新型コロナウイルスの抗体検査2
今回は、「新型コロナウイルスの抗体検査」の第2回目を届けします。
奇しくも、このコラムの原稿を書いている2020年6月16日に、厚生労働省が、「新型コロナ抗体保有率 東京 0.1%」という報告をしました。
すごくタイムリーですので、この「厚労省の報告に関する意味」を前回のコラムをおさらいしながらわかりやすく解説しようと思います。
◆新型コロナ抗体保有率
前回のコラムで、お伝えしたかったことは、
1. 信頼できる「新型コロナウイルス抗体検査」はまだない
2. 「新型コロナウイルス抗体」が体内にできているからといって、新型コロナウイルスに強い体になっているかは、まだ誰にもわからない
「まだ、ない」とか「まだ、わからない」という歯切れの悪い言い方しかできない理由は、新型コロナウイルスが「全く新しいウイルス(新型)」だからなのです。
こうした背景を前提に、「新型コロナ抗体保有率 東京 0.1%」を紐解いていきましょう。この文章を、もっとわかりやすく言い換えると、
「新型コロナウイルス抗体検査が陽性のヒトは東京では1000人に1人」ということになります。
では、新型コロナウイルス抗体検査では陽性が好ましいのか、陰性が好ましいのか? 皆さんは、どう思いますか? あるいは、どっちがいいですか?
風疹のような病気の場合は、「抗体が陽性」なら「もうその病気には2度とかからない」ことを意味しますから、「陽性の方が好ましい、安心、安全」といえます。
でも、新型コロナウイルスの場合は、インフルエンザウイルスなどと同じように、たとえ「新型コロナウイルス抗体検査が陽性」であっても、「また次にもかかるかもしれません」。「抗体検査が陽性」であることに、まだ、「安全とか安心」がついてくるかどうかもわかっていません。
では、「東京では1000人に1人が陽性で、999人は陰性」ということからいえることは何か?
1. 「陽性でも、決して安心してはいけない」し、「陰性でも何も心配する必要はありません」。
こう書くと「やっぱり陽性であることにこしたことはないの?」と思うヒトもいるかも知れませんが、決してそんなことはありません。「そもそも抗体検査自体に何の意味もない」という結論になり、今後、抗体検査自体をやめちゃう可能性だって相当にあります。
2. 今、国は、「本当に信頼できる新型コロナウイルス抗体検査」を一生懸命に探している途中です。
自分も含めてですが、多くの人が想像しているほどまでには、まだまだ研究は進んでいないんです。
では、次回は、「日常生活での実際のコロナ関連検査、どうすればいいのか?」について書こうと思います。
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国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長 増富健吉
1995年 金沢大学医学部卒業、2000年 医学博士。
2001年-2007年 ハーバード大学医学部Dana-Farber癌研究所。2007年より現職。
専門は、分子腫瘍学、RNA生物学および内科学。がん細胞の増殖と、コロナウイルスを含むRNAウイルスの増殖に共通の仕組みがあることを突き止めており、双方に効く治療薬の開発が可能かもしれないと考えている。
専門分野:分子腫瘍学、RNAウイルス学、RNAの生化学、内科学。
趣味:筋トレ