発症した場合には、できるだけ早く応急処置を行うことが重要
記録的な暑さに見舞われた令和元年の5月を終え、これから訪れる夏の暑さを想像すると気分が重くなる人も多いのではないでしょうか?
夏に特に注意しなければならない熱中症は、全ての年代の人に発症する危険があり、中には死に至るようなケースもあります。
熱中症は予防対策をしっかり行うことも大切ですが、万が一発症してしまった場合には、できるだけ早く応急処置を行うことも非常に重要です。
【目次】
・【熱中症】時に頭痛薬を飲んでいいの?
・【熱中症 頭痛】治し方、対処法は?
・【熱中症 頭痛】長引いて続く…。治らないときは、どうしたら?
・【熱中症 頭痛】吐き気も同時に起きているときは?
【熱中症】時に頭痛薬を飲んでいいの?
熱中症とは、長時間にわたって気温や湿度が高い環境の中にいることで、体温が上昇したり、大量の発汗に伴って体内の水分や電解質が失われる病気です。
熱中症は、重症度によって3つの段階に分けられる
発症初期の段階を「Ⅰ度」
Ⅰ度では、水分不足によって脳への血流が低下したり、電解質バランスが乱れることで立ちくらみ・こむら返りなどの症状が引き起こされ、失神を生じることもあります。
進行した熱中症は「Ⅱ度」
脱水状態がさらに進むことで血圧や血流量が低下し、倦怠感や脱力感、吐き気、頭痛などの症状が引き起こされます。
死の危険もある「Ⅲ度」
意識障害やけいれん、肝機能障害、腎機能障害などが生じ、死に至る危険も高まってきます。
頭痛は中等症であるⅡ度の熱中症で見られる症状
頭痛を伴う熱中症は一刻も早い対処が必要です。
熱中症で頭痛が生じるメカニズムは明確に解明されてない部分もありますが、脱水による血流量の低下によって脳が酸欠状態となること、血管が拡張することで周辺を走行する神経を刺激することなどが挙げられます。
市販の頭痛薬を服用しても、効果は低い
このため、熱中症に伴う頭痛に対して市販の頭痛薬を服用しても、効果は低いと考えられます。また、頭痛薬の中には一時的に血圧を下げる作用を有するものもあり、かえって頭痛を悪化させてしまうケースも少なくありませんので注意しましょう。
もし、市販の頭痛薬を服用してしまったときは、電解質が含まれた水分を多く摂って様子を見て、頭痛の増強や他の症状が現れた場合はできるだけはやく病院で治療を受けるようにしましょう。
【熱中症 頭痛】治し方、対処法は?
熱疲労も熱射病と同じく、熱中症の一つのタイプ
熱中症による頭痛が疑われる場合には、上でも述べた通り早急な対応が必要となります。
まずは涼しく風通しのよい場所へ移動し、脇の下や首、足の付け根など太い血管が通っている部位を氷水などで冷やしましょう。
この際、衣類が汗でびっしょり濡れているときは、身体からの放熱を妨げてしまう可能性がありますので、衣類は脱いで汗をタオルでふき取るのもポイントです。そして、電解質が含まれた経口補水液やスポーツドリンクなどをできるだけ多く摂るようにしましょう。
冷やしたタオルで応急処置を
頭痛がひどい場合には、これらの応急処置とともによく冷やしたタオルでズキズキと痛む部位を冷やすと痛みが和らぐことがあります。
多くのケースでは、これらの応急処置を行うことで頭痛などの症状を改善することができます。しかし、いつまでも症状がよくならない場合や、吐き気などのために十分な水分を摂れない場合は、病院での治療が必要となることもありますので、身体を冷やした状態で病院を受診するようにしましょう。
【熱中症 頭痛】長引いて続く…。治らないときは、どうしたら?
熱中症による頭痛は非常に危険な状態であるサイン
身体を冷やす・水分をたっぷり飲む、などの応急処置を行ってもなかなか改善しない場合は、セルフケアのみでは対応できない水分や電解質の喪失が生じている可能性が考えられます。
また、珍しいケースではありますが、Ⅲ度に進行すると血液を固まらせる仕組みが上手く働くなることがあり、それが原因となって脳出血を引き起こすこともあります。特に、普段から高血圧を指摘されている人や、長年喫煙を続けてきた人は注意が必要です。
さらに、若い女性に多い片頭痛は、水分不足が刺激になって頭痛発作を引き起こすことも。応急処置で吐き気やめまいなど他の症状は改善されたものの、頭痛のみが頑固に続いている場合もできるだけ早く病院を受診しましょう。
【熱中症 頭痛】吐き気も同時に起きているときは?
吐き気が伴う熱中症の頭痛も注意しなければならない症状の一つです。
熱中症による吐き気はⅡ度の代表的な症状
胃や腸の運動が低下し、消化不良を引き起こすことによって引き起こされると考えられています。このため、吐き気が同時に起きている場合は、むやみに水分を飲むと吐き気を増強させるだけでなく、嘔吐を誘発することも少なくありません。速やかに水分不足を改善するには、病院での点滴治療が必要ですので、なるべく早めに受診して治療を受けるようにしましょう。
また、吐き気は重症な熱中症による脳出血でも引き起こされます。とくに、突然の頭痛と吐き気が現れた場合は脳出血の可能性も考えられますので注意が必要です。
成田亜希子先生
一般内科医。プライベートでは二児の母。
保健所勤務経験もあり、医療行政や母子保健、感染症に詳しい。
国立医療科学院などでの研修も積む。
日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会所属。