朝ドラ『風、薫る』1週間の見どころと感想をレポ
朝ドラ『風、薫る』、ご覧になられてますか? 明治時代の日本で看護の道を切り拓いた、一ノ瀬りんと大家直美の物語。見上愛さん、上坂樹里さんのダブル主演です。
朝ドラ大好きOggiチームきってのNHK「連続テレビ小説」ウォッチャー、ライター・朝 ドラ子が、毎週グッときたポイントを自由きままに語りたいと思います!
先週のレビューはこちら:“明るい未来”を信じていたのに…母になった直美を襲った残酷なしらせ|『風、薫る』第22週
第23週「歩々清風」を振り返ります
夫・吾郎の死後、「恵風看護婦会」を経営しながら息子の明を懸命に育てる直美。りんは看護婦会の一員としても、ともに暮らす家族としても、直美と二人三脚で歩みます。吾郎を奪った戦争は、皮肉にも看護婦の認知度を拡大する追い風となりました。子育てが落ち着いたしのぶも恵風看護婦会に戻り、心強い戦力に。そしてそれぞれが見据える先には…?

あの元詐欺師が看護ビジネスに参入!?
「看護」の認知度アップの影響もあり、恵風看護婦会は大忙し。日本初の派出看護会として、広報活動にもばっちり取り組む直美の経営手腕もさすがです。一方で、各所に派出看護婦会が乱立し、なかにはクオリティの怪しい団体もちらほら、という噂も…。りん&直美も気が気ではありません。
そんななか、あの男が再登場です。直美の腐れ縁・元詐欺師の寛太! 彼もまた看護ビジネスに手を出していることが判明し、直美も呆れ顔。明治時代なので無資格&無認可でも法に触れることはなかったとは思うけれど…(日本で看護資格が定められたのは大正4年らしいです)、命と向き合う仕事に「金になるから」と簡単に手を出されるのは困りますよね。看護婦全体の評判にも関わるわけですから。まあ、寛太は直美にまた会えてなんだかすごくうれしそうですが。
そしてもうひとり、驚きの再会がありました。寛太が雇った「看護婦」たちのなかに、思わぬ懐かしい顔。なんと第10週で登場した「夕凪」こと、セツの姿がそこに!
「自由」のその後は、やっぱり厳しかったのか…
セツといえば元は女郎で、りん&直美の活躍で自由の身になった女性です。その後さまざまな仕事を転々としたもののうまくいかず、ふたたび女郎屋の門をたたこうとしていたところで、寛太に拾われたというわけでした。当時のレビューでドラ子は「自由になったセツはどこへ向かうのか。結局遊郭に逆戻りとか(中略)バッドエンドが想像できてしまう」と書いていたのですが…その通りになりかけているじゃないの。
寛太が雇っているのは、セツのように他に行き場のない貧しい女性たちでした。低品質の看護婦会が増えては困る。でも、彼女たちの働き口がなくなるのは忍びない…。悩むりん&直美。対して、しのぶがいい意味でドライなのが興味深いです。「同情しちゃったわけね」「(セツの様子を見に)行ってどうするの?」。帝都医大に就職しなかったしのぶはセツのことを知らないから、意見もフラットなんだよね。このあたりのバランス感、絶妙。
朝ドラ時空においては、ここで謎に「とにかくセツを引きぬこう!」みたいな展開になってもおかしくないと思うのですが…いたずらにヒロインを突っ走らせず、「こういう意見もあるよね?」と提示してくれるのが今作らしい。セツだけ救ったところで、世間の流れはおそらく止められないわけですし。しかしそのうえでなお、「まずはできることをしたい」と、セツや寛太と対話を試みるのが、りん&直美というヒロインなのです。
そして、しのぶの喝が胸をうつ!
でもね、セツの新たな可能性を後押しするのがしのぶ、というのがまた胸を打たれるんです! りんと直美はセツに「うちで働くこともできる」と選択肢を提案します。選ぶのは、セツ自身。しかし学のない、読み書きすらできない自分にできることなんてない、りんや直美と自分は違う…と尻込みするセツは、差し伸べられた選択肢をつかむことができません。そこですかさずしのぶが啖呵を切るのです。「つらいご身分を盾にやさぐれて…もったいない」。それはしのぶなりの最大限のエールだったのだと思います。
「りんさんだって直美さんだって私だって、何にもできないところから少しずつ、血の滲む思いでやっと、自分の道を選んできたのよ」。もちろんそれぞれに背負った環境や能力の違いもある。呉服屋の娘であるしのぶと、女郎として生きてきたセツは、スタートラインからして違いすぎる。でも誰だって何かままならない事情を抱えているもので、この時代の女性なら尚更です。それを「はねっ返す」べく戦う者だけに、「自分の道」がひらけるのかもしれない。
しのぶはいつも明るくしっかり者なんだけどさ、さりげなーく姑との関係があまりよくないことも示唆されているんですよね。息子・茂が「遅くなるとおばあさまに叱られない?」とこぼすところから、それが伺えます。表にはまったく出さないけれど、しのぶにはしのぶの戦いがある。だからこそ、戦った先に見える景色をきっと彼女は知っているのでしょう。
そしてセツが選んだ答え。看護婦としてではないけれど、恵風看護婦会で新しい道を模索することを、彼女は決めました。セツに文字の読み書きを教えるしのぶの姿にもグッときます。精神論だけで「あなたも頑張れ」と発破をかけるのではなく、頑張ることを決めた彼女にちゃんと寄り添うんですよね。
セツが選んだ新しい生き方、その道中はそれこそ血の滲むような努力が必要かもしれないけれど。少しずつでいいから、彼女の未来がいいほうに変わりますように。
いつか世界が変わることを願って…次週は「環」
とはいえね、前述の通りセツだけ救ったところで社会を変えられないわけですよ。粗悪な看護婦会、女性の貧困、それらをヒロインたちだけでどうにかすることはできない。けれど目の前の「ひとり」を掬い上げたことで、少しずついいほうに変化をもたらすこともあるんじゃないかな〜と思ったり。これは今作で繰り返し描かれているテーマな気もします。バタフライエフェクト的な。だから『風、薫る』なのか!? そんな今週のサブタイトルは「歩々清風」、いいですね。
さて…今週ラスト、あの男も数年越しの再来です! シ、シマケン〜! 彼が別れを告げた本当の理由をりん&直美は知らないから、きっとふたりは困惑しきりよ。さらに次週、りんの元夫・モラハラ男の亀吉も再登場するようで(そこ掘り下げると思ってなかった!)。朝ドラ名物・終盤の再登場ラッシュ。モラハラ亀吉、変わることはできたのか!?
「朝ドラウォッチャー」ライター・朝 ドラ子
NHK「連続テレビ小説」(通称・朝ドラ)をこよなく愛するアラフォー。毎日退勤後にNHK ONEでじっくり観るのが日課。会議でのアツい朝ドラコメントが「天才的なウォッチャー」と編集長に認められ、この連載を開始。歴代ナンバーワン朝ドラは『スカーレット』(2019年度後期放送)。『ひよっこ』再放送にも毎日ワクワク!



