ワクチン接種会場で驚いたこと「新型コロナウイルスワクチンと不正出血の関連性」
先日、新型コロナウイルスワクチンの接種会場で、「えっ!? 本当?」と思うことがありました。2回目の接種に訪れた女性への問診の際に、その女性が言うには、「1回目の接種後に、4日ほど不正出血が続いた」と言うのです。
恥ずかしながら、「新型コロナウイルスワクチンと不正出血の関連」は私の知識の中に全くありませんでした。その理由は、どう考えても科学的な根拠を持って双方が関連しているとは思えないからです。
しかし、気になってその後、インターネットで検索すると、なんと、このキーワードでの検索で情報があるわ、あるわ。ものすごい量の情報です。しかしながら、どの記事を読んでみてもはっきりとした科学的根拠を持って関連を裏付ける説明がされているものはありません。
一方で、関連を否定する記事もどちらかというと「関連は不明」とするものが大半で、結論からいうと「わからない」とするのが公平な判断なのかという感じです。
このコラムで「わからない」とするとあまり「健康コラムとしての意味」がありませんので、今日はもう少し踏み込んでみようと思います。
新型コロナウイルスワクチンと不正出血は関係がない。その理由は?
私は、「新型コロナウイルスワクチンと不正出血は関係が無い」と思います。その理由を説明いたしましょう。
◆理由
1. ファイザーやモデルナのメッセンジャーRNAワクチンは、数時間から数日で分解されて体内から無くなります。
2. ワクチンとして筋肉注射されたメッセンジャーRNAは、筋肉細胞内でタンパク質に「翻訳」(置き換わる)されます。
3. このタンパク質が、不正出血を引き起こすためには、脳−卵巣−子宮内膜に影響を及ぼす「ホルモン」として作用する以外に、人体での影響は考えられません。
4. ワクチン接種により体内で作られたタンパク質は「ホルモン」として作用するタンパク質とは全く異なる物質です。
5. もし可能性があるとするならば、接種による「心因的要素」が影響を及ぼす事は否定はできません。しかし、この説を支持する「信頼できる論文」は見当たりません。
◆注意
「信頼できる論文」と書きましたが、一言で論文といっても玉石混交です。一般の方には知られていませんが、嘘や間違った「論文」だってたくさん出回っていますので、「論文に出ている」という専門家の解説も鵜呑みにしないでください。かくいう私のこの記事も同じように疑うことが大切です。
参考として、以下のリンクもチェックしてみてください。
厚生労働省|新型ワクチンQ&A「ワクチン接種により不正性器出血(不正出血)や月経不順が起こるのは本当ですか。」
最後に、「不正出血」を短絡的に「新型コロナウイルスワクチン」と関連づけるのではなく、子宮頚がんや子宮体がんの検査を受けるきっかけにされてはいかがでしょうか? 多くの女性が子宮頚がんや子宮体がんで苦しんでいますので、早期発見・早期治療には不正出血を放置しないことです。
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国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長 増富健吉
1995年 金沢大学医学部卒業、2000年 医学博士。
2001年-2007年 ハーバード大学医学部Dana-Farber癌研究所。2007年より現職。
専門は、分子腫瘍学、RNA生物学および内科学。がん細胞の増殖と、コロナウイルスを含むRNAウイルスの増殖に共通の仕組みがあることを突き止めており、双方に効く治療薬の開発が可能かもしれないと考えている。
専門分野:分子腫瘍学、RNAウイルス学、RNAの生化学、内科学。
趣味:筋トレ