「心ばかり」の意味とは?
「心ばかりの品ではございますが」といった表現、取引先とのお付き合いの中で使ったことがあること人は多いと思いますが、正しく使えていますでしょうか?
本記事では「心ばかり」の意味や使い方の例文、使えるシーンや使える相手などをしっかりと解説していきます。
「心ばかり」という言葉を使えるシーンや使える相手は?
「心ばかり」は、「わずかに心の一部を表したものであること」という意味。贈り物をするときなどに謙遜していう語です。漢字を用いる場合は、「心許り」と書きます。
では、どんなときに「心ばかり」を用いることができるのか、確認していきましょう。
◆心ばかりを使えるシーン
先述した通り、「心ばかり」は、贈り物を差し出すときに使う謙遜した表現でしたね。例えば「心ばかりの品ではございますが」「心ばかりではありますが」などと、自分から相手へ贈り物をする際に「大したものではないですが」という謙遜の気持ちを込めて用います。贈り物だけでなく、お土産・お菓子・お金・お祝いの品を渡すときにも使うことができますよ。
◆心ばかりを使える相手
「心ばかり」はあくまでも自分が渡す贈り物に対して使うので、相手から何かを頂いたときに「心ばかりのものをいただき非常に嬉しいです」と使うことはできません。「心ばかり」は上司やお客様など目上の人に対して、贈り物をする際に謙遜する気持ちを込めて使うことができる表現だと覚えておきましょう。
「心ばかり」に対するお返しの言葉はコレ
「心ばかり」と書いて送られてきた贈り物に対しては、どのように対応したらよいのでしょうか? 「心ばかりですが」「心ばかりではございますが」と言われて受け取った贈り物には、お返しをすることは好ましくないと言われています。
なぜなら、相手の感謝の気持ちやお礼の気持ちをそのまま返すという意味に繋がるからです。そのため、お返しなどは考えず、ありがたく受け取ることがマナーです。
ただし、お中元やお歳暮などの、通常の贈り物ならば、お返しするのがマナーになります。その贈り物に「心ばかり」と書かれていた場合でも、「御礼」と書き、お返しするのが適切です。
また、「心ばかりの品ではございますが〜」と贈り物を受け取った場合の返答としては、「お心遣い、ありがとうございます」や「美味しくいただきます」など、感謝の気持ちを伝えると良いでしょう。
「心ばかり」の渡し物をする時の正しい方法は?
「心ばかり」は表書きに使える表現です。お礼の品やお金を渡すときは、封筒やポチ袋、のしなどに書きます。「心ばかり」の渡し物をする時の正しいマナーについて、確認していきましょう。
◆封筒を使用するとき
「心ばかり」のお金を封筒に入れて渡す時のマナーと書き方について説明します。目下から目上、及びその逆、双方向で使用することができます。その際、必ず封をし、表書きをします。封筒の表書き、上部に「心ばかり」と記入します。そして下部に名前を書きます。
なお、封筒の場合には「誰からなのか」がはっきりしている場合は特に名前を書く必要はなく、書いても書かなくても構いません。ただしビジネスシーンでは、受け取った相手に分かりやすくするために、会社名と氏名を表書きする方が良いでしょう。
また、ビジネスシーンで使用する封筒は白無地が無難でしょう。補足ですが、目上の方に対しては「心ばかり」と書くようにします。逆に目上から目下の者に対しては通常「寸志」を使用しますので、注意が必要です。
◆ポチ袋を使用するとき
「心ばかり」のお金を、ポチ袋に入れて渡したい時のマナーについて説明します。目上から目下へ渡すときのみに使用することができます。その際、封も表書きもしません。
なお、中に入れるお金についてですが、お札は最大3枚までにしておきましょう。それ以上のお金を入れる場合には、封筒を使用します。ポチ袋は目下から目上へ渡す時に使用してしまうと失礼になりますので、注意しましょう。
◆のしを使用する時
相手に贈り物を送る場合には、のしに表書きをすることになります。のしの表書きの書き方は、前述の封筒への書き方に準じていれば問題ありません。
「心ばかり」の言葉の使い方を例文でチェック
「心ばかり」は上司やお客様など目上の人に対して、贈り物をする際に謙遜する気持ちを込めて使う表現でしたね。実際に例文で使い方をチェックしておきましょう。
例文1:「心ばかりの品ではございますが、どうぞお納めください」
例文2:「心ばかりの品で大変恐縮ですが、何卒ご笑納いただければ幸いに存じます」
例文3:「心ばかりではありますが、お土産をご用意いたしました。家に帰ったら、ぜひ召し上がってください」
「心ばかり」の類語や言い換え表現にはどのようなものがある?
「心ばかり」の類語や言い換え表現も合わせて覚えておくと便利ですよ!
「寸志」
「寸志」は、「すんし」と読みます。「心ばかり」と同じ「ちょっとした気持ち」を表す言葉です。「寸志」は別名「心付け」と言い、お世話になった人への感謝やお礼の気持ちを表す少しばかりのお金や品物を意味します。
封筒の書き方でも述べたとおり、「寸志」は目上の人から目下の人へのちょっとした気持ちを表しますので、目上の人には使いません。目上の人に対しては「寸志」ではなく「心ばかり」を使うのが良いでしょう。
「ささやか」
「ささやか」は「形や規模があまり大げさでなく、控えめなさま」や「形ばかりで粗末なさま、わずかなさま」という意味。後者の意味の場合の多くは、謙遜の意味が強められて「取るに足らない、そまつなもの」といった表現として用いられます。
このことから「ささやか」も「心ばかり」の言い換え表現として使用されます。「ささやか」は、嫌味な印象や誤解をあまり受けることがないため、使いやすい言い換え表現と言えるでしょう。
「つまらないものですが」
「心ばかり」の類語として「つまらないものですが」が挙げられます。本当につまらないものを渡すのではなく、「あなたのような素晴らしい方からすれば、つまらないものに感じるかと思いますが」という意味が含まれています。
「心ばかり」と同じように相手への謙遜の気持ちを表現できますので、ビジネスシーンでは目上の人や取引先の人に贈り物を贈るときに用いることが多いです。
「心ばかり」を使う時の注意点について
謙遜する気持ちを表現する「心ばかり」ですが、使うときの注意点がありますので、気をつけて使っていきましょう。
1:高価な贈り物を贈るときには、使えない
相手に謙遜する気持ちを表現する「心ばかり」ですが、明らかに高価なものやブランドの商品などを贈る場合に使用するのは好ましくありません。高価な贈り物を贈るときに「たいしたものではありませんが」「気持ちしかこもっていませんが」と添えるのは、嫌味に聞こえてしまうためです。
とくに、取引先など外部の人に贈り物を贈るときには、悪い印象を与えかねません。贈り物の内容や価格帯によっては「心ばかり」という一言が使えないことに、注意してください。
2:謝罪の品として贈り物を渡すには、順序に気をつける
謝罪の品として贈り物を渡す場合、「心ばかり」の使い方に気をつけましょう。まずは、相手への謝罪やお詫びの言葉をしっかりと述べることが大切です。謝罪よりも先に「心ばかりの粗品ですがお納めください」と言われても、あまりいい気持ちがしないですよね。
また、「心ばかり」には「たいしたものではありませんが」という意味があるため、先に「心ばかり」を用いて贈り物を渡してしまうと、謝罪する気持ちがないと捉えられかねません。相手に謝罪をしてから、申し訳ない気持ちとともに贈り物を渡すように心がけましょう。
「心ばかり」の英語表現とは?
「心ばかり」や類語の英語表現には、文例のようにさまざまものがあります。ビジネスシーンで使うことが多い「心ばかりですがお礼としてお受け取りください」は、英語で「beg you will accept a mere token of my gratitude.」と表現できますので覚えておくと便利ですよ。
最後に
「心ばかり」という言葉は、どんなときでも使える表現ではないということを覚えておきましょう。贈り物をする相手の性格や自分との関係性などを考慮して、「心ばかりの品ではございますが〜」と使うようにしてくださいね。
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