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美しい日本語編「かしこまりました」
昨今、上司や先輩から指示を受けて「わかりました」の代わりに「了解しました」と応じる人が増えているといわれています。そして、その言葉を聞くたびに、苦い顔をする上司や先輩もまた少なくないようです。
実際、近年刊行されたビジネスマナーの本などでは「目上の人に遣うのは失礼にあたる」と断定しているものがあります。
「了解」には「さとること」「わかること」「承知すること」の意味がありますから、そこに「しました」と付け加えれば少なからず敬語の意味はあると考えてもいいのかもしれません。
くわしい経緯はハッキリしていないものの、「了解(しました)」が、広く一般に遣われるようになったのは、PCや携帯電話・スマホのメールが普及するようになってからというのが定説です。また、ある程度、この言葉が遣われるようになってから「『了解しました』を目上の人に遣うのは失礼にあたる」というビジネスマナーが新たに付け加えられたというのが事の真相のようです。
しかし、一旦「失礼だ」というマナーができてしまったからには、「本来は失礼ではないのに」と言い逃れても無意味です。現に「了解=ビジネスマナー違反」と認識している人が相当数いるはずなので、下手に遣わないのができる女といえるでしょう。
でも「わかりました」ではツマラナイ……そう思う人は「かしこまりました」と応じてみるのはどうでしょうか。
「承知しました」「承知いたしました」という言葉も、丁寧な言い回しですが、語彙本来の意味としては「了解」とそれほど大きな差はありません。ただ、「承知」には「わかること」の他に「聞き入れること」のニュアンスがあり、ここから「了解<承知」の序列が出てくるのです。
さて、本題となる「かしこまりました」です。「かしこまる(畏まる)」という言葉には「目上の人に対しておそれうやまう」という意味があります。こうした前提の上で「かしこまりました」は、「命令や依頼などを謹んで承る」ということになるわけですね。
実際のところ、「わかりました」の代わりに「承知いたしました」を遣う人は珍しいものではありません。ただ、その一段上ともいえる「かしこまりました」を使いこなせる人はまれ。
若干、堅苦しい感じもしますが、周囲もいつかは慣れるもの。つかい続けていけば、きれいな日本語を話す人と認識されるのではないでしょうか。
余談ですが、「了解」を日常的に遣っているのが自衛隊。その中では、さらに簡略化して「了!」と応えるケースもあるとか。もちろん、自衛隊の中では「失礼」な言葉ではないようです。
田中 裕
ライター。学生時代からあちこちに書き散らしてきたものの、売れっ子扱いされたことは皆無。活動領域は政治と最新ファッション以外ほぼ全部。経営ネタも学術ネタもオタ関連も網羅。器用? ゆえに貧乏。