素顔を知れば怖くないかも? 害虫を正しく知って、賢く嫌おう!
夏は暑さだけでなく、蚊・ゴキブリなど様々な虫にも悩まされる季節。しかし、虫の生態や素顔を知っていくと、実はかわいくて面白い一面もあることがわかるそう。
兵庫県赤穂市にあるアース製薬の研究所では、ゴキブリ100万匹、蚊とハエで10万匹、ダニ1億匹など、害虫を中心とした約100種の生物を飼っています。
今回は、アース製薬の研究所で、害虫飼育歴20年の有吉 立さんに約100種の生物を飼ってわかった害虫の意外な生態や素顔を伺いました。
■もともとは虫が大の苦手だった!? 害虫飼育を続けて20年、有吉さんとは?
もともと虫が大の苦手で、大人になってからもゴキブリが出ると大慌てで親を呼んでいたほどだったという有吉さん。美術関係の仕事に就きたいと考えていましたが、望み叶わず害虫飼育の仕事に就いたそう。
「初めは夢でうなされたり、食事がノドを通らないこともありましたが、今では害虫たちの意外な素顔や美しさに魅せられて日々の飼育にもささやかな面白さを発見しています。また、器用だったこともあり、手作業が早く害虫飼育に向いていると感じています。仕事柄、家で発見した害虫が何なのか発生源を探すことが得意にも」(有吉さん)
有吉さんの仕事内容は?
「害虫飼育では、体重や気温・湿度の管理をしたり、どのようなエサを与えたら成長をしやすいか、卵を産みやすいかなどを日々試行錯誤しています。
『今日、メス100匹下さい』『薬剤抵抗性のメス100匹いります』と注文が入った際に、1匹ずつピンセットで地道に仕分けるのも私の業務の一環です。
また写真教室にも通ってマイクロレンズを駆使し、パンフレット用の写真撮影も担当しています」
Q1.家の中で発生する私たちの知らない害虫っていますか?
A1.お家の中で発生するのはゴキブリ、蚊、ダニ、ハエだけじゃありません!(有吉さん)
「家の中に発生することの多い虫は、あまり名前を聞いたことがないかもしれませんが、食べ物を食い荒らす貯穀害虫の“シバンムシ”、衣類を食べる衣類害虫の“イガ”などがいます」
Q2.貯穀害虫の“シバンムシ”ってどんな虫?
A2.“シバンムシ”は、畳からチョコレートまで! 何でも食べる虫なんです(有吉さん)
「シバンムシは貯穀害虫の一種で、米、麦、トウモロコシなどの穀物、小麦粉など穀粉、そうめん、パスタといった乾麺、豆類などなんでも食い荒らします。さらには、畳やチョコレートまでをも食べる食いしん坊な虫なのです。また、ただ単に食い荒らすだけでなく、食べ物が入っているビニール袋を食い破って袋の中にも侵入します」
Q3.衣類害虫の“イガ”ってどんな虫?
A3.贅沢な“イガ”は、高級なものばかり好むんです(有吉さん)
「タンスやクローゼットの中の衣類を食べる害虫。お気に入りの洋服に穴をあける犯人です。イガはとても贅沢な虫で、衣類はウールと化繊があればウールを好み、ウールとカシミアだとカシミアを好むなど、かなり高度な選別能力を持っています。
このように高級品ばかりを好む、とても贅沢な虫。また、化繊でも食べこぼしや汗染みなどがあるとそこに栄養源があるため、かじることがあります」
Q4.“ゴキブリ”は、人を襲うことはありますか?
A4.嫌われ者No1だけど…人間を襲うことはありません(有吉さん)
ゴキブリは、見た目が不快なだけでなく病原菌を運んだりアレルギーの原因にもなる嫌われ者No.1の害虫です。しかし、性質は攻撃的ではないので人間を襲ってきたりはしません。
最近では「薬剤抵抗性」のゴキブリが問題視されています。致命的な量の薬剤を浴びても、耐えて生き残ることができるのは、ほとんどチャバネゴキブリで大都市で増える傾向にあります。
ただ、「薬剤抵抗性」のありなしは、人でもお酒が飲める人、飲めない人が遺伝子で決まっているように、チャバネゴキブリも遺伝子が関係しているのです。
Q5.“蚊”に刺されないようにする秘訣ってありますか?
A5.黒い服より白い服を着ているほうが刺されにくくなりますよ(有吉さん)
日本で人を刺す蚊として主なものは、アカイエカとヒトスジシマカです。それぞれの特徴は、就寝時に耳元でブーンと不快な羽音をたてるのがたいていアカイエカ、外に出た時に刺されるのがヒトスジシマカです。
蚊は皮膚のニオイや体温、人が出す炭酸ガス(二酸化炭素)、汗に含まれる乳酸などを感知します。大人よりも体温の高い赤ちゃん、汗をかいている人、飲酒している人などに寄ってくる傾向があります。黒い服も狙われやすいため、白い長袖のシャツの着用がおすすめです。
Q6.“カメムシ”は自分たちの出すニオイはくさくないんですか?
A6.いえいえ、くさいと感じています。ニオイで死んでしまうことも!(有吉さん)
カメムシといえば臭いニオイ。実は、カメムシ自身も耐えられず、密閉容器に入れておくと自分たちのニオイで死んでしまうこともあります。
カメムシたちは自分の身を守るために、強烈なニオイを発していますが、研究所で飼われているカメムシは代を重ねていくごとに発するニオイが弱くなっていく傾向にあります。研究所のカメムシたちは天敵に襲われる危険がなく、強いニオイを発する必要がなくなってきていると考えられます。
有吉さんに聞いた害虫のあれこれ。
苦手な虫のことも理解しておくことで、いざご対面したときも少し恐怖が和らぐかもしれませんね!
情報提供/アース製薬
初出:しごとなでしこ
有吉 立(ありよし りつ)
アース製薬株式会社 研究開発本部 研究部 研究業務推進室 生物研究課 課長。兵庫県出身。都内の美術学校を卒業後、家具店店員、陶芸教室講師などを経て、アース製薬に入社。20年間、研究に使用する100種類以上の害虫を繁殖させる仕事をしている。
著書「きらいになれない害虫図鑑」では、害虫の意外な生態を紹介。1,296円(税込) 書店、amazon、楽天ブックスなどで購入可能。