正しい入浴法と、ヒートショックの落とし穴
健やかな暮らしを提案するリンナイは、全国47都道府県の20~60代の就業者男女計2,350名を対象に「入浴に関する意識」について調査を実施。監修した入浴科学者・早坂信哉先生のコメントとともに結果を紹介します。
コロナ禍でのストレス解消法は?
調査対象者の2,350名に対し、コロナ禍でストレスが増えたかどうか、ストレスをどのように解消しているかを聞いてみました。
Q. あなたは、コロナ禍(2020年2月~)でストレスが増えたと感じますか。
・とても増えた… 18.3%
・やや増えた… 38.6%
・全く変わらない… 40.0%
・やや減った… 2.0%
・減った… 1.0%
Q. あなたのストレス解消法はなんですか。
1位:十分な睡眠、休息をとる(56.3%)
2位:美味しいものを食べる(36.1%)
3位:お風呂に入る(34.4%)
4位:お酒を飲む(29.9%)
5位:テレビなどを見て笑う/泣く(24.1%)
【早坂先生のコメント】
コロナ禍でストレスが増えたと診察室ではよく聞きますが、実際に今回の調査でもその実態が明らかになりました。感染に対する健康不安や、仕事の先行きへの経済的な不安など、ストレスが多い状態が慢性化していることによるものだと考えられます。
対処法として、睡眠や休息、食事に次いで「お風呂に入ること」が挙がってきました。お風呂は、ただ体を清潔にするだけでなく、外出しなくても手軽に行えるストレス対処法として改めてその価値が見直されてきたように感じます。
◆「正しい入浴法」をチェック!
お風呂にゆっくりと浸かるとリラックスできますよね。ただし間違った入浴法をおこなってしまうと、体に大きな負担がかかる場合も。
あなたは「正しい入浴法」ができていますか? 簡易テストで理解度を確かめてみましょう。
1. 入浴前ではなく入浴後に水分補給した方がいい?
答えは×。脱水症状を起こさないように入浴前と後にそれぞれコップ1杯以上水やお茶、むぎ茶、牛乳などの水分をとる方が良いでしょう。
2. 41℃以上の熱いお湯に使った方が身体が温まる?
答えは×。40℃までのぬるい湯の方が長時間体が温まります。
3. 半身浴の方がデトックス効果が高い?
答えは×。全身浴の方が発汗量が多く、体もより温まりやすいです。また、スキンケアのためやデトックス効果を期待してお風呂で汗だくになる必要はなく、ぬるめのお風呂に全身浴で短く入った方が高い効果が期待できます。
4. 風呂あがりに靴下を履いて布団に入ると良く眠れる?
答えは×。手足から熱が放散されないと眠れないので靴下はNG。布団に入ったら靴下は脱ぎましょう。
5. 寝る直前に入浴すると睡眠の質が上がる?
答えは×。就寝の90分前に入浴することで程よく体温が下がりリラックスした状態で入眠でき、質の良い睡眠がとれます。一旦お風呂で上がった体温が下がってきたタイミングで寝るのが良い睡眠のコツです。
6. 湯船に長く浸かるよりも10分程度にとどめた方が良い?
答えは○。長すぎると浴室熱中症のリスクが高くなるため、40℃なら10〜15分程度がベストです。
7. 入浴中の照明を暗くするとリラックスできる?
答えは○。電気を消して入浴すると眼精疲労回復の効果が期待できます。また、浴槽に浸かって歌うことで深呼吸になり湯気を吸いこみ気道を整え、呼吸筋の筋トレになります。
8. 朝風呂も良いが就寝前にも入浴した方が良い?
答えは○。それぞれ入浴で得られる効果が異なるため、朝風呂派の場合は朝夜2回入る方が良いでしょう。朝は熱いお風呂に短時間(5分程度)入ることで目覚めが良くなり、夜はぬるま湯に10分程度入ることでぐっすり眠れます。
9. 飲酒後できるだけ早く入浴するとアルコールが抜けて良い?
答えは×。コロナ禍前であれば、外出先で飲酒しても帰宅までの移動時間中にアルコールの分解が進みます。宅飲み後すぐに入浴した場合、血圧がさらに下がることで脳に十分な血液を送ることができなくなり、意識を失ってしまう危険性があるため、アルコールが分解するのを待ってから入浴すると良いです。
10. リモートワークや残業中の気分転換に入浴すると良い?
答えは×。お風呂に入ることで副交感神経にスイッチが入ります。せっかくリラックスしたのにそのまま仕事を続けてしまうと、自律神経のバランスが崩れてしまいます。お風呂をきっかけに仕事を切り上げるようにしましょう。
【早坂先生のコメント】
コロナ禍で、自宅での長時間の作業をするなど、これまでなかった時間の過ごし方をすることが増えてきました。自宅にずっといると体を動かすことも減り、気分転換もできず、生活にメリハリがなくなってきます。お風呂を安全に、そして上手に使って、リモートワークでの疲れを取り、ストレスを解消して健康を維持していただきたいです。特に、入浴後は仕事をしないなど、仕事と休息の時間の切り替えにお風呂を使うとよいでしょう。
冬の悩みで多いのは「冷え」と「肌の乾燥」
次に、冬に感じる体の悩みと、家の中で寒さを感じる場所について質問しました。
Q. あなたが、冬に悩む体の困りごとは何ですか。
1位:冷え(48.6%)
2位:肌の乾燥(39.7%)
3位:肩こり(29.1%)
Q. あなたが、自宅で冷えを感じる場所はどこですか。
1位:脱衣所/洗面室(56.8%)
2位:浴室(53.4%)
3位:トイレ(48.8%)
【早坂先生のコメント】
約5割もの方が冷えに悩んでいることが明らかになりました。冷えは上手にお風呂に入れば解消できる悩みの1つですので、お風呂の活用が期待されます。
また、脱衣所・洗面室、浴室が冷えを感じる場所の上位を占めていました。いずれもヒートショックが起こりやすい場所と考えられます。安全な入浴には、まずこの2ヶ所の冷えを感じないようにする工夫が必要であることが改めて分かった調査となりました。
◆ヒートショック予備軍チェックテスト
ヒートショックとは、急激な温度変化が体に及ぼす影響のこと。例えば暖かい部屋から寒い脱衣所や浴室に移動することで血管が縮み血圧が上がります。そのまま熱いお湯に浸かることで血圧が下がり、心臓に大きな負担がかかって心筋梗塞や脳卒中につながる場合があるのです。
簡易テストで、自分がヒートショック予備軍に当てはまるかチェックしてみましょう。
5個以上のチェックでヒートショック予備軍の可能性あり! 当てはまる項目が多いほど、ヒートショックを起こす可能性が高いと考えられます。1つでも当てはまる方は対策を始めましょう。
【早坂先生のコメント】
コロナ禍で換気が励行されるなど、ヒートショック予防にとってこれまでにない問題も生じてきました。換気をするために屋内が寒くなりがちであったり、マスクをしているために喉の渇きに気づきにくく脱水になりやすいこと、外出を控えることで急速に体が衰弱してヒートショックが起こりやすくなってきていると考えられます。これまで以上にヒートショック予防に心がけましょう。
夜の熱風呂・長風呂に要注意
寒い時季はついつい熱めのお湯で長風呂をしてしまいがちですよね。しかし先生によると、20分以上の入浴には注意が必要とのこと。
【早坂先生のコメント】
基本の入浴法は、夜は40℃で10分程度全身浴がお勧めです。朝はしっかり入浴すると体温が上昇してその後眠気がきますので夜よりは短時間での入浴がお勧めです。20分以上の長風呂派も多くのぼせ(熱中症)に注意が必要です。長風呂は健康効果が期待できません。額に汗が出ていたら、一旦浴槽から出る、と覚えましょう。
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入浴は自宅で簡単にできるリラックス法ですが、冬は思わぬ事故に繋がる場合もあるということがわかりました。正しい入浴法を学んで、コロナ禍でも上手にストレスを解消しましょう!
【調査概要】
調査時期:2021年10月30日~10月31日
調査方法:インターネット調査
調査対象:20~60代 就業者 男女 計2,350人(各都道府県50人ずつ)
調査エリア:全国47都道府県
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監修:入浴科学者・早坂信哉 先生
東京都市大学人間科学部学部長・教授、医師、博士(医学)、温泉療法専門医。お風呂を医学的に研究している第一人者。「世界一受けたい授業」「ホンマでっか!?TV」など多数のメディアに出演。主な著書は『おうち時間を快適に過ごす 入浴は究極の疲労回復術』(山と溪谷社)、『最高の入浴法』(大和書房)、『入浴検定 公式テキスト お風呂の「正しい入り方」』(日本入浴協会)など。