もしかして貧血で痩せない? 食習慣改善で貧血解消術
「若い頃は少し食事を減らせば体重は落ちたのに最近痩せにくい…」「運動しているのに痩せない…」なんて感じることはありませんか? もしかしたらあなたのダイエットで結果が出ないのは実は貧血のせいかもしれません。
「貧血」と聞くと、華奢で食の細い女性におきやすいと思っている方もいるようですが実は、体格に関係なくきちんと食べているつもりでも貧血になってしまうことがあります。特にダイエットのために自己流で食事制限をしている方は要注意です。内面から美しく輝き、健康的に痩せるために、まずは自分のカラダを把握しケアすることが大切です。
貧血の原因は栄養不足?
「貧血」と聞くと、立ちくらみが起きやすい、朝起きにくいといった症状を思い浮かべる人は多いですが、実際には、カラダが疲れやすい、いつもだるい、食欲がない、階段を上がると息切れがするなど、「もしかして疲れがたまっているのかな?」「寝不足かな?」「運動不足だからかな?」と思っていたら実は貧血だったということはよくあります。
なかでも一番多くみられるのが「鉄欠乏性貧血」です。女性の場合は毎月の月経で血液を失うほか、妊娠や授乳期には赤ちゃんに栄養を与えることで栄養不足となり貧血になることもあります。また、過度のダイエットで食事を抜いたり偏食をしたり、現代の食生活では手早く簡単に準備できるファストフードや加工食品への依存が増加しています。
食事が高カロリー、高脂肪なのに対し、食物繊維やビタミン、ミネラル等の必要な栄養素が必然的に足りなくなり栄養不足を招き、鉄分不足を引き起こし貧血になってしまうことがあります。貧血が少しずつ進むと、日常的にカラダの不調に慣れてしまい気づかないことが多くなります。貧血を引き起こす原因を突き止めずに放っておくと危険な病気が隠れていることもあります。
令和元年の国民健康・栄養調査の結果では、成人女性(18歳~29歳月経あり)の鉄摂取推奨量が10.5mgに対し6.2mgしか摂取できておらず、30~49歳女性(月経あり)の鉄摂取量をみても、摂取推奨量11.0mg/日に対し6.4mgしか摂取できていません。多くの方が鉄不足であることは明らかです。
もしかして貧血?
貧血は、血の量が少なくなって起こるのではなく、血液中の赤血球に含まれる「ヘモグロビン」というたんぱく質の一種が不足している状態です。ヘモグロビンは血流にのって酸素をカラダのすみずみまで運ぶ働きをしています。
また、ヘモグロビンは鉄(ヘム)とたんぱく質(グロビン)が結びついたものです。鉄分がなければヘモグロビンをつくり出すことはできません。そのため、ヘモグロビンの量が低下するとカラダの組織に十分な酸素が行き渡らず、さまざまな不調があらわれるようになります。
貧血は次のような症状になって現れることがあります。ひとつでも当てはまれば貧血の可能性があり要注意です。
〈試してみよう! 貧血セルフチェック〉
□ 疲れやすい
□ いつもだるい
□ 朝なかなか起きられない
□ いつも眠い
□ よく眩暈や立ちくらみがする
□ 集中力が持続しない
□ 冷え性
□ 顔色が青白い
□ 爪が割れやすい
□ 髪が抜けやすい
□ 無性に氷が食べたくなる
□ 耳鳴りがする
□ 頭痛や頭が重い感じがする
□ 階段を上がると息切れがする
貧血だと脂肪燃焼がしにくくなる
貧血と脂肪燃焼には深い関わりがあります。体内には、糖や脂肪をエネルギーに変換して燃焼してくれる「ミトコンドリア」が存在します。ミトコンドリアとは細胞の中にあるエネルギーをつくる工場です。
ミトコンドリアでエネルギーをつくる際には酸素と鉄を必要とします。貧血に陥ると酸素が十分に運ばれず鉄も不足することでエネルギーを生み出せなくなり、運動の効果も表れにくく食事を制限しても思うように体脂肪が減りません。これが貧血で痩せにくくなるメカニズムです。
貧血を改善するために基本は日頃からの食事が大切です。気をつけるべき3つのポイントをお伝えします。
1. たんぱく質を摂る
ヘモグロビンを増やすためには、たんぱく質は欠かせません。鉄と同様必要な栄養素です。タンパク質は、私たちのカラダの皮膚や毛髪、筋肉や臓器などを構成し、ホルモンの調節にも関わっています。とくに女性はタンパク質が不足しがちなので、意識的に食べたい栄養素の一つです。
ただし、ダイエット中で脂質の量が気になる人もいると思います。動物性タンパク質は脂質が多く含まれているものもあるため、良質な低脂肪・高タンパク質で、栄養価が高いものを選びましょう。脂身や乳製品などの摂りすぎに注意して、お肉と魚を交互に食べたり、豆類をたっぷり食べたりする日があってもいいですね。
食材だけでなく、ゆでたり、蒸したり、焼くなどして油を使用しない調理方法を選択するだけでも脂質を抑えることができます。
2. 鉄分を摂る
鉄には2つの種類があり、動物性食品に含まれている「ヘム鉄」と、植物性食品に含まれている「非ヘム鉄」があります。特にレバーや肉、魚類に含まれるヘム鉄から得られた鉄は、カラダに吸収されやすく、海藻や豆類、野菜に含まれている吸収されにくい非ヘム鉄の吸収も高めてくれます。
非ヘム鉄はビタミンCとの食べ合わせで吸収しやすくなります。柑橘類や酢など、副材料や調味料に工夫して調理を行うと良いですね。また、場合によってはサプリメントを活用することや、医師に相談することも大切です。
3. いろいろな食材をバランスよく食べる
造血や鉄の吸収には、ビタミンB2、B6、B12,葉酸、ビタミンCなどの栄養素も欠かせません。健全な代謝を支えるビタミンやミネラルが足りないということは、当然ながらカラダが脂肪を燃焼する力も非常に弱くなります。食生活は主食、主菜、副菜を基本に食事のバランスをとることが基本です。
厚生労働省と農林水産省によって策定された「何を」「どれだけ」食べたらよいかを分かりやすくコマのイラストを用いた「食事バランスガイド」を参考にするとよいでしょう。
貧血を防ぎ痩せやすい体質になるには、まず食事制限だけのダイエットはやめることです。鉄分不足は美の大敵。鉄は栄養素の中でも吸収がしにくい成分であり、日常的に意識をしなければ不足しがちな栄養素。貧血の症状があると疲労を感じやすくなり、思考がまとまらないこともあるなど、精神的な面での影響も考えられます。
ダイエットは何よりも続けていくこと、そして心身ともに健康な自分を手に入れるために行うものです。ぜひ貧血予防を心がけてみてください。
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ダイエットカウンセラー 及川美由紀
NPO法人日本痩身医学協会認定講師、おいかわ整骨院ダイエットカウンセラー。
日本痩身医学協会では、健康的なダイエットの学術研究と生活習慣病の改善を目的とし全国に1100人以上の会員を有している。
看護師として15年以上病院勤務。生活習慣と健康の関係がより密接であることを感じ、ダイエットアドバイザーとして1000人以上のお客様のダイエットをサポートし成功に導いている。