節約はブスの元
前回、大富豪のえびすさまから、「節約」についてのお金持ちの常識を教えてもらった。
「節約で得られるお金は本当に限られている。したくない我慢を無理にして、やっとの思いで数万円を捻出するなら、週にあと一、二日アルバイトをしたら良いんじゃないかな?
お金を得る方法はたくさんある。単純な肉体労働でも良いし、家庭教師のように時給の高いものと掛け持ちするのも有効だね。そのほか、副業でも、家にあるものをインターネットを通して売ったり、何かビジネスを始めたり。
あすかちゃんは、とてもラッキーな時代に生きている。今の時代、情報を得るのも実際に売買をするのも、全てインターネット上で事足りるんだからね。工夫とやる気次第で、数万円、数十万円という額は簡単に手にすることができる。支出を絞るぐらいであれば、収入を上げるほうにフォーカスしたほうが、身も心もよっぽど健全に過ごせるよね。
まぁ、誘惑にあまりに弱い場合はあえてギリギリまで節約することで暇をつくって収入を上げるための時間を確保するのもひとつ有効な手段だけれど、あすかちゃんはそういったタイプではないから大丈夫だろう」
えびすさまはそこまで言うと、悪戯っぽく目配せをした。
「そうそう、あすかちゃんは女性だから、これも覚えておいたほうが良いね。さっき『節約は貧乏の元』はお金持ち界での常識だと言ったが、同時に『節約はブスの元』でもある」
「ブスの元!? やだぁ。ただでさえ大して美女でもないのに、そんな私は節約したら、もはや目も当てられないような顔になるってこと?」
泣きそうになる。貧乏でブスだなんて、もはやどう生きていけば良いのかわからない。
あまりにこの世の終わり、みたいな表情になったのを見てか、えびすさまは慌てて「違う、違う」「落ち着いて」「ブスって当然、造形のことじゃないからね」と優しくフォローを入れてくれた。
「女性は無理をしているとねぇ、表情も纏う空気も、次第にどんよりとしてきてしまうんだ。うつむきがちになり、姿勢も悪くなり、肌は荒れ、ギスギスと『渇いた』人になる。女性には『潤い』が大事でね。潤いのないところにはお金も人も集まらない。可愛く綺麗でいるのを邪魔する選択肢なんて必要ないんだ。
節約をすればするほど、心が貧しくなる。貧相なところへお金は遊びに来ない。例えば……、あすかちゃんの周りのママさんにもいるんじゃない? スーパーのチラシを見て、自転車でわざわざ隣町まで十円安い卵を買いに行くような人」
「いる! 数量限定だから、って、いっつも髪の毛振り乱しながら特売日の朝早くに卵を買いに行ってるご近所さん。自転車で二十分ぐらいかかるって言ってた」
「金額だけに目を向けてしまうと、そういった判断をしてしまうこともあるんだよね、人間って。でも実は、そんなことをしていると時間価値はどんどん下がっていく一方だ。
この行為を取ることで彼女は『自分が時給三十円のオンナである』と自分自身に刷り込んでいるんだからね。可哀想に。本当はそんなに『安い』女性じゃないのにね。節約は心を貧しくし、自尊心を傷つける悪しき行為だよ」
節約=マイナスのエネルギー
そういえば、特売日にすれ違う彼女はちっとも幸せそうじゃなかった。得たいものを得たはずなのに、疲れのほうが勝ってしまっているのか、ロクに目も合わせてくれないのだ。
ぼんやりと宙を見て、こちらから声をかけて初めて「あ! こんにちは〜」と返してくれる。引っ越してきてまだ一年も経っていないのに、当初よりも美しさというか瑞々しさは、確かに薄まっている気がした。
「収入を上げるという行為はプラスのエネルギー、支出を減らすというのはマイナスのエネルギーだ。繁栄と衰退。拡大と縮小。このどちらがお金を増やすのに有利かと言ったら、それは当然、収入を上げるほうだよね。収入を上げるというのは加算していく作業だから、自分の枠や可能性をどんどん広げていくことになる。
一方で、支出を減らすというのは削り落としていく作業だ。例えば極限まで減らせたとして、そこで得られる感情は何だと思う? 目標到達による達成感はあると思うけど、それはあくまでその瞬間だけのものだね。節約で得られる感情と言えば、正直それぐらいしかない。
支出を減らすほうに注力するのは『自分はこんなもんだ』『私は所詮この程度』と勝手に限界を決めていることになる。それは、自分を否定することにも繋がっていく。あえて自分を傷つけるようなことなんてしなくて良いんだ。…… あすかちゃん、自分自身の稼ぐ能力を見くびってはいけないよ? なぜなら君は、無限の可能性を秘めているのだから」
えびすさまは「節約万歳」の呪いを解くため、それを上書きする常識を教えてくれた。
「節約するなら、倍稼ごう」
彼曰く、これはお金持ちの「共通スタンス」なのだと言う。
どんなことをして稼ごうか、自分には何ができるだろうか。これらを考えるのは確かに、今度はどこを削ろう、これ以上何をしたらお金が浮くのだろう、と支出を絞る努力をしていたときよりも、遥かに胸が高鳴り、楽しい気分になった。
お金持ち界の常識というのはもしかしたら、ご機嫌に生きる秘訣のようなものなのかもしれない。
今回の学び
・節約では豊かになれない(金銭面でも気持ちの上でも)
・節約には限界がある
・支出を減らすよりも収入を上げるほうが楽だし楽しい
TOP画像/(c)Shutterstock.com
職業お金持ち 冨塚あすか
個人投資家。1988年生まれ、仙台出身。慶應義塾大学卒。「お金を理由に何かを諦める、という事態とは生涯無縁でいよう」と決め、20歳のときに10万円から資産運用を始める。紆余曲折ありながらも持ち前の分析力と嗅覚、人当たりや運の良さで資産を順調に拡大。会社員を辞めてからは2年ほど、専業投資家として資産運用のみで生活をする。現在は、オンラインサロンを通じて、投資の仕方や生き方、女性がお金持ちになるために必要な「お金の帝王学」について指南している。趣味は旅行と食べ歩き、お金持ちの話を聞くこと。
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