女子のひと言「そこ行ってみたーい♥ 連れてって連れてって!」
──そのとき男は? 男の脳内妄想を解体します
チマタに出回る恋愛指南書には、「女性が示す“今夜はOK”サイン」なる項目が高い頻度で見受けられますが、これってホントのことなのでしょうか。
たとえば「見つめる時間がやけに長い」。
古くは「秋波を送る」と表現された典型的な男性に対するサインです。知らない人は、その辺のおじ様にでも聞いてください。
ちなみに秋波とは「秋の澄んだ水」のこと。中国では、その涼しげな様に「美人の視線」の意味を持たせ、転じて媚びを売る様子としたわけですね。たしかに「目は口ほどにものをいう」というだけあって効果は絶大……のはずですが、それだけですべてが上手くいくと考えるのは早計というもの。鈍感な男性は真意を気づいてくれないことも多く、かえってフラストレーションが溜まることもあるでしょう。あるいは「あの子、いつも俺のこと睨んでくるんだけど……」と警戒されることだって。
一方、世の男性の中には頻繁に視線が合うだけで「自分に惚れてる!」と勘違いする人が少なくないというのもまた事実。
これは、とあるフリー編集者の女性のケース。幼い頃から父親に「人と話すときは、きちんと相手の目を見なさい」と躾けられてきた彼女は、アラサー目前の今日に至るまで、ずっと父の教えを守り続けてきました。ただ見つめ方のレベルがちょっと度を超えていたのでしょう。学生時代から、まったくそのつもりのない相手からアプローチされた経験が両手に余るほどあったとか。幾度となく唐突な告白を受け、その都度面食らって「ごめんなさい」と相手を撃沈してきた彼女が、その原因を悟ったのはつい最近のことだとか。
回りくどいので、ハッキリいいましょう。
恋のはじまりに勘違いは付き物。それは女性も例外ではありませんが、男性の勘違いは女性よりずっと多く、時に深刻なトラブルさえ引き起こしてしまうのです。
男の勘違いを誘発するキーワード「行ってみたい」「連れてって」何気なく口走るべからず
アナタが何気なく口走った、その言葉。
他意のない一言が、相手をその気にさせていないとも限りませんよ。
たとえばこんなケース。仕事で付き合いのある同世代の男性が、休憩中の雑談で「うちの近くにすごく居心地の良い小料理屋を見つけたんだ。ぱっと見、いかにも高級って感じなんだけど、意外にもリーズナブルで、ここのとこ通い続けているんだよね」などと語っていたとしましょうか。
フムフム、それはいい話を聞いた! 奇遇にも彼とは同じ沿線。ワタシも落ち着いた小料理屋でちょっと一杯ってのを経験してみたいし、話の通りリーズナブルだとしたら常連になってみたいな……などと瞬時に思い描いたアナタ。口をついて出てきたひと言。
「そこ行ってみたーい♥ 連れてって連れてって!」
先にお断りしておきますが、「居心地の良い小料理屋の発見者」に好意を以上の感情を持っているなら、そのまま押し通してくださって結構! 初回はデートとまではいかないものの、頻繁に会う口実を作る絶好のチャンスです。あとは押して押して押しまくってくださいまし(限度ってものはありますけどね)。
ただ! 「連れてって」という一言がその店に対する純粋な興味から発せられたものだったり、あるいは単なる社交辞令だったとしたら要注意です。端的にいって、その男性に異性としての興味が微塵もなかった場合は、これ以上罪作りな不作為はないと断言したって構いません。
正直に申しましょう。「行ってみたい」「連れてって」は、男性の勘違いを誘発するキーワードです!
浮かれた男性の何割かは、その言葉にいらぬ一言を付け加えます。
「(アナタと)行ってみたい」
「(ワタシだけを)連れてって」
運良くその男性が、アナタ同様、異性としての興味をまったく、あるいはほとんど持っておらず(それはそれで悔しいなどと言わぬように)、しかも察しが良いタイプだとすれば、細心の注意を払って、共通の知人を誘うといった対策を思いつくかもしれません。それなら結構。アナタは面倒な色恋沙汰に巻き込まれず、しかも、男女の友情を確認することになるのです。仕事の付き合いがあるとすれば、これはこれでメリットになるかもしれません。
そうじゃなかった場合、バツの悪い思いをするだけでなく、せっかく良好だった関係にヒビが入ることもあるかもしれません。
男性の多くは、女性の可愛さに惹かれますが、その中に「無邪気さ」というものが含まれていることを自覚しましょう。意図的にそれを武器にするならば話は別ですが、無邪気に現れてしまう「無邪気さ」は、時として望まぬ恋の駆け引きに直結することもあるのです。
もし、アナタが先の小料理屋に本気で興味があり、なおかつ連れて行ってくれるその男性に異性としての興味がないときは、
「行ってみたい! 今度みんなと一緒に行きませんか?」
と言い換えるだけの配慮というものが必要です。「みんなと」とたったひと言添えるだけ。それが淑女の嗜みというものではないでしょうか。
田中 裕
ライター。学生時代からあちこちに書き散らしてきたものの、売れっ子扱いされたことは皆無。活動領域は政治と最新ファッション以外ほぼ全部。経営ネタも学術ネタもオタ関連も網羅。器用? ゆえに貧乏。