適応障害ってどういう病気?
適応障害って聞いたことありますか?
最近、よく「適応障害」という病気を耳にすると思いますが、どういう病気か知っていますか? 今日は、適応障害について少し書いてみようと思います。
適応障害というのは、「こんな病気です」と明確に説明することがなかなか難しい病気ですし、この薬で治りますというような病気でもありません。様々な症状が引き起こされるのですが、その原因も様々。
症状としては、不安感、うつ症状、パニックになる、落ち着かない、集中できない、眠れない、食欲が全くない、頭痛、腹痛、電車に乗るのが怖い、などなど。原因もなかなか特定できないし、色々と検査をしてもこれといって異常らしい異常は見つからない。
しかしながら、本人としてはすごく辛いし、仕事にも影響が出る。周囲は周囲で、「もしかして仮病なんじゃないの」とか「本人がストレスに弱いだけなんじゃないの」と何となくネガティブな感情で見てしまうという、本人にとっても周囲の人にとっても、非常に困った状態を引き起こす病気です。
適応障害の原因は?
さて、原因は? 唯一の手がかりになるのは、「環境の変化」にともなって症状が出てきたかどうかという点にあります。環境の変化とは、職場環境であったり家庭環境であったり。
例えば、転職、転勤、部署異動、進学、家族の病気、大切な人との離別、などなど、なんらかの「環境」変化が症状の出現に関わっていそうな場合にこの病名になります。
では、この病気の人は先ほど述べたように、「ストレスに弱いだけ」なのでしょうか? 少し古い考えの世代だとよく言われがちな表現ではありますが、最近の研究ではそうでもないということがわかってきています。バリバリの体育会系で鍛えたアスリートで、多くのストレスをストレスとも感じずに乗り越えてきた様な人でも、適応障害になり身体症状を引き起こすことも多くあるようです。
適応障害の対処法は?
それでは、この適応障害にどのように対処するのが良いのでしようか? もちろん、精神科や心療内科の先生に相談して、必要であれば、お薬を処方してもらうことも大切なのですが、普段の生活で少し意識してみては、と思うことがあります。
それは、「環境の調整」を目指すことです。これは、環境を変えるのではなく、今の環境に自分から適応していく方向で動くことです。もう少しいうと、今の環境に耐えうる「少し強い自分に変えていく」ということです。
このために必要なこととして重要と言われているのは、
◆1. 考え方の是正
具体的には、あまり過度に几帳面になりすぎず、「まあいいか」という考え方を心掛ける。
◆2. 生活習慣の改善
食習慣の改善と運動などで、今の生活習慣を是正していく。
自分の行動様式と考え方を変えていくことで、環境にも適応できていくようです。こうやって考えると、やはり、食事と運動は大切ですね。食欲の秋、運動の秋ですから、こうした取り組みをするにはもってこいの季節です。
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国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長 増富健吉
1995年 金沢大学医学部卒業、2000年 医学博士。
2001年-2007年 ハーバード大学医学部Dana-Farber癌研究所。2007年より現職。
専門は、分子腫瘍学、RNA生物学および内科学。がん細胞の増殖と、コロナウイルスを含むRNAウイルスの増殖に共通の仕組みがあることを突き止めており、双方に効く治療薬の開発が可能かもしれないと考えている。
専門分野:分子腫瘍学、RNAウイルス学、RNAの生化学、内科学。
趣味:筋トレ