俳優・川口春奈さんインタビュー

《Profile》かわぐち・はるな/1995年生まれ、長崎県出身。2009年ドラマ『東京DOGS』で俳優デビュー。ドラマや映画、CM出演はもちろん、YouTubeなど活躍の場は多岐にわたる。近年の作品は、NHK大河ドラマ『麒麟がくる』、ドラマ『着飾る恋には理由があって』『silent』『9ボーダー』『アンサンブル』、映画『極主夫道 ザ・シネマ』『教場 Requiem』など。
ちょっとした日常の幸せがあれば、明日もまた頑張れる。その気持ちは、ますます強くなっています
30代は、年齢に負けない自分の土台をつくりたい
待ち望んでいたという30代になって、1年と数か月。川口さんの変化は、仕事を始めた10代からグラデーションのように少しずつ現れ、今ようやく言葉にして表現できるまでになった。
「20代後半から仕事の責任感が増すのを感じて、それに応えたいという思いが強くなって。作品ひとつ、役柄ひとつ、大事にしながら〝質〟にこだわりたい。と同時に、体のコンディション、体力や疲れ方は、年齢とともに変化しているのを感じます。なんとかして、それに負けない土台をつくるのが、30代の私の課題です。ここしばらく、運動よりも体のケアやメンテナンスを中心にやってきて、やっぱり負荷をかけるようなトレーニングも必要なのだと、思い始めているところです」
こうした体の変化はもちろん、より実感しているのが、気持ちと嗜好の穏やかな変化だという。そして、これこそが、川口さん「らしさ」を形づくっているもの。
「メイクでもファッションでも、ムダなものをそぎ落とし、ますますナチュラルで、シンプルなものを好むようになりました。デニムにTシャツ、スニーカーといったカジュアルなものは10代から好きだけれど、年齢を重ねてより、自分にしっくりくる感覚があります。シンプルな服で、シンプルな生き方を選べる人間でありたい。きっとそのほうが、自分の気持ちに正直に生きられるような気がするんです」

女性として、人間として、その強さにひかれます
「私はどちらかというと人見知りで、友達が多いほうではないし、自分から積極的にコミュニケーションを取りに行ったり、誘ったりするほうではありません。これは今も変わらなくて、だからこそ、周囲の友人や家族と過ごすなにげない時間を、大切にしたいと強く思います。好きな人たちとおいしいものを食べる時間、ひとりでマッサージに行っている時間、ちょっとした日常の幸せがあれば、明日も頑張れる。そんな気持ちは、ますます強くなっています」
キャリアを重ねるほどに責任の重さを実感しつつも、追い詰められたり、心のバランスを欠いたりすることはないという。それは、自身も認める「オンとオフの切り替え」によるものだ。
「だからなのか、必要以上にプレッシャーを感じたり、主演だからと特別に力むことはありません。みんなを引っ張るというタイプでもないし、現場に飛び込んだら、あとは自分なりに楽しむだけ。そして、人も作品も一期一会だと思って大切に。そうしていると、思いもよらない気づきもある。特に今回は、周囲に〝支えてもらう〟ことの大きさを実感できました」
そう語るのは、最新映画『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』での、1か月半の撮影期間のこと。川口さんが演じたのは、ステージⅥの大腸がんをわずらいながらも、子供をもつことをあきらめず、強く生き抜いた和(のどか)さん。闘病と子育ての苦渋、そんな中での家族との幸せな時間、どちらも「全身全霊で」演じた。これは青森で暮らす若い夫婦の実話がもとになっている。
「みんなで家族の温かい空気感をつくりながら、実在したふたりが過ごした場所を訪れ、ひとつのシーンに時間をかける。こんなふうに、丁寧にじっくりと作品をつくる体験は、そうできるものではありません。一方で、がんと闘いながら子供を産み育てる和さんの決断は、並大抵のことではなかっただろうと思います。ひとりの女性として、人間として、その強さにひかれます。この人生を、役として引き受けることは、1か月半の間ずっと不安と葛藤の連続でした。撮影が終わって、こうして公開を待つ間も、役目を果たせているか、考えはめぐります。こんな思いにひと区切りつけられるのだとしたら、映画が公開して、みなさんに見ていただいて、心に届いて、何かしらの感想をもっていただいたとき、なのかもしれません」
映画が公開されるころ、川口さんはまた次の出会いに向かって進み始める。かっちり計画を立てるのは好きじゃない。その代わり、「なんとかなる!」の精神が、いつも背中を押してくれる。
「大好きな旅行もそのひとつです。友人が海外にお引越ししたので、いつか行ってみたいと思っています」
映画『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』

テレビ番組『1億人の大質問!? 笑ってコラえて!』で取り上げられた実話。青森で暮らす遠藤 和(川口春奈)と将一(高杉真宙)。和は突如「ステージⅥの大腸がん」との宣告を受ける。ふたりの願いは「私たちの子供に会うこと」。だがそれは、和自身の命をつなぐ抗がん剤治療を止めるという重い選択を伴うものだった。和さんの日記であり同タイトルの書籍(小学館刊)が原作。10月2日(金)全国公開
ジャケット¥187,000・カットソー¥75,900・デニム¥93,500(IZA〈ヌメロ ヴェントゥーノ〉) 靴¥122,100(セルジオ ロッシ ジャパン カスタマーサービス 〈セルジオ ロッシ〉) サングラス¥62,040(Tiffany & Co.) ネックレス¥17,600・リング¥18,700(ソワリー)
IZA 0120-135-015
セルジオ ロッシ ジャパン カスタマーサービス 0570-016600
ソワリー 06-6377-6711
2026年Oggi11月号「この人に今、これが聞きたい!」より
撮影/中村和孝 スタイリスト/緒方なぎさ(サブレットプラージュ) ヘア&メイク/高村三花子 構成/南 ゆかり
再構成/Oggi.jp編集部
Oggi編集部
「Oggi」は1992年(平成4年)8月、「グローバルキャリアのライフスタイル・ファッション誌」として小学館より創刊。現在は、ファッション・美容からビジネス&ライフスタイルテーマまで、ワーキングウーマンの役に立つあらゆるトピックを扱う。ファッションのテイストはシンプルなアイテムをベースにした、仕事の場にふさわしい知性と品格のあるスタイルが提案が得意。WEBメディアでも、アラサー世代のキャリアアップや仕事での自己実現、おしゃれ、美容、知識、健康、結婚と幅広いテーマを取材し、「今日(=Oggi)」をよりおしゃれに美しく輝くための、リアルで質の高いコンテンツを発信中。
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