【目次】
・「陳謝」の意味とは?
・「陳謝」と「謝罪」の違い
・「陳謝」と「深謝」の違い
・「陳謝」の使い方を例文でチェック
・最後に
「陳謝」の意味とは?
「陳謝いたします」と頭(こうべ)を垂れる姿、テレビニュース等でご覧になったことがあると思います。さて、あなたは「陳謝」の意味、ご存知でしょうか?
もし、あなたが「陳謝されている側の人」だとして、「陳謝」の意味が分かっていなければ、相手が本当に「陳謝」しているかどうかが判断できないことになります。もしかすると、相手は「陳謝」という言葉の意味を知らないままに、「陳謝します」と言っている可能性だってあるわけですよね。
この記事を通して、どういう態度が「陳謝」なのをよく理解して、あなた自身も正しい使い方ができるようになっていただきたいと思います。
「陳謝」の読み方は「ちんしゃ」。それぞれの漢字を、分解して説明しましょう。
【陳】は、音読みにすると「チン」、訓読みにすると「つらねる、ならべる、のべる」。「陳」は、「述べること」を意味します。
【謝】は、音読みにすると「シャ」と読み、訓読みにすると「あやまる」と読みます。「謝」は、「あやまること、お詫びすること」を意味します。
従って「陳謝(ちんしゃ)」とは、「事情を述べて、あやまること」という意味になります。ですから、「お詫びします」とか「申し訳ありません」などと、ただ謝ることは「陳謝」とは言いません。必ず、謝る理由、事情などの説明がなければ「陳謝」したことにはならないのです。
「陳謝」と「謝罪」の違い
「陳謝します」と「謝罪します」は何が違うのでしょうか? どちらにも、「謝」という漢字が含まれているので「詫びる」ための言葉です。「陳謝」と「謝罪」を個別に解説いたします。
【陳謝】は、ある物事について事情や訳を述べた上で、詫びることを意味します。
【謝罪】は、犯した過ちや罪を認めて、素直に詫びることを意味します。
それでは、「陳謝」と「謝罪」の違いを具体的に示してみましょう。例えば、あなたは友達と待ち合わせの約束をしたとします。しかし、1時間以上も遅れてしまい友人にお詫びをする時を例に説明します。
【陳謝の例】:電車の事故が起きてしまい、その影響で約束の時間に遅れてしまいました。本当に申し訳ありません。
【謝罪の例】:待ち合わせの時間に遅れ、すみません。
「陳謝」は、待ち合わせ時刻に遅れた理由や事情を説明した上で、お詫びしています。それに対して、「謝罪」は待ち合わせ時刻に遅れたことについてのみ、お詫びをするかたちです。違いについてご理解いただけたでしょうか?
「陳謝」と「深謝」の違い
「陳謝」と「深謝(しんしゃ)」。音の響きが似ていますが、何が違うのでしょうか? 「深謝」は「心から詫びること」という意味もありますが、「心から感謝すること」という意味も持っています。この点が異なりますね。また、「深謝」には、上記で説明した「謝罪」と同様に、理由や事情の説明は含まれません。
【深謝】は、通常よりも強い謝罪の気持ちを表します。ですから、ビジネスシーンなどで深い反省を伝えたい時には、「深謝」をご活用ください。
【深謝の例】:御社に多大なるご迷惑をおかけしたことを深謝いたします。
「陳謝」の使い方を例文でチェック
お詫びするにしても、事情や理由、原因をしっかりと説明した上で、お詫びする方が誠意が伝わるでしょう。ビジネスでの使い方を含め、具体的な例をあげて「陳謝」の用例を説明いたします。
1:「今回の事故は、整備点検を怠ったために起こった人為的なミスによるものです。心より陳謝いたします」
事故やトラブルが発生した時など、その原因を説明するとともに、お詫びする内容になります。事故やトラブルに関してお詫びする場合は、ただ謝罪するだけでは被害者は納得できませんので、発生原因について開示、説明することが必要になります。
2:「今回の過労死問題について企業側は陳謝したが、その内容は不十分と言わざるを得ない」
職場などで不祥事が起こった場合、必ず記者会見などが開かれますが、その原因や理由が開示されないケースが多いようです。こうした場合、「陳謝」を使うのは不適切な使い方になります。
3:「この度の食品表示の誤りは、当社の管理不行き届きによるものです。ご迷惑をおかけしましたことを深く陳謝いたします」
業務上の不手際や管理不足によって、発生した諸問題に対してお詫びをする場合の使用例になります。こうした場合も、問題点や責任の所在を明確にした上で、お詫びをする必要があります。
最後に
いかがでしたか?「陳謝」の意味、使い方はご理解いただけたでしょうか? 社会人として、あるいは企業人として、言葉と態度を一致させることは、とても大切なことではないでしょうか。そのためには、使う言葉の意味、使い方はしっかりと理解しておく必要があると思います。
時々、言葉を「音」として覚えているだけで、意味を理解しないままに使っている人を見かける事があります。そのような人は、言葉の意味を調べたり、確認もせず「人真似」をして、言葉を使っている事が多いようです。新しく聞き覚えた言葉は、必ず辞書を読んで意味や用法を確認した上で、使うようにしましょう。
TOP画像/(c)Shutterstock.com