一の酉の11月11日、築地・波除稲荷神社を訪ねてみた
東京は秋を迎えたと思ったら、11月7日の立冬を過ぎたころから一気に初冬の様相を呈してきました。季節の移り変わりは早いですね。そして、冬を実感するイベントといえば、そう、酉の市です。
今年、11月の酉の日は11日と23日の2日のみ。なので酉の市は二の酉までとなります。
東京23区内で酉の市がにぎわう神社といえば浅草の鷲(おおとり)神社と新宿の花園神社。それでは、築地の神社はどんな様子かな、ということで、一の酉の11月11日、波除稲荷神社を訪ねてみました。
▲夕刻から始まった波除稲荷神社の一の酉。小雨模様だったので、ブルーシートの簡易屋根が。
酉の市の様子を紹介する前に、少しだけ波除神社の紹介を。築地市場には2つの神社があります。ひとつは場内にある魚河岸水神社。そして場内外の境に位置する波除稲荷神社です。
水神社は、江戸時代初期、魚市場の守護神として大漁と海上安全を祈るため創祀されたということです。つまりはここも築地本願寺と同様に、徳川家康の江戸開府とともに大阪から移住し、佃島、そして日本橋魚河岸に至る歴史を築いた漁師たちが発祥なのですね。
この水神社は、正しくは魚河岸水神社遥拝所と記されています。これは、この地にあるのは鳥居と祠で、本殿は神田神社(神田明神)の境内にあるためです。そしてここで拝むことで、本殿を拝むことができるという仕組みです。この水神社は豊洲移転とともに移転することになっていました。さて、今後どうなるのか、その行方を見守りたいところです。
▲場内・魚がし横丁に隣接して建つ魚河岸水神社遥拝所。遥拝は少々高台からするんですね。
さて、波除稲荷神社です。創建はやはり江戸時代初期の1659年。以前このコラムで書いた、明暦の大火の後の築地埋め立て事業。波風が強く実に困難を極めたそうです。そんな中、ある夜のこと、「海面を光を放って漂うものがあり、人々は不思議に思って船を出してみると。それは立派な稲荷大神の御神体でした。皆は畏れて、早速現在の地に社殿を作りお祀りして、皆で盛大なお祭りをしました。ところがそれからというものは、波風がピタリとおさまり、工事はやすやすと進み終了致しました」と、神社のHPにはあります。この波除神社の祭礼、毎年6月に行われる「つきじ獅子祭」に関してはまた別の機会に紹介することにしましょう。
波除神社の酉の市、一の酉は大変賑わっていました。当日は小雨模様。さほど広くない境内、その敷地ほとんどに熊手の市が立っています。スタートは午後6時ぐらいから。近所で商店を営む人々が次々に訪れ、大小の熊手を購入していきます。その度に掛け声がかかり、周辺の人々を巻き込んで、商売繁盛の三本締め。盛り上がりは休む間もなく続きます。
▲大きな熊手が購入される度に、居合わせた人たちが三本締めに加わります。
とてつもなく大きな熊手はいくらなのか見当がつきませんが10数万円から数十万円ではないか、といわれています。小さいものは価格が書いてあって1000円から。それとは別に神社の社務所では開運熊手神符「かっこめ」を授与しています(1000円)。普通の家庭に置いておくにはちょうどいいかわいい熊手です。
▲社務所で授与される開運熊手神符「かっこめ」。授与されるとその場で開運クジを引くことができます。場外市場の店での「逸品引換券」が当たりました。運があるかも!
「二の酉」は、秋の収穫を感謝する「新嘗祭」と同じ11月23日
今年の二の酉は11月23日なので、秋の収穫を感謝する「新嘗祭」と同日です。波除神社ではこの日「新嘗祭どぶろく祭り」と称する秋の大祭があります。当日は石川県白山・鶴来の御神饌田で刈り取られた米、そしてこの米で作られた濁り酒「幸穂」がお供えされ、境内で振舞われます。
年末に向け、より一層の賑わいをみせる築地市場。今週末、11月19日にはいよいよ新・築地場外市場=築地魚河岸のプレオープンもあります。この様子はまた次回にレポートしましょう。
初出:しごとなでしこ
T.KOMURO
編集者。主として男性向け情報誌の編集長を歴任。2015年5月、住居を築地に移し、愛犬の悟空とともに週末TSUKIJIライフを楽しんでいる。