気持ちが伝わる「一筆箋」の書き方
メールやメッセンジャー、ラインとコミュニケーションの手段は、デジタルでも拡がりを見せています。いまや紙で手紙を書く機会は減っているという人も多いのではないでしょうか。
それでも仕事やプライベートでちょっとしたメッセージを手書きで伝えたいとき、ありますよね。
御礼や書類送付の際でも手書きの一筆が添えられているだけで、送り手の顔が見え、受け取る側にほっこりした気持ちをもたらすものです。そんなときに便利なのが「一筆箋」です。
初回は「挨拶」と「結びの言葉」の事例を紹介します。
「挨拶」と「結びの言葉」で印象はガラリと変わる
一筆箋は手紙の便箋と比べて小さいので、全体的にコンパクトに、内容もスリムにします。守らなければいけない決まりはありませんので、いきなり直球でど真ん中に趣旨のみを書くのもインパクトがあり、アレンジ次第で大いに効果が期待されます。
もうひとつは手紙のミニチュア版と考えて、基本に即し「挨拶」や「結びの言葉」を入れると、今度はぐっと折り目正しい印象を与えます。
下のふたつの例文を見比べてみてください。どちらもお世話になったお礼にお菓子を差し上げるときに添える一筆箋の文例ですが、「挨拶」の有無で、同じ趣旨でも印象がまったく違って感じられるのではないでしょうか。
■「昨日はありがとうございました」
■「こんにちは 朝夕冷えてきましたね。昨日はありがとうございました。どうかお疲れが出ませんように」
「挨拶」「結びの言葉」の有無は、一般的に差し上げる相手との親密度や贈り物の目的・状況などで使い分けるようにします。
家族や友人、同僚のようにとても親しい間柄には、一行だけで十分気持ちを伝えることができますが、上司や顧客、義父母などに対しては、いきなり本題では、戸惑わせてしまうかもしれません。挨拶の言葉があるほうが失礼がなくて無難です。
また、ちょっとした差し入れ程度であればひと言メッセージで十分ですが、お中元やお歳暮、内祝いなどといった特に感謝や経緯を表す贈り物に添えるような場面では、挨拶を省かず、礼儀を重んじなければ失敗します。
「挨拶」や「結びの言葉」に、どんなフレーズを用いるかでも大きな違いが出ます。
■「いつもお世話になっています。
昨日はありがとうございました。今後とも引き続きよろしくお願いします」
■「御社前の銀杏並木が鮮やかに黄色一色ですね。昨日はありがとうございました。
向寒のみぎり、お体を大切に」
前者は場面を選ばず、無難でよく目にします。しかしあまりに一般的で、ほとんど読み手の記憶に残らないのではないでしょうか。それに比べて、後者は文面に書き手の「こころ」が感じられませんか?
両社とも趣旨は同じですが、ほんの一行の挨拶も丁寧に考えることで、書き手の人柄やセンス、誠意まで伝わります。
困ったときの万能の「挨拶」
・いつも何かとお心にかけていただき、ありがとうございます。
・心ならずもご無沙汰が続きますが、お元気でしょうか。
・御社の皆々様にはお変わりなくお過ごしでしょうか。
気持ちをほぐす「挨拶」
・「近いうちに会いましょう」の約束は今どのあたり?
・旅行に行きたい病は大丈夫ですか
・口では決して申しませんが、実は感謝しています
また会いたいと思わせる「結びの言葉」
・とても楽しかったので、またぜひぜひお会いしましょう
・音信がありませんと不安になりますので、ときどきは元気な声をお聞かせください
・またワクワクするお仕事をサポートさせてください
・ぜひまた、お仕事をご一緒させてください
・楽しさに時間があっという間でした。よかったら近いうちに、またお話の続きをきかせてください
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亀井ゆかり
手紙コンサルタント。関西外国語短大を卒業後、大手通信機器メーカーに就職し、役員秘書を務める。
結婚を機に退職したあとは、大企業から個人経営の店舗など、あらゆる業種の顧客に向けた挨拶状の代筆業をはじめる。
代筆業の経験を活かし、一筆箋の商品開発にも携わっている。
著書に『大人のたしなみ「一筆箋」気の利いたひと言』(青春出版社)がある。