ウイルスマニアの“ウイルスコラム”シリーズ vol.1
新型コロナウイルスの影響で、自然とウイルスの話をするようになった昨今。ウイルスマニアの自分的には、ある意味苦しい毎日が続いています。ウイルスについての誤解や日本語の誤用について、気になってしまってしょうがないのです。
みなさんが恥ずかしい目にあわないよう、今回はありがちなウイルスに関する日本語の誤用をピックアップしてご紹介します。
◆ウイルスは、ばい菌の一種?
ウイルスは小さくて感染すると病気になるというイメージから、ばい菌(細菌、バクテリア)とよく混同されます。
新橋のSL広場辺りで「ウイルスはばい菌の一種である、○か×か?」というアンケートを取ったら、きっと半数以上の人が、「○」と回答するのではないかと思います。がしかし、ウイルスと細菌は相違点もあるものの、実はまったく違う存在です。ウイルスは「菌」ではないのです。
◆ウイルスと細菌の違い
ウイルスと細菌の一番の違いは、細菌には代謝をするための機能があるけれど、ウイルスにはそれがないというところです。代謝とは「栄養(材料)となるものから生命活動のために使うエネルギーを作る一連の流れ」のことです。
簡単に言うと、食事・呼吸・うんち、植物ならば光合成、こういったものが代謝と呼ばれる働きです。代謝の機構がない分、ウイルスは身軽なので、一部例外もあるものの、平均的に細菌よりもサイズが小さく、体のつくりも単純になります。
また、細菌は、細胞を守るための細胞壁、細胞膜を持っていますが、ウイルスは細胞壁、細胞膜はなく、代わりに脂質でできたエンベローブやタンパク質でできたカプシドという膜を持っています。
◆あなたも使っていませんか? こんな日本語
さて、以上のようにウイルスと細菌は似て非なるものであるにもかかわらず、ウイルスを細菌の一種だと勘違いしているせいで、次のようなおかしな日本語を使ってしまう人をたまに見かけます。
【誤用例】
「アルコールでちゃんとコロナ除菌してね!」
「私、インフル保菌してそうだから、今日会えない」
しつこいようですが、ウイルスはそもそも菌ではないので、「除菌」も「保菌」もおかしいのです。こんな言い回しをして恥をかかないように気をつけたいものですね。
ちなみに消毒液などでウイルスを退治することを一般的に「殺ウイルス」と言うのですが、ここでまたひとつ問題があります。
なんとウイルスとは、学術上、「生物」の定義から外れており、「非生物」扱いなんです。そう! ウイルスって生き物じゃないんですよ。なんかオドロキじゃないでしょうか。このため、そもそも生きていないのなら殺すこともできないので、「殺ウイルス」という言い方もおかしいことになります。なんか考えさせられますね。
ウイルスが生物ではないという話は、次回解説していきます。
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いけのり
最先端のアストロバイオロジーを世界一緩く解説する『YouもMeも宇宙人』(地湧社)著者。一橋大学商学部卒業後、金融会社・楽天市場を経て独立し、オールジャンルでの執筆・編集業などで活動中。独り言サイト「いけのり通信」の更新がライフワーク。