新型コロナウイルスの抗体検査
新型コロナウイルス感染拡大がなんとか落ち着き、国は少しずつ生活を元に戻して行くそうです。それに伴い、質問されることが増えてきたのが、「新型コロナウイルスの抗体検査」。依然として、皆さん、新型コロナウイルスに対する「安心」と「安全」を模索しているのだと思います。今日は、「抗原」なのか「抗体」なのか、本当にややこしい話を2〜3回に分けて説明しようと思います。
一般の方達には、「抗原」検査も「抗体」検査でもどうでもいい、もっと言えば、何でもいいから、はやく、「安心」と「安全」をといったところですか。
◆「抗原」と「抗体」
まずは、花粉症を例にして、「抗原」と「抗体」の話をしようと思います。
花粉症では、
抗原:花粉
抗体:くしゃみや涙ぼろぼろ(抗体によって引き起こされる生体反応)
それでは、「新型コロナウイルス感染」で同じことを考えてみると、
抗原:新型コロナウイルス
抗体:新型コロナウイルスに強い体
ということになります。ですから、「抗原検査」といえば「新型コロナウイルスが現時点で体にいるかどうか」ということになるし、「抗体検査」といえば「新型コロナウイルスに対して強い体になっているかどうか」を検査しています。
ただ、注意が必要なのは、本日現在(2020年6月時点で)、信頼できる新型コロナウイルス「抗体検査」がまだないということ。あと、たとえ体に「抗体」ができていても、新型コロナウイルスに2度とかからないかどうかはまだ誰にもわかりません。
よく知られた、インフルエンザウイルスと風疹を例にしてもう少し説明しておきます。
抗原:インフルエンザウイルス
抗体:インフルエンザウイルスに強い体
このウイルスに対して、毎年秋から冬にかけて、予防注射をしますよね。その理由は、抗体が体にできても、抗体の効き目が長続きしない、とか、ウイルスのタイプが少し変化してると、抗体の効き目がないからなんです。実際、インフルエンザには一生で何回もかかりますよね。
では、もう一つの、風疹はどうでしょうか?
抗原:風疹ウイルス
抗体:風疹ウイルスに強い体
風疹ウイルスの場合は、一度、風疹にかかるか、予防注射でしっかりとした抗体ができると、基本的にはもう二度と風疹にはかかりません(こういうのを、終生免疫といいます)。
新型コロナウイルスがどちらのタイプのウイルスかはまだ誰にもわかりませんが、きっと、インフルエンザウイルスと同じようなタイプだと予想されています。
次回は、「新型コロナウイルス抗体検査の陰性と陽性の意味」などについて、もう少し詳しく説明しようと思います。
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国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長 増富健吉
1995年 金沢大学医学部卒業、2000年 医学博士。
2001年-2007年 ハーバード大学医学部Dana-Farber癌研究所。2007年より現職。
専門は、分子腫瘍学、RNA生物学および内科学。がん細胞の増殖と、コロナウイルスを含むRNAウイルスの増殖に共通の仕組みがあることを突き止めており、双方に効く治療薬の開発が可能かもしれないと考えている。
専門分野:分子腫瘍学、RNAウイルス学、RNAの生化学、内科学。
趣味:筋トレ