【目次】
・「忘却の彼方」の意味とは?
・「忘却の彼方」の使い方を例文でチェック
・「忘却の彼方」の類語とは?
・「忘却の彼方」の対義語にはどのようなものがある?
・最後に
「忘却の彼方」の意味とは?
皆さんは、「忘却の彼方」という言葉を聞いたことはありますか? 知っていても、使う機会があまりないので、馴染みのない言葉かもしれません。
「忘却」は<ぼうきゃく>と読みます。意味は、「忘れ去ること」や「すっかり忘れてしまうこと」です。一方「彼方」は、<かなた>と読み、「あちら」「あっちの方」という意味があります。
つまり、「どこかあちらの方へ、すっかり忘れ去っていること」を「忘却の彼方」といいます。「忘れる」よりも強い意味合いで、思い出に対して使われることが多いです。
「忘却の彼方」の使い方を例文でチェック
「忘却の彼方」という言葉は、先ほども述べたように、日常会話ではあまり使われません。「忘却」とは、小説や俳句などで多く用いられる詩的な表現だからです。ですから、「こういう使い方もできるんだな」と知識の一環として、ご紹介する例文を参考にしてください。
1:「私は、あの出来事を忘却の彼方へ押しやる覚悟をした」
この場合は、「あの出来事」という、特定の思い出を意図的に忘れ去ろうとする際の使い方です。意図的に忘れようとする行為なので、楽しかった出来事より、悲しかったり辛かったりネガティブな出来事に対して使います。
2:「あなたは、あのニュースを忘却してしまったのですか?」
「忘却」のみを抜き取って使うこともできます。この用例は、何か重要なニュースをすっかり忘れてしまっていた相手に対しての使い方です。「忘却の彼方」は名詞ですが、「忘却する」という動詞的に用いることも出来ます。
3:「あなたといると、将来の心配や悩み事もすべて忘却の彼方になるね」
この例文は、「すっかり忘れてしまうこと」の意味をポジティブに使った用例になります。嫌なことをすっかり忘れることが出来る、という意味で使うことが出来るので、先に取り上げた2つの例文とは異なった使い方です。
「忘却の彼方」の類語とは?
なかなか、使う機会に悩む「忘却の彼方」。似たような意味で、より使いやすい言葉があったら便利ですよね。ですので、「忘却の彼方」よりも日常的に使うことの出来る類語を、いくつかご紹介いたします!
1:失念
仏教用語としても用いられますが、基本的には「すっかり忘れること」という、「忘却の彼方」と同じ意味を持つ言葉として使われます。
「念」は、「物事をきちんと記憶すること」や「思い」「考え」という意味を持つことから、「失念」は、「約束や予定などの記憶や思いを失った際に用いる」言葉ということです。したがって、携帯や鞄などの物体を置き忘れた場合には、「失念」という言葉は使わないので注意しましょう。
また、「忘却の彼方」よりも、「失念」の方が使われる機会が多いです。ビジネスシーンで約束などをうっかり忘れてしまったときは、「失念しておりました」というふうに使うことで、「忘れていました」よりも、緊張感のある丁寧な言い回しになります。
2:忘失
「失念」では、「念」の持つ意味を紹介したうえで、携帯や鞄などの物体を置き忘れた場合は、「失念」という言葉を使わないと説明しました。では、物体をすっかり忘れてしまった場合は、なんと表現すればよいのでしょうか。
実は、忘れ物をしてしまった場合に、用いることができるのが、この「忘失」という言葉です。
例えば、家の鍵をどこかへ置き忘れてしまった場合は、「家の鍵をどこかに忘失してしまった」ということが出来ます。時間など概念的に忘れてしまった場合は「失念」、物質的に失くしてしまったときは「忘失」。この使い分けを忘れないようにしましょう。
3:度忘れ
「度忘れ」は、「直前まで覚えていたことを何かの拍子に急に忘れてしまって、どう思い出そうとしても全く思いだせないこと」を指します。直前まで覚えていた事柄について、すっかり忘れてしまったことを指すので、「忘却の彼方」や「失念」とは少し異なった使い方です。
「忘却の彼方」や「失念」より持っている時間の幅が狭いですが、会話の中で「今話そうと思ったことを度忘れしちゃった」などと、くだけた雰囲気の言い回しをすることが出来ます。
「忘却の彼方」の対義語にはどのようなものがある?
続いて、「忘却の彼方」と反対の意味を持つ言葉には、どんなものがあるでしょうか。ぜひ、「忘却の彼方」とセットで覚えてみてください。
1:想起する
以前あったことを、後になって思い起こすことを「想起」といいます。「思い出す」も「忘却」の対義語にあたりますが、「忘却」には「忘れる」よりも強い意味が含まれているので、「思い出す」より強い意味をもつ「想起」が対義語としてふさわしいです。
2:記憶する
「記憶する」という言葉には、「記す」という漢字が含まれている通り、過去に体験したことや、覚えたことを忘れずに覚えておくという意味があります。また、その内容そのもののことを指して、「記憶」ということもありますね。
「記憶に留める」「記憶力に自信がある」「記憶に新しい」という使い方も可能です。
3:追憶
「追憶」は<ついおく>と読みます。「憶」には「心にとめる」「思い出す」という意味があり、それが「追う」という言葉と合わさって熟語になっているので、「過去を思い出して偲ぶこと」を「追憶」といいます。
「偲ぶ」は、過去のことや離れている人のことなどをひそかに思い慕ったり、思い出してなつかしんだりすることを指します。したがって「追憶」とは、過ぎ去った過去に対して、思いを馳せて懐かしむという意味になります。
最後に
いかがだったでしょうか。「忘却の彼方」は、日常的な会話で使われることは滅多にありませんが、漢字のつくりといい、音の響きといい、美しいと思いませんか? 類語の「忘失」や、対義語の「追憶」も非常に美しい日本語です。
普段使わない言葉でも、関連する言葉を調べていくことで、ビジネスや日常で使える言葉に出会えますし、このように美しい日本語に出会うことも出来ます。ぜひ、楽しみながら語彙を増やしていってください。
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