私たち、プラスチックを食べてる!?
SDGsやパリ協定など「環境」が政治でも経済でも課題の中心となっていますね。アメリカ大統領選もひとまず決着がつき、「環境」は今後ますます重要視されてくるでしょう。
そんな今だからこそ、海洋プラスチック問題について。今回は「パタゴニア」の洗濯バッグ「グッピーフレンド・ウォッシング・バッグ」を通して、ファッションと海洋汚染について考えてみたいと思います。
海洋汚染としては、ペットボトルやプラスチックゴミが主に取りざたされています。捨てられたプラスチックが雨や風で流され、河や海岸から海に流れ出て海洋を汚染し、砕かれて細かくなったマイクロプラスチック(微小なプラスチック粒子)は、海洋生物の生態系まで影響する。それが「海洋プラスチック汚染」です。
この問題についてとても分かりやすかった、千葉商科大学公式サイトのコラムを一部抜粋して紹介します。
「海の生物がエサと間違ってマイクロプラスチックを食べてしまうと、炎症反応、摂食障害などにつながる場合があることがわかっています。また、マイクロプラスチックを摂取したプランクトンを小魚が食べ、中型の魚が小魚を食べ、さらに大型の魚が中型の魚を食べ… という食物連鎖を通じて、有害化学物質が生き物の体内に蓄積する可能性も懸念されています。
これは、海の生物を食べる人間にも言えることです。人間が魚介類を通してプラスチックを食べても、プラスチック自体は排泄されますが、有害化学物質は体内に蓄積される可能性があり、ガンの発生や免疫力低下を引き起こすと考えられています。また、プラスチックには「環境ホルモン」作用がある物質が含まれており、生殖能力の低下などの作用を及ぼす可能性が指摘されています(千葉商科大学公式サイト内MIRAI Timesより)」。
プラスチック食べてますね。私たち。
☆以下のサイトで海洋プラスチック汚染について詳しく説明されています。ご興味のある方はぜひチェックしてください。
千葉商科大学MIRAI Times
世界経済フォーラムJapan
◆化学繊維を洗濯すると、マイクロファイバーが抜け落ちる!?
私たちが毎日着ている合成化学繊維を洗濯することで、繊維状の「マイクロファイバー」が下水を通して海に流出していることが分かり、マイクロプラスチック汚染の一因として大きな問題となっています。
2016年、日本で開催されたG7でその脅威が認識されたのですが、ファッション業界で長く仕事をしてきて、まさか化繊の洗濯が海洋汚染の要因になっているなんて想像もしていませんでした。
そのような中の2018年3月、パタゴニアが、洗濯中のマイクロファイバーの流出を大幅に削減する洗濯バッグ「GUPPYFRIEND ウォッシング・バッグ」の日本発売を開始しました。
このバッグはサーファーと自然愛好家のグループでドイツ・ベルリンを拠点とする非営利団体「LANGBRETT」によって発足した「STOP! MICRO WASTE」によって製造され、パタゴニアは同社をパートナー企業として直営店とオンラインストアで販売しています。
効果として化繊の衣類をウォッシング・バッグに入れて手洗いするか洗濯機で洗うことで、洗濯時に抜け落ちる非常に細かなマイクロファイバー集め、柔らかな表面が繊維の抜け落ちを抑え、その結果、衣類の寿命を延ばすと共にマイクロファイバーの流出を大幅に減らすそうです。製品寿命を延ばすこともサステナブルなことですから、一挙両得ですね^^
私も半年ほど前から使用しています。フリース素材を入れると、洗濯後に袋内に繊維のゴミが残り、目に見えて「マイクロファイバーの流出を防げた」と実感できますが、目の詰まった化繊、ナイロンやアクリル、ポリエステルだと繊維のゴミはほぼ目視できません。見えないから「マイクロ」な訳で…。
私は、毎回の洗濯を天然繊維と化繊で分け、化繊をこのウォッシング・バッグに詰めて洗濯機を回しています。この大きさ(50×70cm)なので、大きなクロスなどもOKです。
ワンサイズで税込み4,070円。決してお安い洗濯バッグではありません。でも凄く丈夫そうなので、私は衣類の洗濯による海洋汚染問題が解決されるまで、長く使いたいと思います。
パタゴニアのサイトに、マイクロファイバー汚染について私たちができることがまとめられていました。
要約すると…
✔︎ 化繊の衣類をウォッシング・バッグに入れて手洗いするか洗濯機で洗う
✔︎ 高品質の製品を購入する(低品質のフリースはより大量の繊維が抜け落ちる為)
✔︎ 洗濯の回数を減らし、ドラム式洗濯機を選ぶ(縦型洗濯機で洗った化繊のジャケットは、ドラム式洗濯機に比べ繊維の抜け落ちが5倍に)
✔︎ 汚れが付いたら洗濯機で洗うのでなく、出来るだけ布やスポンジで汚れを落とす
海を守るためにすぐできる、アクションですね。
パタゴニア公式サイト マイクロファイバー 解決のポイントより
◆サステナブルなアクション|まずは出来ることから始めてみる!
実は今回、このウォッシング・バッグを紹介したのにはワケがあります。
前述した通り私はファッション業界で長く仕事をしてきて、まさか化繊の洗濯が海洋汚染の要因になっているなんて本当にショックでした。それはファッション・繊維産業に関わる人たち共通の気持ちだと思います。
だからこそ今、さまざまな国の企業やブランドが、環境に良いもの作りに向けて猛スピードで取り組んでいます。プラダのバッグコレクション「Re-Nylon」は、海洋プラスチックから製造した再生ナイロンを使用、同じくH&Mも海洋プラスチックから再生した素材でウェアやシューズを作るなどのアクションがおこなわれています。
ファッションや生活雑貨でブランディングコーチを務める私の仕事も「サステナブル」な知見は、今もっとも重要なこと。そんな中、サーキュラーエコノミーや素材のプロと打ち合わせをしていた時に「化学繊維の洗濯時のマイクロプラスチック汚染では、今はまだ、パタゴニアのグッピーフレンドウォッシング・バッグ以上の効果のあるものは存在しない」と言われたんです。
発売から2年以上過ぎても一択だと。それだけ凄い商品なのだと改めて実感し、今回ご紹介しました。
ファッション・繊維産業は今、化繊でないサステナブルな素材の開発が盛んです。でもまだまだ新素材は高い。これから、新開発素材も含めて地球に優しい素材のニーズが高まることで、もっと身近な価格になっていくと思います。
現在は、すべての生活用品が地球に優しいモノづくりとなる時代までの過渡期です。何が1番で何が2番ではなく、自分で出来るサステナブルなアクションやチョイスをひとつずつ、今日から始めてみませんか?
*サステナブルファッションのテーマでは、再生してゴミにしない「サーキュラーエコノミー」について2020年9月に書いています。
▶︎おしゃれが好き! ファッションが好き! ならば実践すべきサーキュラー・エコノミーって?
大島文子 BLOOM&GROW INC 代表取締役/ブランディングコーチ
日本発ブランド及びセレクトショップのブランディングや広告宣伝・マーケティング担当に長らく従事。ファッション分野にとどまらずライフスタイル雑貨・ショップ等をプロデュースする。2016年、大人女子に素敵な時間を提供するブランド育成のための、ブランディング&プロモーションコンサルティング会社 (株)ブルーム&グローを設立。
宝塚歌劇とコスメ、美味しいモノが趣味。インスタグラムはこちら。