険の加入が義務化されています。2022年10月からは以下のようになります。
【加入が義務化されるパート・アルバイト】
・週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
・月額賃金が8万8,000円以上
・2カ月を超える雇用の見込みがある
・学生ではない
また、雇う企業の規模によっても義務化が進んでいます。
・2022年10月から:社員数101~500人の企業
・2024年10月から:社員数51~100人の企業
それぞれで働くパート・アルバイトの社会保険加入が義務化されます。
「扶養控除」を受けるには?
「扶養控除」を受けるには、会社員の場合には勤務先で年末調整をしてもらえばOKです。会社から「扶養控除等(異動)申告書」という書類がもらえると思いますので、それに必要事項を記入して提出しましょう。
個人事業主やフリーランスの場合には、確定申告の際に「扶養控除」の申請を行うことになります。「確定申告書B」の第二表「配偶者や親族に関する事項」の欄に必要事項を記入します。また、第一表の「所得から差し引かれる金額」の扶養控除欄に、扶養控除額の合計額を記載するのを忘れずに!
なお、会社員であっても給与総額が2,000万円を超える場合、あるいは2ヶ所以上から給与支払いを受けている場合には確定申告が必要です。いずれの場合も申告書の提出がないと控除が受けられませんので注意してくださいね!
共働きの場合の「扶養控除」は?
「扶養控除」は同一世帯において重複して適用することはできません。共働きの夫婦が子どもの扶養控除を受ける場合、夫婦のいずれかでしか適用できないということです。この場合、収入の高い方が扶養控除を受けると、税負担の軽減効果は高くなります。その理由は、所得税の税率は収入が高くなると上がるからです。
最後に
「扶養控除」について理解できたでしょうか。税金の控除については申告をしないと受けられません。制度を知っておくと役立ちますね。
TOP画像/(c)Shutterstock.com