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2018.02.26

【宝塚歌劇団というブランド】観劇が倍楽しくなる、5つのポイント(私的解説)

コンサルティング会社 ブルーム&グロー代表・大島文子がブランディング術をお届けするコラム。

宝塚歌劇団の観劇が楽しくなる5つのポイント

こんにちは。
ブランディングコーチの大島文子です。

萩尾望都の伝説的作品「ポーの一族」(小学館フラワーコミックス刊)を原作とした、宝塚花組公演 ミュージカル・ゴシック「ポーの一族」が2/16から3/25まで、日比谷の東京宝塚劇場で公演しています。

宝塚花組公演 ミュージカル・ゴシック「ポーの一族」

先に上演された宝塚大劇場公演で、「原作のイメージにあまりに近い!」と絶賛され、宝塚ファンはもとより原作ファンや漫画ファンも注目するこの公演。

これを機会にタカラヅカに興味をもったり、初めての観劇をする方も多いようです。

実は私は子供の頃からのタカラヅカ&ミュージカルファン。長年、ひとり海外出張の夜は食事の代わりに劇場に通う程観劇が大好きです。

仕事柄この10年程は、ファンとしての一途な気持ち(笑)と別に「タカラヅカ」というブランドや、そのマーケティングについても注目してきました。

104年の歴史が作り上げてきた「タカラヅカ」
そこには舞台の魅力だけでなく、スターを育てるシステムや、ファンを楽しませるさまざまなルールや仕掛けがあります。

今回はそんなタカラヅカについての、私的解説入門編です。


■1:タカラジェンヌとは!?

まずはタカラジェンヌについて。
簡単に言えば宝塚歌劇団の団員のことですが、もう少し詳しくご紹介すると…。

タカラジェンヌとは、宝塚音楽学校を卒業し宝塚歌劇団に入団した人のこと。

そして本拠地、宝塚大劇場横にある2年制の宝塚音楽学校を受験できるのは、中学卒業時から4年間のみです(もちろん女性だけ)。

毎年春になるとニュースになる20数倍の合格率という狭き門は、中3、高1、高2、高3の4回だけしか受験できません。めでたく合格できた一握りの少女たちが予科・本科と2年間の芸の厳しい学びの時を経て、17歳から20歳でタカラジェンヌとしてのスタートを切る訳です。

その後、40人の生徒たちは花、月、雪、星、宙の5組に分かれます。このような流れから、また、「良家の子女に音楽教育を施す」由来から宝塚の劇団員は団員ではなく「生徒」と呼ばれています。

宝塚歌劇団の生徒は、入団から研究科5年(研5まで・入団5年目)になるまで学年毎に試験があり、その成績がプログラムや公式サイトでの順番に現われます。成績が一目瞭然なシステムなのですが、「路線」と呼ばれるスター候補生への抜擢や、芝居の配役、そして2番手、トップスターへの道はその成績順ではありません。

成績はもちろん、スター性他さまざまな要因(ここが難しい!)の結果がポジションになる訳です。

通常の演劇は、その公演毎にオーディションなどで編成されますよね。宝塚歌劇はこの5組に配属されたら一部の組替え(人事異動)はありますが100人近い構成はほとんど変わらず、トップスターから路線、学年と序列があるのです。その序列の中を学年や成績を超えて、スター候補は「路線」の道に躍り出てきます。また路線でなくても、実力のある素晴らしい役者・歌い手として人気を集める生徒もたくさんいます。

組の中にはトップスターとは別に組長・副組長という管理職もあります。100人近くが個性を競い合う、全員が女性の組織。演者としてだけでなく、組を支える役割も求められるのは企業と同じですね。

また組長クラスは上級生でもあるので、老練なオジサマ役や老け役など舞台でも重要な役どころを務めます。

このようにタカラジェンヌと言ってもトップスター、男役、娘役と言った役割以外にさまざまなポジションがあり、それぞれの個性や才能がひとつになって各組が構成されています。

そんな生徒の成長を見守るのも「タカラヅカ」観劇の楽しみのひとつ

20歳前後の成長期からの10数年です。歌や芝居やダンス等、個々の努力によってメキメキ上達して輝きだす生徒を見つけられるかもしれません。

演出家や振り付け家だけでなく上級生(宝塚的!)が下級生を指導するのも、この組システムがあるからこそ。トップスターはセンターで演じるだけでなく、「組」のカラーを生み出したり後進の育成に関わるなど大きな影響力を持ちます。

舞台を見るときにはぜひトップスターさんだけでなく、小さな役に懸命に取り組んでいる下級生の活躍もチェックしてみてください。

その中には必ず、未来のスターがいるハズ。

「タカラヅカ」のきらびやかな舞台は、タカラジェンヌ一人ひとりのたゆまぬ努力、夢を追うエネルギー、挫折と成長の日々が作っているんだと思います。


■2:男役と娘役

女性だけの劇団ですから、男役と娘役がいます(基本は音楽学校入学時に希望した役ですが、適性等で途中で変わることも)。

「男役10年」という言葉があります。本来、華奢で美しい若い女性たちの劇団です。そんな彼女たちが鍛錬と経験を重ねて、一人前の「男役」になるには10年はかかるということでしょう。

先達から学び技を磨くことで、宝塚の舞台上にのみ存在する「理想の男役像」を演じられるようになるのです。

宝塚歌劇における娘役は、「男役を恰好良く見せること」を美学としています

時には背格好が変わらない男役と娘役がペアを組んでも、娘役の技量で背を低く見せたり、負荷をかけずにリフトされたり…。

また男役の声質が低く聞こるように、娘役は高音で歌うことも求められます。ただ自分の芝居をし歌うのではなく、相手がいかに素敵に見えるよう演じられるか。男役にも大事な事ですが、自然に振舞いながらこれらを熟す娘役が宝塚の舞台を支えています。

そんなはっきりと芸で区分けされた男役と娘役ですが、稀にショーや芝居で男役が女性を演じることがあります。

芝居の場合は主要人物で強い女性、例えば「風と共に去りぬ」のスカーレットのような。この場合は普段の男役とは違う女性らしい役作りや仕草、ドレスさばきなどが求められます。また日ごろ男役らしい低音に鍛えた喉での、高音のセリフや歌など技量を問われることも。

ショーの場合は反対です。「宝塚の男役」といっても舞台の外では、パンツ姿で髪の長さが短いだけで普通に美しい女性たちです。でも男役10年もするスターさんがショー中で女性の役をやれば…もう立派な、そして華麗な女装姿にしか見えません。

客席はそんな姿に「立派な男役になって(涙)」となるわけです。

すべては舞台の上だけの夢の世界、それがタカラヅカです。


■3:劇場内のどこから見ても楽しめる魅力

各組内でスター制度の序列が固定されているのは基本、トップスター、トップ娘役、2番手まで。それ以外のポジションは公演の最後フィナーレで大階段から降りてくる順番で見えてきます。

下級生から順に降りてくる中、センターを降りてくる生徒が路線扱いとなります(演目で一部変わります)。

フィナーレ以外も、初めて1人で歌ったり、3人で踊ったりとさまざまな場面があり、100人もいれば広い舞台の奥の奥で踊る下級生も舞台の両端で歌う生徒もいます。

ひとりひとりが「今までより大事なポジション」が得られることが成長の証。どんなスターさんも、最初は一番後ろから1歩ずつチャンスを掴んでいきます。

東京宝塚劇場は2065席、宝塚大劇場は2550席の大箱

そんな大きい劇場内に生徒一人一人に見守るファンがいて、舞台上手や下手にはそんな下級生に気付けるチャンスもあります。2階席は舞台奥の生徒が良く観えると共に、舞台上に照らされる美しい照明も楽しめます。

SS席からB席、立ち見席まで…劇場内それぞれの席にそれぞれの楽しみがある、
ここにも多くの生徒をスターに育てる、宝塚歌劇の魅力があります。


■4:ヘアメイクもアクセサリーも自前です

初めて宝塚を観劇されると「みんな同じメイクで見分けがつかない」と良く言われます。宝塚のメイクは104年の歴史の中で受け継がれた舞台メイクです。そして毎日の舞台メイクもヘアセットもすべて自分で行います

役柄に合わせて、肌の色を変え、目の色がブルーに見えるメイクもすれば、和ものでサムライにも花魁にもなります。髪型の打ち合わせやメイクは自分自身の役作りでもあるのです。

もちろん経験の浅い下級生のメイクはまだまだだなぁと感じる時も。リーゼントの作り方や鬘の付け方まで一つ一つ、上級生に教えを請い、研究してスキルを身に着けていきます。

そして舞台衣装に着けるアクセサリーや娘役のヘアアクセサリーも、一部支給のアイテムを除いて自分たちで用意します。特にヘアアクセサリーは娘役が自分で手作りすることが多く、タカラジェンヌに手先の器用な手芸好きが多いのも「宝塚あるある」のひとつです。

一見同じ顔に見えてしまう宝塚メイク、よーく見ると上手い下手も良く分かります。そして、ヘアスタイルやアクセサリーのセンスやスキルも千差万別

ぜひオペラグラスで細かく観てみてください!!


■5:客席参加型エンターテイメント

N.Y.のブロードウェイでミュージカルを観ると、それはもう客席はフリーダム!!

好きなところで笑い、泣き、声を出し、拍手が入る。この観る人がどん欲に参加しよう!! な客席はアメリカならではだと思います。

私たち客席で一人目立ったり、踊ったりはしないですよね。これはもうお国柄の違い。

舞台

「タカラヅカ」の舞台には、そんな私たちでも舞台上と一体感を感じられるいろいろな仕掛けやルールがあります。

その一番の手段が拍手「どこで拍手を入れると芝居やショーが盛り上がるか」、「トップスターさんがショーのこの位置を通るときは拍手をする」などタカラヅカには、歴史が作ってきたルールがあります

そこにトップさんの意向も何となくファンに伝わって、作品毎に客席が拍手を入れるお決まりパターンが出来てきます。慣れないうちは、周りが拍手したら拍手するで十分。もちろん嫌ならしなければいい。でもそのうち気が付きます。客席の拍手が舞台上に届いていることに。

だから芝居や歌に感動したら拍手、ショーで気持ちが高揚したら手拍子。客席に座っているだけでなく、拍手で参加して舞台を盛り上げます。

初日の期待感や千秋楽の喝采、素晴らしい舞台だった時の降るような拍手、卒業(引退)するタカラジェンヌへのはなむけの拍手など、タカラヅカの舞台を見ていると、拍手を贈ることの素晴らしさを感じます。

また仕掛けとしては、ショーでは客席降りのシーンがある作品や、写真のようなグッズ販売と連動して、ショー中にそのグッズを使用した参加型の作品もしばしば登場することも。

グッズ販売

客席降りとは客席通路にタカラジェンヌが下りてきてショーや芝居をすること。
後方席や2階席まで使う作品もあるので、先にもご紹介した通り劇場全体で盛り上がれます。

舞台を観た感動や高揚を素直に表すことってなかなか難しいですよね。私は宝塚歌劇は他のミュージカルや芝居以上に、客席と舞台の一体感を感じられる劇団だと思っています。

それは先にも書いた通り、「各組の下級生がいつかトップスターや素晴らしい上級生になる」というタカラヅカならではの仕組みがあるからです。


随分長くなりましたが、104年の歴史が作ってきた「タカラヅカ」の魅力を私的解説。たくさんの魅力の詰まった夢の世界の仕組みを、すこーしだけご紹介しました。

宝塚ファンの方には既にご存知の「あるある」ばかりだったと思います。

まだ宝塚観劇未体験の方で最後まで読んでくださった方。ぜひ1度と言わず2-3度、劇場まで足を運んでみてください。きっと日ごろの疲れを癒す、素敵な時間になると思います。

初出:しごとなでしこ

大島文子 BLOOM&GROW INC 代表取締役/ブランディングコーチ

資生堂ザ・ギンザ、三陽商会、パルグループ等にて日本発ブランド及びセレクトショップのブランディングや広告宣伝等マーケティング全般を担当。ファッション分野にとどまらずライフスタイル雑貨・ショップ等もプロデュース。大人女子に素敵な時間を提供するブランド育成のための、ブランディング&プロモーションコンサルティング会社(株)ブルーム&グローを設立。インスタグラムも更新中。


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