「セックスレス」の定義は?
「セックスレス」の言葉の定義は、「特殊な事情が認められないにもかかわらず、カップルの合意した性交あるいは性的接触が1か月以上ないこと」(1994年日本性科学会により定義)。
結婚や出産などのライフイベントなど、きっかけが明らかでセックスレスになったということもあれば、明確な理由が見当たらないこともあります。この定義に当てはめると、日本家族計画協会による「第8回男女の生活と意識に関する調査(2016年度)」では、47.2% の夫婦がセックスレスにあたるということです。
「セックスレス」が悩みとなる理由を探る
思いのほか、多くのカップルがセックスレスにあたる様子。とはいえ、セクシャルな話は極めて個人的なもの。セックスレスであっても気にならないという人もいれば、とても深刻な悩みとなってしまうこともあります。きわめて個人的なこの問題。大きく3つに分けられそうです。セックスレスの悩みを持っているのだとしたら、どれが当てはまるのかを考えてみることで、自分自身に向き合うことができます。
1:自分のライフプランに直結する
自分の望むライフプランを考える時に、「子供を生み育てる」ということに価値を置いているとした場合。セックスレスになることで、その望みが叶えられないということになります。
2:行為そのものではなく、パートナーとの関係性への不安
セックスはコミュニケーション手段のひとつ。行為そのものではなく、レス状態が続くことで、コミュニケーション不足となり、不安や不満が生じます。疑心暗鬼になってしまうことで、パートナー間の信頼関係を揺るがすことにもつながりかねません。
3:欲求が満たされないことへの不満
「食欲」「睡眠欲」に続き、「性欲」は本能における三大欲求です。食べたいのに食べられない、眠りたいのに眠れないことと同様に、不全感を持ち不満を感じることは自然なことでもあります。とはいえ「女性と性欲」に関しては強固なアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)もあり、不満を持っていることを表明できないことが、さらに悩みを深めることもあります。
パートナーと話し合う前に確認すること
セックスレスは、世の中の情報としてはよく目にするもの。それまでは気にしていなかったのに、そんな情報にふれたときに「そういえば… 」と自分にも当てはまることに気づき、不安になるケースが多いのです。気をつけなければいけないのは、そのような情報に振り回されないようにすること。
セクシャルなことは極めて個人的なことであり、自分とパートナーとの関係性において唯一無二で出来上がっていくこと。誰かや何かと比べて判断するものではないということです。
とはいえ、パートナーとの関係性の中で、セックスレスであることに辛さを感じたとき。自分だけが我慢をして悩んでいることが耐えられず、話し合いをしたいという気持ちも出てきますよね。そこで、パートナーと話し合う前に、確認をしておくことがあります。
1:自分を見つめ直す
実は、パートナーと話し合ったからといって、必ずしも「セックスレスの解消」に結びつかないこともあります。パートナーは、レスだと感じていなかったり、セクシャルな関係性が無くても満足しているというケースも。話題に上がったことで、かえってギクシャクしてしまうこともありえます。
話し合いをする前に、「自分はどのような状態になれば気が済むのだろう」ということを考えてみましょう。セックスはコミュニケーション手段のひとつ。「行為のあり・無し」そのものが悩みのモトではないことも。
話し合いでは、「セックスレスの解消」だけを目的にせず、相手に自分の不安や不満を理解してもらうことや、自分が納得できる情報を得るということも視野に入れてみては? 「自分は何を嫌だと思っているのだろう」「自分は何を大事にしたいと思っているのだろう」というように、自分自身の価値観や考え方などを見つめ直すことが必要です。
2:パートナーを尊重する
パートナーがいるからこその悩みでもあり、当然パートナー側にもいろいろな思いや状況があります。もしかしたら、自分とは相容れないことが出てくるかもしれません。話し合いをする際には、そんな覚悟も持ちながら、相手の価値観や意見を尊重し、状況を理解することが重要です。
パートナーが言うことが、理解ができない・共感ができないときには、どちらが正しいとか間違っているというのではなく、「私とは違う思いや考えを持っているのだな」と思うこと。違いを持っていながらも、お互い歩み寄ることはできます。それが「話し合う」ということです。
そして、話し合いの際には、相手に対して攻撃的な言葉を使わないように意識をしておきます。
言いづらいことを適切に伝える方法は?
話し合いの場では、「相手の意見を尊重する」「自分自身の気持ちを正直に伝える」「相手に対して攻撃的な言葉を使わない」ことが大切です。言いづらいことを適切に伝える話法として「DESC法」というものがあります。次の流れで話を切り出すことで、自分の気持ちなどを適切に伝えつつ、パートナーに話をしてもらうことを促すことができますよ。
1:Describe 事実を伝える
解決したいことに対して、現在の状況を客観的に描写をし、事実のみを伝えます。ここでは自分の感情や推測は入れないようにします。
「そういえば、半年前に旅行をしたときから、していないよね」
2:Express 気持ちを伝える
事実に対して、自分がどのような気持ちであるのかを素直に表現します。ここでは、感情を押し付けすぎたり、相手を攻撃したりしないように注意をしましょう。
「それに気付いたら、私、ちょっと悲しい気持ちになってしまって…」
3:Suggest 提案をする
問題だと思っていることを解決するためのアイデアや要望を、相手に具体的に伝えます。あくまでも提案なので、命令や強制にならないように気をつけます。
「何か理由があるのなら、教えて欲しいんだけど」
4:Choose 結果を伝える
相手が、こちらの提案を受け入れた場合に得られる、相手のメリットを伝えます。
「理由が分かれば、私もわだかまりなく接することができるようになるので、もっといい関係になることができると思うのだけど… 」
最後に
話し合いは、あくまでもお互い良い関係でいるためのプロセス。自分の不満や不安をぶつけるのではなく、分かり合えるためのキッカケにしていきたいですね。
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キャリアコーチ 菊池啓子(きくち・ひろこ)さん
2003年から企業研修トレーナー・人材育成コンサルタントとして活動。国家資格キャリアコンサルタント。研修登壇回数は年間100回を超え、これまでに5つの大学でキャリアデザインを教える。現在「社外上司」として多くのビジネスパーソンの悩みに寄りそい成長をサポート。趣味は出張先での御朱印集め。家族は夫と猫2匹。
Twitter:@lotus_kikuhime
ライター所属:京都メディアライン