監督と対話を重ねて作られた作品「とても幸福だったのは、三島監督が深く信頼を寄せてくださったこと」
2014年に発表し、根強い人気を誇る千早 茜氏の小説『男ともだち』(文春文庫)。三島有紀子監督がメガホンを取り、主演に松岡茉優さん、共演に成田凌さんを迎え、千早氏にとって初となる映像化が実現しました。
今回はそんな松岡さんに、映画『男ともだち』についてや、30代を迎えた〝今〟についてインタビュー。
──松岡さんが演じたのは、仕事もプライベートも順調に見えるが、実は描きたいものを見失い、惰性や不毛な恋愛から抜け出せない日々を送るイラストレーター・神名。そんな神名とご自身との共通点はありますか?
神名と私は表現をする。お仕事と言う点においても共通していますが、絵を描く彼女は、0を1にするお仕事。私は誰かが1にしたものをどうやって広げられるかと言うお仕事なので、孤独さが違うと感じました。実際、美術さんが作った神名のアトリエ兼自宅のセットに初めて足を踏み入れたとき、胸が締め付けられるような感覚がありました。そのくらい素晴らしいセットだったということなのですが。物語の中盤、神名が自分が、過去に書いた絵と出会い直すシーンがあるのですが、その時初めて彼女と深いところで手を握れた感覚がありました。過去の自分より自分は成長できているのか?という気持ちは、私も覚えがあったんです。

──撮影や役作りにおいて印象に残っていることを教えてください
この作品で絵画制作・指導・提供してくださった田中千智先生のアトリエに、実際にお邪魔させていただいたことです。みんなでフェリーに乗って福岡の能古島まで行き、先生のアトリエを見学させていただきつつ、先生から直接絵のレッスンを受けるという、とても贅沢な時間を過ごしました。そこで実際に、アトリエで先生はどういう動きをされているか、どんな動線を組んでいるのかなどを自分の目で確認することができ、とても濃密な経験をさせていただいたことが心に残っています。

──作品の見どころを教えてください
『男ともだち』というタイトルですが、男女の友情は成立するのか、男友達・女友達などジェンダーで関係性が異なるのか、ということを訴えかける恋愛ディベート映画ではないと思っています。
今のままお仕事を続けても生活はできるけれど、かつての燃えるような思いや感覚はなく、このままでいいんだろうか?という思いを神名は抱き続けています。7年ぶりに再会するハセオと過ごす3つの場所、3つの夜を経て、彼女は、小さい時から自分の目の前にあった壁に気が付きます。30歳を前にした彼女の人生の帰路に立つ姿は、共感していただける方が多いのではと思っています。
私が今回とても幸福だったのは、三島監督が深く信頼を寄せてくださったことです。温かい信頼の中で、日々、三島監督と対話を重ねて撮影しました。人生のロードムービーのような作品です。この作品が、観てくださった方にとって、自分の中の根っこにあるものって何だったんだろう?と探すきっかけになったらうれしいです。

──松岡さんにとって息抜きとなるものはありますか?
息抜き…。実は今(8月末取材時、出演ミュージカルの公演中)、私の癒やしでもある愛すべき『ハロー!プロジェクト』と距離を置いているんです。です。私のハロプロ(ハロー!プロジェクトの略称)愛をよく知っている知人に、「推し活をお休みして、どうやってリフレッシュしてるんですか?」と驚かれました(笑)。ミュージカルの楽曲に集中するためなのですが、推し活、お寿司、旅行断ちをしている期間が長い中で、やはり三度のご飯が私にとって息抜きになっているな、と感じます。
先日、同業の友人と会ったときに「お腹は空いてる?」と聞かれたので「今日は幕間にご飯を食べられなかったから、すごく空いてる」と言ったら、「幕間にご飯を食べているの!?」と驚かれました。私は幕間では一幕で消耗したエネルギーを補給するために、チョコやおにぎりなどを食べるものだと思っていたので、友人との認識の違いに驚きました(笑)。
しっかりお腹を満たすことが、忙しい日々を乗り切るための一番の息抜きになっているのかもしれません。

──以前Oggiのインタビューで「新たなる若い世代が、歳を重ねるのが楽しみだと思える大人を目指したい」とお話ししていましたが、30代を迎えた今、改めて考える理想の30代像はありますか?
10代の頃は何事もうまくいかないもどかしさを抱えていました。頭の中で思い描く理想ばかりが膨らんでいくのに現実の歩みは追いつかず、心身ともに苦しい時期だったなと思います。でも20代に入ると気持ちが解き放たれた感覚があり、30代になった今はさらに心が軽い気がします。言葉にするのは難しいのですが、選択肢が広がったり、周りの方に信頼してもらえるようになったりしてきた感じがします。
Oggi世代のみなさんは、まさにいま私も一緒に歩かせてもらっている道を進んでいる、仲間みたいな感覚です。責任も増えてきたし、立ち止まったら戻れないのでは?と思うような感覚とか、ちょっとずつ体の変化も感じてきたりして。ライフステージの変わった友人となかなか会えなくなったり、自身の体調の変化もあるかと思うのですが、無理なく、一歩一歩進んで行けたらと私は思っています。今作で私が演じた神名が、みなさんの心に届く存在であることを祈っています。ぜひ劇場で、お待ちしています。

映画『男ともだち』11月6日公開
【STORY】
京都に暮らすイラストレーター、神名。30歳を目前にした彼女は人生に静かな行き詰まりを感じていた。絵本で賞を獲り脚光を浴びたのは何年も前、最近は無茶なクライアントワークに神経をすり減らし、惰性や不毛な恋愛から抜け出せない日々を送っている。昔から自分勝手で人間関係に不器用なのは自覚している神名だったが、出会った頃からなぜか深く理解をしてくれる“男ともだち”ハセオからの思いがけない電話をきっかけに、7年ぶりに再会。甘く、苦く、ひりひりとした二人の時間が動き出す。愛していないはず、だけど失いたくない、この感情は何なのか。京都、富山、広島――あの頃も今も変わらない温度で接してくれるハセオと過ごす”“3つの夜”が、神名の人生を大きく変えていく。
【STAFF&CAST】
出演:松岡茉優、成田凌、井上祐貴、中島歩、咲妃みゆ ほか
原作:千早 茜『男ともだち』(文春文庫)
監督:三島有紀子
脚本:澤井香織 音楽:安川午朗
【取材ビハインドトーク】
・取材開始時にご挨拶すると、「Oggiということは滝沢カレンちゃんがモデルを務めている雑誌ですね!」とうれしそうな表情をのぞかせた松岡さん。撮影中、スタッフたちが思わず「かわいい」「素敵」と声を漏らすと、「ありがとうございます」と手で顔を覆ってはにかんでいる姿も本当にチャーミングで、その姿にも感嘆のも声が上がったほど。また、30代を迎えての話の際、編集部が「その先も、より生きやすく感じ、楽しいことが増える世代が待っていると思います」と話すと、「そんな気がしていたんです!そう言うお話を聞けるとうれしいです」と笑顔をのぞかせた松岡さん。とてもフランクでハッピーオーラをまとったその姿に編集部も元気をいただきました。
衣装クレジット
ジャケット¥385,000・パンツ¥187,000 共に(THE WALL SHOWROOM〈ALAINPAUL〉) その他スタイリスト私物
お問い合わせ先: THE WALL SHOWROOM TEL)050-3802-5577
撮影/杉江拓哉(TRON) スタイリスト/池田未来(インザピンク) ヘア&メイク/大上あづさ 取材/近藤亜衣子、岡野亜紀子



